©集英社/八木教広
【書評】「完結したベルセルク」と呼ばれる漫画。
社会人になってから、自分が気になっていたマンガは電子書籍で少しづつ集めるようになっています。
お金は掛かりますが、TSUTAYA等でレンタルしてきたり、漫画喫茶で一気読みしたりするよりは、自宅でゆっくり読みたいですからね。
最近、全巻揃えることが出来たのが、月刊少年ジャンプ及びジャンプSQで連載されていたファンタジー漫画、『CLAYMORE ークレイモアー』です。
作品の紹介と、物語を最後まで読んだ感想を、緩くお話させて頂きます。
クレイモアとは?
一言で云うなら、「こういうのでいいんだよ」という漫画です。
大剣を扱う美麗な女戦士が、人を喰らう怪物を次々と薙ぎ倒す。この漫画で描かれるのは、それだけです。
重厚なストーリー、予想を裏切る結末、読者の共感を呼ぶ感動的な作品。・・・とは、言い難いですね。
超名作か?と問われると、私としては肯定しかねる作品です。
でも、男の子ってこういうの好きなんですよ。頭空っぽで見れる、「何か知らんけどカッケー!」という作品。
皆さんも大好きですよね?
『クレイモア』は、正にそういうニーズを満たしてくれる作品でした。
感想
実際に全巻読んだ感想としては、途中でかなり中弛みするけど、最終巻で見事に盛り返した作品。そんな印象でした。
『NARUTO』が完結されたときにも思ったことですが、終わりよければすべてよしって本当だな、と。
「ピーク・エンドの法則」と言われてますが、正にそれを体現したかのような作品でした。物語のラストバトル、特に最終巻が本当に良かった。
結末だけは最初から決まっていたのだろうな、というのが良く分かります。
では、作品の紹介を始めていきます。
ストーリー
本作は、人類の捕食者である「妖魔」と、それらを殲滅する為に生み出された女戦士「クレイモア」の存在する世界を描いた、ダークファンタジー漫画です。
組織のNo.47の戦士:クレアを中心に、
- 半人半妖の戦士としての過酷な運命
- 次々に現れる敵との絶望的な力の差
- 命を賭してでも、成し遂げたい目的
それらを背負いながら、戦い続ける姿を描いた物語になります。
物語の流れ
序盤
『CLAYMORE』の舞台背景と、主人公:クレアの生きる目的が描かれる。
物語が進むごとに、「妖魔」だけではなく組織の中からも、クレアの命を狙う者が登場する。
クレアの戦いは、かつて戦士だった成れの果てである「覚醒者」との戦いに移行する。
そして、この地を総べる絶対的な存在「深淵の者」の存在が明らかになる。
北の地に出現した、覚醒者の群れの討伐依頼を命じられたクレア。
その作戦の成功確率は、ゼロ。
勝ち目の無い戦いから、何人の戦士が生き延びることができるのか?
中盤
北の戦乱から7年。生き延びた戦士は潜伏し、力を蓄えていた。
組織の実態を知った戦士たちは、仲間の敵を討つ為に「組織」への離反を決意。
主人公であるクレアも、自身の最終目標である覚醒者:プリシラを目指して北の地を後にする。
そこで遭遇した「深淵の者」から、7年間の世界の情勢と、プリシラについての話を聞く。
プリシラの力は、「深淵の者」すらも圧倒的に超えているということをー。
更に激化する戦いの中で、クレアは遂にプリシラと対峙することになる。
終盤
自らを犠牲に、プリシラを一時的に封印することが出来たクレア。
それと同時に起きた戦士の反乱により、遂に組織は壊滅する。
だが、その場に新たな「深淵の者」を誕生させてしまう結果となった。
封印が解きかけているプリシラと「深淵の者」の元に、残った全ての覚醒者と戦士が集結。
『CLAYMORE』における最後の戦いが始まる。
かつて「銀眼の惨殺者」と呼ばれた者たちの運命は、どんな結末を迎えるのかー。
キーワード
妖魔
古より大陸に蔓延るとされる、人外の魔物。人より強靭な肉体を持ち、捕食した人間に変身する為、人間の眼で妖魔を見分ける事は不可能。
生命力が極めて高く、翼を持った飛行する個体、指を伸ばして攻撃する個体等もいる。
人間のモツを好んで食すが、そこに伏線とかは特に無かった。
正直、作中で脅威になることはほとんどなく、ぶっちゃけ雑魚。
クレイモア
「組織」の生み出した半人半妖の戦士。妖魔の血肉を身体に取り込んだ元人間。
大剣を軽々扱う事の出来る力と、脅威的なスピード、妖魔の擬態を看過出来る能力を持つ。
