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【感想】『G線上の魔王』に匹敵する、感動のヒューマンドラマ。
今回は、2005年に発売されたPCゲーム、『車輪の国、向日葵の少女』をレビューします。
去年の夏に『装甲悪鬼村正』という作品をプレイして、その感想を書いて以降、
新しいゲームをプレイできていなかったので、ずいぶん久しぶりのレビューになります。
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Wikipediaを読むと、ジャンルは恋愛アドベンチャー(ヒューマンドラマADV)と記載されています。
PC版は18禁のアダルトゲームではありますが、実際にプレイした感想としては、
恋愛要素は少なめで、ヒューマンドラマを重視した作品になっております。
※コンシューマー版でPSP、PS3にも移植されています。
本記事のレビューは、以下の順番で進めていきます。
記事の構成
- プレイしたきっかけ
- 作品の概要
- 完走した感想
- 各章の紹介
- 統括
では、早速はじめていきます。
1. プレイしたきっかけ
この『車輪の国、向日葵の少女』は、開発元が『G線上の魔王』という作品と同じです。
レビューも書いているのですが、『G線上の魔王』はとんでもない名作です。
もし、ノベルゲーム初心者にまずは何をオススメするかと聞かれたら、私はこれを推します。
それくらい、面白かった作品です。
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ーで、この『車輪の国、向日葵の少女』は、
『G線上の魔王』と双璧をなすと言われるくらい、高い評価を受けている作品です。
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その時点で、名作であることは約束されているようなものなので、
私にとってはプレイしない理由がありませんでした。
面白いということは分かりきっている状態で、
実際にプレイしてみて『G線上の魔王』を超えることがあるのか、
それを知るために本作を購入して、確かめてみました。
本記事の目的
『車輪の国、向日葵の少女』は、『G線上の魔王』より面白いのか??
2. 作品の概要
まずは作品のあらすじと、世界観を構成するキーワードについて解説します。
あらすじ
初夏。
罪を犯すと『特別な義務』を負わされる社会。
罪人を更正指導する『特別高等人』という職業を目指す主人公・森田賢一は、
その最終試験のため、とある田舎町を訪れる。
『1日が12時間しかない』、『大人になれない』などといった、
義務を負う少女たちと学園生活を送るが、
『恋愛できない』少女・夏咲と出会ってから、賢一の歯車が狂いだす。
贖罪を問われた男が見た、車輪の国の真実とは……。
公式サイトより一部引用 <リンク>
本作の最も特徴的なポイントとして、物語の舞台が日本ではなく、
犯罪者に対する刑罰が存在しない、架空の国であることです。
では、誰でも犯罪をやりたい放題の世紀末社会かというと全く違い、
むしろ、無期懲役や死刑制度の存在する現代の日本よりも、ある意味では厳しい社会です。
義務
本作の核となっている、常識では考えられない社会システムです。
この車輪の国では、罪を犯した者は「被更生人」と呼ばれ、
罪の内容に応じた、特殊な義務を背負うことになります。
例えば、異性を誑かした者は、今後一切の異性との接触を禁じられる義務。
また、社会に貢献することなく怠惰に過ごすことも立派な”罪”になり、
強制的に1日の活動時間が12時間に減らされるという義務を課せられます。
そして、「被更生人」であることを示すため、
服にバッジを付けられて、「特別高等人」の監視下に置かれます。
「特別高等人」は、国の最高権力をもった公務員のようなものです。
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それぞれの義務を違反したものは、監督者である「特別高等人」によって、
容赦なく始末されます。
さらに、国益にならない老人などは、家族と余生を過ごすこともできない等、
とにかく、国の力が理不尽なまでに強く、個人よりも国家が優先される社会です。
作品のテーマ
本作はそんな「特別高等人」を目指す主人公と、「被更生人」として生きる少女たちの物語です。
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- 社会に「義務」を強制された人間が、何故そうなったのか。
- それを解決するためには、どうすればいいのか。
『車輪の国、向日葵の少女』は、この歪ともいえる「義務」という制度が厳格に適用されている世界で、
人と社会にどう向き合っていくか。
