【マンガ】日本を代表する卓球の名作漫画『ピンポン』を語りたい。

2021年3月27日

 

【書評】卓球っつうのはな、めたくそ楽しいんだぜ!


 

世の中で、最もアツい漫画と言えば何だろう?

ー世界で知らない人はいない摩訶不思議アドベンチャー『ドラゴンボール』

ー天才バスケットマンの成長譚『SLAM DUNK』

ー人間と魔物の友情と絆を描いた『金色のガッシュ!』

ー弱虫主人公が憧れの背中を追い続ける『僕のヒーローアカデミア』

 

漫画という文化の中では、王道で、真っ直ぐで、胸をアツくさせる物語が沢山ある。読み直す度に気分が高揚し、何より面白い。

ただ、歳を重ねていって色んな作品を見ていくと、自分が少年だった頃に比べて、そんな物語に夢中になる気持ちが薄くなっているのを感じる。

 

嫌いになったわけじゃない。王道の物語は大好きだ。

それでも、何となく先の展開が分かってしまうものは、好奇心が動かないし、あまりドキドキしない。

こういったことを、「大人になる」と言うのだろうか。悲しいことに。

 

そんな寂しさを感じつつある人に、是非オススメしたい漫画がある。

・・・というより、個人的にめっちゃ語りたい。なので、語らせてください。

 

 

卓球漫画:ピンポン

今回紹介するのは、卓球漫画の代表作、『ピンポン』になります。作者は松本大洋先生。

1996〜97年まで『週刊ビッグコミックスピリッツ』上で連載されていた作品です。比較的マイナーな雑誌での連載作品になりますので、知っている方は少ないかもしれません。

 

実はこの『ピンポン』という漫画、ネット上では非常に高評価の作品です。スポーツ漫画の話題になると、必ず名前を挙げられる程です。

あの『SLAM DUNK』に匹敵するのではないか、という意見もあります。

 

この作品を一言で説明すると、「一見、面白くなる要素が感じられないのに、実際に見てみるとめちゃくちゃ面白い」という漫画です。

スポーツ漫画でありながら、それらにありがちな王道展開を、外しに外しまくっています。

なのに、面白い! これが凄いのです。

 

 

特徴

『ピンポン』がどんな作品かをざっと知ってもらう為に、最初に4つ特徴を挙げます。

 

  1. 扱っている題材は「卓球」。
  2. イケメンキャラクターが一切登場しない。
  3. 描かれるのは、とにかく才能、才能、才能が全ての世界。
  4. 全5巻。

 

特徴①:卓球の漫画

卓球って私は好きなんですけど、世間的にはマイナースポーツであることは否めません。

卓球のスーパープレイとか凄いんですけどね。休日にそんなの見てるのは、私だけでしょうか。

 

日本で王道のスポーツといえば野球とか、サッカーとかになりますよね。

あまり子供に人気が出なさそうなジャンルを扱っている、というのが特徴の一つ目。

 

特徴②:作中にイケメンがいない

引用:『ピンポン(2)』

『ピンポン』を見始めた人が思うこととして、登場人物があまりカッコ良くないというのがあります。

絵だけ見たら、特に女性は中々手を取りにくい漫画だと思われます。

主人公ですら、そんなにビジュアルは良くない。そして性格が良い訳でもないです。ここは後で掘り下げていきます。

 

特徴③:才能が全ての残酷な物語

引用:『ピンポン(3)』

独特の絵や、描かれるドラマがとにかく「リアル」です。

スポーツ漫画といえば、弱小チームが努力して努力して、最後は優勝する。

・・・そんなサクセスストーリーになりがちですけれど、ピンポンは真逆を行きます。

 

才能が無い選手は、最後までずっと弱いまま

 

ちなみに、上記の画像のセリフ「何処見て歩きゃ褒めてくれんだよ!」は作中でもかなりの名場面ですね。

『SLAM DUNK』のフクちゃんじゃないですけど、もっと褒めて欲しいですよね、ハイ。

 