大陸にはNo.1〜47までのクレイモアが存在しており、数字の並びはクレイモアの強さの優劣を表している。
クレイモアは共通して、色素の抜けた頭髪と、銀色の瞳を持つ。
妖魔を狩るための装備として全員が大剣を所持しており、それが「クレイモア」の由来となっている。
人間の側に立ち、妖魔を討伐する存在。だが、妖魔の肉体を宿し、感情の機微も見せないクレイモアは、妖魔と同様に恐れられている。
大陸の人々からは畏怖を込めて「銀眼の惨殺者」とも呼ばれており、第一話のタイトルにもなっている。
覚醒者
クレイモアが自分の力の解放を繰り返し、制御を失った結果、完全な妖魔となってしまった姿。
基本的な妖魔を遥かに上回る戦闘能力と食欲を持ち、その危険度は妖魔の比ではない。
容姿も通常の妖魔と異なり、個々によってかなりの差がある。それに伴い、固有の能力を保有している場合もある。
覚醒前に強力な力を持った戦士ほど、より強大な「覚醒者」へ変貌する。
最強のNo.1である戦士が覚醒した場合、その桁外れの存在を指して「深淵の者」と呼ばれている。
クレア
本作の主人公:クレアは、「組織」におけるNo.47。つまり最弱のクレイモアです。
そうなったのにも理由があって、そこには彼女の生きる目的が関わってきます。
テレサ
妖魔によって家族を殺され、幼くして天涯孤独の身となったクレア。
妖魔の近くに居たという理由で、助けとなる人間も彼女の周囲から離れていった。
彼女を救ったのは、歴代最強と謳われたクレイモアの戦士:テレサ。
テレサもまた、クレアとの交流によって人間らしい心を取り戻すことが出来ようになる。
いつしか、お互いがお互いにとって生きる希望となっていた。
しかし、テレサはクレアを救う為に「人を殺してはならない」という、組織の鉄の掟を破ってしまう。
組織から離反したテレサの粛清に駆けつけた、歴戦のクレイモアの戦士たち。
それすらも物ともしないテレサだったが、戦いの最中で当時のNo.2:プリシラが覚醒。
騙し打ちでテレサの命を奪い、その場に居たクレア以外の戦士すら、その手に掛けてしまう。
唯一その場を生き延びたクレアは、テレサの肉体をその身に宿し、半人半妖ですらないクォーターのクレイモアとなった。
最愛の者を殺した覚醒者:プリシラの首を狩る為にー。
復讐者から戦士へ
テレサの復讐の為にクレイモアになり、プリシラを殺すことだけが生きる意味となったクレア。
その目的を果たす為なら、自身の命すら懸けて、人生に終止符を打つつもりでさえいた。
たとえ自分が殺される結果になっても、枯れることの無い怒りのまま、プリシラに挑むことが全てだと。
ですが、その戦いの過程で、クレアには多くの出会いがありました。
- 自分を慕ってくれる少年:ラキの存在。
- 「覚醒者」との戦いで、散って行ったクレイモア。
- 絶望的な状況を生き延び、最後まで共に戦ってくれた仲間の存在。
復讐者となった彼女の周囲に、いつしか「この先も共に歩いて行きたい」と願ってしまう仲間が、そこに集まっていました。
仲間の意思を受け継ぎ、本当の戦士となっていくクレアと仲間たち。
物語の最終局面、全ての決着をつける為、戦士たちは最強の覚醒者:プリシラに挑みます。
マイナスに感じた部分
記事の冒頭で申し上げた通り、『CLAYMORE』は中弛みします。
原因はいろいろとありますが、個人的に強いて挙げるなら、以下の2点です。
- 新しい敵が多すぎる。
- ラスボスの魅力の無さ。
①新しい敵が多すぎる。
特に中盤〜終盤の展開に掛けての話になります。
今の『ONE PIECE』ほどでは無いと思いますが、敵も味方もどんどん多くなるんですよね。
加えて、作中で登場するクレイモアは全員、色素の薄い頭髪で同じ衣装をしています。
髪型などでかなり書き分け出来ているとは思いますが、正直、覚えられません。
キャラの名前の由来が、ギリシャ神話や戯曲に登場する人物名から来ているので、元ネタを知っている人は覚え易いかもしれません。
私は学生時代、世界史とか苦手な方だったので、『CLAYMORE』の登場人物を記憶するのはかなり大変でした。
(まあ、覚えていなくても大して問題はないですけどね・・・。)
人によっては気にならないかもしれませんが、「なんか、ごちゃごちゃしてるな」と思うところが少なくなかったです。
②ラスボスの魅力の無さ。
個人的にこっちが大問題だと思っています。