また、ルールに従い生きることが全てなのか。
ーといった問いを、プレイヤーに突きつけてくる作品です。
また、本作は恋愛ADVゲームという体裁でありながら、
個別ルートが存在しないというのも大きな特徴です。
選択肢によって各ヒロインのルートに分岐することはなく、物語はメインルートを一本道で進みます。
選択肢によって結末(ED)だけが変わるという形式です。
作品のレビューを読むと、
「伏線と物語の組み立てが絶妙」
「設定が秀逸で、それぞれ異なる義務を背負うヒロインたちが、ドラマチックに描かれている」
「独特の舞台設定と、それに基づくストーリーがおもしろい」
ーなど、主にシナリオに対する言及が多かったです。
参考
なりひら/名作情報 さん
3. 完走した感想
では、感想した完走を述べますが、本当に評判通り。間違いなく名作です。
「義務」という作品独自の設定を上手く使い、大胆に物語に仕込まれた伏線。
序盤で断片的に示されていた要素が、後半で重大な意味を持ち、
プレイヤーの認識が更新されるという感覚は、まさにノベルゲームの醍醐味です。

ここで終わりか・・・と思っていたところから、二転三転と物語が展開されていくので、
ゲームを進めれば進める程に、中断できなくなります。
また、各ヒロインの物語は単体で完結しつつ、最終的には車輪の国の在り方を問う、
5章の結末に収束する構成もお見事。
個人的には、3章が一番面白かったです。いい意味で、裏切られました。
最後の場面はグッとくるものがありました。
感動したという意味では、2章のストーリーを挙げる人が多いですね。

1章はほとんどプロローグなので除外しますが、
2章〜5章は物語のヒロインも、テーマ性も全く異なっている上で、
常に80点、章によっては90点以上の完成度がありました。
この点数は完全に私の独断でつけているので、適当に受け流してもらって構いませんが、
プレイした多くの方が納得するのではないかと思います。
『G線上の魔王』より面白いのか??
本記事の冒頭で書いた、『G線上の魔王』と比べてどうかという点。
いくらメーカーと脚本家が同じとはいえ、全く違う作品ですから、比較するのも野暮。
ーと、答えを明確に言いたくないのが本音ですが、あえて言うなら、
個人的にはそれでも『G線上の魔王』の方が良かったですね。
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『G線上の魔王』はメインストーリーが面白すぎて、サブヒロインのルートはまぁまぁという感じでしたが、
とにかくG線は、ラストに向けての盛り上がりが95点以上でした。あれは本当に神がかっていました。
そう考えると、『車輪の国、向日葵の少女』はオチが弱かったかなと。
また、各章ごとの本質・テーマ、どういった物語かが序盤は分からないので、
そこが見えてこないと、物語の面白さが分からないというのは、本作のウィークポイントかもしれません。
『G線上の魔王』は最初から「魔王の正体は誰だ?」、「奴を捕まえろ!」というノリで最後まで進むので、
分かりやすく面白い作品でした。
主人公
『車輪の国、向日葵の少女』の主人公である、森田賢一についても言及します。
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『特別高等人』の候補生であるので、彼は非常に有能かつ、
恋愛ゲームの主人公のイメージ通り、自他ともに認めるイケメンですが、
とある過去が原因で、麻薬を愛飲しています。
そのせいで時折、というより頻繁に幻覚を見るようになっており、
「あんたもご存知だと思うが〜」と言って、存在しない誰かに話しかける、不気味な悪癖を持っています。
作中のキャラクターからは、「また独り言?」と呆れられています。
メタ的にいえば、プレイヤーに作品の世界観を説明する為の演出ですが、
物語全体を通して何度も繰り返されるので、この主人公の性格が相容れない方もいるかと思います。
この点に関しては、『G線上の魔王』にも似たような設定があるので、
「そういうもの」と受け入れて、このゲームをプレイしてください。
4. 各章の紹介
ここからは、各章の物語の感想を書きます。
具体的な物語の言及は避けるので、ネタバレは控え目ですが、
内容を全く知らない状態でプレイしたい方は、ここでブラウザバックを推奨します。
第一章:特別高等人
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主人公の上司で、『特別高等人』の最終試験の監督を務める、法月将臣がいきなり登場。
本作の敵役であり、若本ボイスであり、屈指の名言メイカーです。
最終試験の内容は、向日葵が鮮やかに咲く田舎町で、3人の「被更生人」の少女の義務を解消させること。
試験の順番はさち → 灯花 → 夏咲と、法月の口から告げられます。