特徴④:5巻で完結する

全体を通して、非常に短いお話です。

各登場人物の家族関係とか、回想とか、そういったバックボーンはほとんど描かれません。

いくらでも膨らませそうな物語ですが、初見時には「そこで終わるの?」というところで最終回を迎えます。

 

 

いかがでしょうか。こうやって書き出してみると、『ピンポン』は熱血スポ根漫画とは対極であるような作品に思えます。

「本当に面白いのか?」

「アツい漫画なのか?」

そう疑ってしまいますよね。

 

でも、実際に作品を見てみると、めちゃくちゃアツくて、めちゃくちゃ面白いんです。マジで、びっくりするぐらいに。

 

 

登場人物

『ピンポン』はたったの5巻しかない漫画なので、メインとなる登場人物は5人くらいしかいません。

それぞれ程度の差はありますが、全員比類なき才能を持っており、それ故に葛藤します。

読む人によって、感情移入するキャラクターが変わります。

 

先ほど少し触れましたが、簡単にそれぞれのキャラを紹介します。

 

①スマイル(月本誠)

引用:『ピンポン(3)』

『ピンポン』の主人公です。主人公ではありますが、基本的にチーズ牛丼食ってそうな、陰キャラの権化みたいなビジュアルです。微妙に私に似ている。

作中屈指の才能を持っており、卓球部の先輩に対しても舐め腐った態度をとります。

一方で闘争心に欠けており、相手に情けを掛ける甘い一面も持ち合わせています。

 

最初は「何だコイツ」と思いますが、段々と愛着が湧いてくる不思議な主人公です。

 

★名言

「僕の血は鉄の味がする」

「先生はヒーローを信じますか?」

 

 

②ペコ(星野裕)

引用:『ピンポン(5)』

『ピンポン』における、もう1人の主人公。雨上がり決死隊のホトちゃんと同じおかっぱ頭です。

当時の時代背景を考慮しても、主人公とするには中々挑戦的なビジュアルです。おかっぱ頭が主人公の作品ってありますか?

 

こんな頭をしていますが、スマイルと同じく、圧倒的なセンスを持っております。

ただ、如何せん不真面目な性格で、練習にはほとんど参加しないで、試合にだけ出るような奴です。

 

そんな彼は1〜2巻、他のキャラクターにボッコボコにされて、拗ねます。

そして、あるキャラクターに発破を掛けられて、再起していくのですが・・・ここから『ピンポン』はめちゃくちゃ面白くなります。

最終巻で描かれる、ペコvsドラゴンは『ピンポン』どころか、私が今まで読んできた全漫画の中でも屈指のベストバウトです。そこばかり読み直しています。

引用:『ピンポン(5)』

 

★名言

「この星の一等賞になりたいの、俺はッ!!」

「反応!反射・・・音速!光速!」

 

 

③チャイナ(孔文革:コンウェンガ)

引用:『ピンポン(1)』

中国人のキャラクターであり、日本の学校への雇われ選手として登場します。

最初は非常に強く、主人公であるペコに対して完封するほどの実力を持っています。

 

しかし、本人としては「もう少し早く自分の才能を見限るべきだった」と自問自答する等、卓球という世界で抜きんでる程の才能はなく・・・

後々登場するキャラクターとの“格の違い”を印象付ける役割を担っています。

 

では、彼が不遇な結末を迎えるかというと、決してそういう訳ではないのが、『ピンポン』という作品の魅力の一つですね。

 

★名言

「救われるよ」

「風間によろしく。」

 

 

④アクマ(佐久間学)

引用:『ピンポン(3)』

チーズ牛丼を食ってそうなビジュアルその2。

主人公二人組の幼馴染であり、『ピンポン』という作品においても、とても重要な役割を持っています。

 