『CLAYMORE』のラスボスは、一貫して主人公であるクレアの宿敵:プリシラです。
対峙する敵が段々と増えて、更に強くなっていく物語ですが、その軸が最後までブレなかったのは評価できるポイントだと思います。
ただ、このプリシラ・・・全然キャラとして魅力を感じなかったんですよね。
この上の画像で「内臓食べたい」とか物騒なことを言っている奴がプリシラなんですが、こいつなりの信念とか、美学とか、欠片も感じなかったです。
ただクソほど強い。それだけ。
「プリシラについて語ってください」と言われても、私には無理です。こいつの名言とか、マジで無いんですよ。
『金色のガッシュ』のラスボスであるクリアの様な、異質感溢れる存在とかでもなく。
やっていることは、他に出てくる雑魚妖魔とほとんど変わりないですからね。
一応、こうなった過去とかは描かれていて、可哀想っちゃ可哀想な奴なんですが・・・「はあ、そうですか」としか私には思えなかった。
予想していた以上に、面白くないラスボスでした。
統括
そして迎える最終巻ですが、これが熱かった。『CLAYMORE』の最終決戦は、文句のつけようが無いくらい、面白かったです。
ここまで引っ張りに引っ張った、主人公:クレアがとうとう覚醒します。
そして、好き勝手に暴れていた、強さだけが取り柄で魅力ゼロのラスボスを、更に圧倒的な力で終始ボコすというスカッとする展開。
プリシラもラスボスなだけあって何度も何度も再生し、最強の覚醒者としての力を見せつけますが、それを全く意に介さない程に覚醒体:クレアが強い。
今まで散々、敵との絶望的な力の差を描いてきた分、ラストのカタルシスが凄まじかったですね。
唐突にこういう展開になった訳ではなく、これまでにちゃんと布石が打たれていたのも良かった。
『CLAYMORE』の最終巻だけは、何度も読み返しました。
敢えて例えるなら、『DRAGON BALL』で超サイヤ人になった悟空が、フリーザを圧倒して完結する。みたいなことです。
少年漫画は、やっぱり最後は気持ち良く勝ってくれたほうが、気持ちいいですよね。もちろん、そういった漫画だけが名作とは言いませんが。
ベルセルクとの比較
作品の比較はあまり好きではないのですが、『CLAYMORE』はしばしば、あの有名な『ベルセルク』と語られることの多い漫画です。
どちらもダークファンタジーであり、主人公の扱う武器、その他の世界観でいろいろと類似点が多いので、致し方ないところではありますね。
『クレイモア』の作者:八木教広先生も、「『ベルセルク』のような漫画を描きたい!」という思いで連載を始めたのかもしれません。
私は正直、『ベルセルク』は「黄金時代編(13巻)」までしか読んでいない、クソにわか読者なので偉そうには語れません。
ですが、どっちが上とか下とかではなく、どちらも素晴らしい作品だと思っています。
それをハッキリと表明した上で、両者の共通点を挙げていきます。
ベルセルク:
- 主人公の扱う武器は大剣。
- 敵は「使徒」と呼ばれる怪物。
- 主人公より敵の方が圧倒的に強い。
- 人が容赦なく殺されるダークファンタジー。
- 作者の逝去により、未完。
CLAYMORE:
- 主人公の扱う武器は大剣。
- 敵は「妖魔」と呼ばれる怪物。
- 主人公より敵の方が圧倒的に強い。
- 人が容赦なく殺されるダークファンタジー。
- 単行本27巻で完結。
大体、こんな感じでしょうか。
確かに共通項は多いですが、絵柄とかを比較するとそこまで似ていないです(ベルセルクは劇画寄り)。
『CLAYMORE』は『ベルセルク』程ではないかもしれませんが、それでも圧倒的な画力です。
また、個人的な意見になりますが、『ベルセルク』程には過激な描写もありません。
ただ、『ベルセルク』と違い、作中でほとんどギャグシーンがありません。
『ベルセルク』は悲惨な場面が多いですが、合間合間で和ませてくれるところもあるんですよね。『CLAYMORE』の方がシリアス一辺倒という印象でした。
こんな方におすすめ
- 絵柄が好み!
- ダークファンタジーが好きだ!
- とにかく主人公が大剣で怪物を薙ぎ倒すバトル漫画が読みたい!
そういった方は是非、読んで見ることをお勧めします。
途中はダレますが、「最後まで読んで良かった!」と思ってもらえる作品だと思います。
紹介した作品
『CLAYMORE ークレイモアー』 著:八木教広