このプロローグには超重要な伏線が仕込まれていますが、初見では気づきようがないですね。
以降の第二章~第五章の冒頭部分では、主人公の過去が少しずつ語られます。
第二章:夢
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【被更生人】三ツ廣さち:びりっとがんばる元気系。自己中心的で飽きっぽい。
特殊な薬を使い、疲れの取れない強制的な眠りを強いられる、「1日が12時間しかない義務」を持つ少女。
さちの義務を解消するには、時間の価値を知り、毎日を懸命に生きることが必要だが、
過去の出来事をきっかけに、自堕落な生活を続けている。
交流を続けていく内に、義務を解消する方法が見つかりますが、それでもさちは真剣になれません。
正直、プレイしていて苛立ちを覚えますが、同時に、さちが抱えている弱さの正体に気づいていきます。
彼女は決して真剣にやりたくない訳ではなく、懸命にやった上で失敗したくないから。
自分に期待してくれる人を、失望させたくないから。
その結果、動くことができないという経験は、私を含めて、いろんな方々に身に覚えがあると思います。
この章では、そんな人間のリアルな弱さに向き合い、克服することができるのか、
というのがテーマになっています。
第三章:食卓
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【被更生人】大音灯花:クラス委員長。そのわりにはドジが多く、口癖は「ぶっこぉすぞ!」
親権者の命令を強制される、「大人になれない義務」を持つ少女。
灯花の抱える義務は、親権者が申告してはじめて課される義務。
従って、灯花の母親である大音京子に接触し、義務の取り下げを認められる必要がある。
大音家で過ごしていく内に、灯花の複雑な親子関係が明らかになり、
京子とのわだかまりも解決して、これにて一件落着。第三章、完。
ーと思われましたが、それでも灯花の義務は解消されず、
ここから、彼女を巡る、第三章の本当のストーリーがはじまります。
いやぁ、マジで面白かったです。
自分の意思や決断力の乏しい、子どものように幼い少女に、
ここまで心を動かされるとは、思ってもいませんでした。
第四章:手のひら
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【被更生人】日向夏咲:おどおどしていて、人との関わりを持とうとしない。
異性と接触してはいけない「恋愛できない義務」を持つ少女。
夏咲の罪は、そもそも冤罪だった。
しかし、国家権力者によって罪の自白を強要された過去の経験から、
かつて向日葵のように輝いていた、少女の笑顔は失われてしまった。
彼女を本当の意味で救えるのは、主人公しかいない。
しかし、その主人公の存在によって、夏咲の義務は永久に解消されない。
この事実を告げられたときは、「どうすればいいんだよ」と、
完全に主人公とシンクロしていました。
どっちに進んでも詰んでいる状況で、問題解決を諦めながら物語を読んでいました。
法月の手の上で動かされるように、主人公と夏咲はある場所へと連れて行かれます。
自分たちの運命を決定される、最後の尋問。
すでに人間が壊れるまで追い詰められた少女が、選んだ行動。
向日葵の少女たちに、人間の真の強さを教えられた主人公は、
彼女を救うべく歪んだ社会に、その権化である法月将臣に、戦いを挑みますー・・・。
第五章:車輪の国
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第四章のラストから続く、本作の最終章。
ここは是非、実際にプレイして確かめてみてください。
5. 統括
最後に、本作をプレイして最も印象に残ったセリフを紹介します。
「こうやって、瞳を閉じて、誰かを想うの」
「世の中なんて自分の見方一つで地獄にも天国にもなるわ。
でも基本的に人は弱いから、いつでもその眼差しを自分だけに向けてしまうの」
「・・・だから、誰かを想うの。現実逃避じゃないの。あの人に向かって進むんだっていう意志を持つの。
それは、言葉にはできない、圧倒的な力」
理不尽な社会に対して、個人が戦うにはどうすればよいか。
この問題提起に対してあるキャラクターが一つの回答を示すのですが、
これが本作を通して伝えたかった部分だと思っています。
現実の厳しさに挫けてしまいそうなときにこそ、この言葉を思い出すことで、頑張れる気がします。
本当に、このゲームをプレイして良かったです。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。
余談
本作にはFDである『車輪の国、悠久の少年少女』という作品がありますが、これのプレイは未だ検討中です。
法月将臣の過去編が収録されているらしいので、非常に気にはなっています。
紹介した作品