こんなビジュアルですが、彼はめちゃくちゃ努力家であり、その実力は卓球部の名門で先鋒を担うほど。

しかし、残念ながら才能はありません。10倍、100倍の努力をしても、物語中盤以降、覚醒した主人公にどうやっても勝てなくなってしまいます。

結果的に、多くの読者にとって最も感情移入されるキャラクターになってしまうことが皮肉です。

 

物語の終盤、彼は卓球という世界から降りてしまうことになりますが・・・

そこで終わりという訳ではなく、そんな立ち位置になったからこそ、彼は初めて強者の苦悩を知ることができます。

 

★名言

「飛べねえ鳥もいる。」

「少し泣く」

 

 

 

⑤ドラゴン(風間竜一)

引用:『ピンポン(5)』

日本一の選手であり、作中最強のプレーヤーです。もう勝てる気がしません。修羅です。

 

『ピンポン』は2002年に実写映画化されており、ドラゴン役は中村獅童さんが演じられています。

めちゃくちゃ怖くて、私が対戦相手で当たったとしたら、棄権します。

 

「勝利が必然」という環境の中で戦ってきた選手であり、物語の最初から最後まで、非常に洗練された実力で他の登場人物を圧倒します。

しかし、王者には王者の葛藤があり、決して完璧な強さではない、人間的な脆さも感じられる。そういったキャラクターです。

 

★名言

「理想を掲げることはたやすいのです。ただ理想の追求を許された人間は少ない。」

「また、連れて来てくれるか?」

 

 

どの媒体で観るべき?

『ピンポン』は漫画原作で、実写映画化、アニメ化もされている作品になります。

全て観た私から言えることは、「全部面白いから、どれを見てもいい」という結論です。

 

あえて言うのであれば、実写映画はペコが中心、アニメはスマイルが中心で描かれているという印象を受けました

実写も、アニメも、原作の魅力が損なわれていない印象を受けました。それがとても良かったですね。

 

まあ、それでも私個人としては、原作漫画で読むのが一番面白かったです。

引用:『ピンポン(4)』

 

引用:『ピンポン(4)』

 

上のような原作のダイナミックなコマ割りが、アニメでしっかりと動いています。凄いです!

 

私は友人に勧められて、アニメから入ってハマった口です。その後、映画→漫画の順番で鑑賞しました。

アニメは公式でのダイジェスト動画がYouTubeでUPされています。絵が特徴的ですが、そこだけで判断せず、最後まで見て欲しいですね。

全11話であっさり見れますし。

 

作品自体は昔から知っていたので、漫画で読みたかったのですが、漫画喫茶やGEOとかでは見つけられなかったです。

アニメ視聴後、どうしても読みたくなったので、私はKindleで購入しました。(全巻で¥3,300-)

大変満足できたので後悔はしてないのですが、最近お気に入りで行っている喫茶店に、『ピンポン』が全巻置いてあることに気づいてしまいました・・・。

 

 

作品の感想

この『ピンポン』という作品を読んで思ったことは、閉じていく物語が好きだな、ということです。

全5巻しかないので、「もう少し読んでいたかった・・・」とは思ったものの、観ている人に愛される作品というのは、しっかりと終わっている。

だからこそ名作なのだな、と改めて思います。

 

物語をどんどん膨らませて、いつまでも読者を長ーく楽しませる作品を、否定している訳ではありません。

しかし、私の心に残っている作品というのは、展開をダラダラと続けるのではなく、終わるべきタイミングでスパッと終わらせる。

そういう作品が好きですね。

 

 

紹介した作品

『ピンポン』 (原作)松本大洋

漫画(Amazon

アニメ:ピンポン THE ANIMATION(Netflix)(Amazon prime video

実写:ピンポン(Netflix)(Amazon prime video

 

 

  • この記事を書いた人

イナ

本業は設計者。29歳。書評とコラムを発信する、当サイトの管理人。気ままに記事を更新します。日課は読書と筋トレ。深夜ラジオとADVゲーム好き。

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