【書評】本気でお酒を止めたい貴方へ。大切なものを失ってからでは、もう遅い。
今回は、東京アルコール医療総合センター・センター長である垣渕洋一さんの書かれた『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』を題材に、禁酒のやり方・お酒を止めるメリット等を解説します。
禁酒したくても、できない。
「今年は思い切って禁酒するぞ!」と、新年の目標にされている方も多いのではないでしょうか。
実際、私もそうでした。去年も今年も、毎年のように「禁酒します!」と周囲に宣言しておりました。
毎年のように言うということは、つまり全く禁酒できていなかった訳です。
そんなダメ人間だった私が、真剣にお酒を止めようと思った話からさせてもらおうと思います。
お酒は楽しい。
元々、私はかなりお酒が好きな方です。
特別アルコールに強いとは思っておりませんが、出身が鹿児島で九州男児なので、生まれつきお酒とは縁がありました。
親、兄妹、祖父母、親戚・・・周囲の人たちに下戸は存在しませんでした。
そんな家系で育ってきたため、大学生になるくらいの年にはお酒を呑む機会が頻繁にあり、普通に美味しく感じられていました。
そこから、ズブズブとお酒に溺れていくことになります。
学生時代の夏休みは本当に酷かったです。
お金が無いくせに時間だけは腐るほどあるので、毎日毎晩呑んでいました。
友人たちを呼んで宴会をすることも何度かありましたが、一人でお酒を呑むことも好きだったので、自宅には常に酒のストックがありました。
「飲料水やお茶は無いのに、酒だけはめちゃくちゃある」という状態になっていました。
焼酎のボトルが3〜4日で空になっていました。
社会人になって、流石に呑む機会は減りましたが、お酒が好きなことは変わりませんでした。
趣味の少ない私にとっては、休日の夜はお酒を片手に、YouTubeやNetflix、お気に入りの映画を観ることだけが楽しみでした。
ちょっと高めのワインを買ったときには、それに合う料理を頑張ってつくったり、お酒を美味しく呑める薄張りのグラスを買ってみたり。
酒だけが人生の楽しみといっても過言ではありませんでした。
しかし、その楽しみはあるリスクを伴っていました。
時間をフルに使えない。
リスクというのは、要するに二日酔いです。
お酒が美味しくてついつい飲み過ぎてしまった次の日は、お昼すぎにならないと起きれず、頭痛は酷いし体も重くて・・・
結局、休みを丸一日潰してしまうということも度々ありました。
相当に酷いときは、新型コロナウイルスのワクチン二回目接種した後よりも、体調的にキツい思いをしたかもしれません。
「そんなになってまで、何で呑むのだ?」と思われるでしょう。
そんなこと、私が知りたいですよ!
・・・と、逆ギレしてしまいましたが、お酒の量もコントロールできない自分が、いいかげん嫌になってきました。
休日だろうと、自分の将来の為に資格の勉強をしたり、仕事のスキルアップの努力を重ねていたりする友人もいます。
そういう人たちと比べて、「俺、何やってるんだろう」と。二日酔いの度に自己憐憫に陥っていました。
特に今年は、キャリアチェンジなどを目標に掲げて、人生の転換点にしようと決意した1年です。
二日酔いで寝込んでいる暇なんて、あるはずが無い身分なんです。
それに加えて、私はこれまでの記事で、基本的に意識の高いことを書いてきました。
そんな記事を書いている当の本人が、酒に溺れているような自堕落な生活をしていては、説得力の欠片もありませんし、読んで下さっている方にも申し訳ない。
これはもう、本気で行動を変えるしかない。
そう思い、いろいろな禁酒のやり方を調べていくうちに、『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』に出会ったという訳です。
なぜ止められない?
まず、ハッキリと認識すべきなのは、禁酒・断酒は決して容易なものではないということ。
だからこそ、多くの方が試みては失敗するのです。
貴方が「禁酒したい」と考えてこの記事を読んでいるのであれば、相当に厳しいことであることを最初に言っておきます。
“何となく”の気持ちでは、絶対に達成できない目標です。それくらい、禁酒は難しいのです。
記事の冒頭に書いた通り、これまでの私がそうでした。
机の上に「絶対に禁酒する」と書いた紙を貼って、断酒を試みた時期もありましたが、長くは持たず・・・
2週間後にはハイボールをつくる用の角瓶が、冷凍庫に保存されておりました。
そうやって、一時的にハイな気分になっては翌日の体調を悪くするという、無益で非生産的な日々の繰り返し。
何でお酒を止められないのか?
という問いは一言で片付けられるほど簡単ではありません。
・・・が、敢えて言い切るのであれば、それは「誰も正しい知識を知らなかったから」です。
飲酒することによって生じるリスク、または、飲酒を止めたことで享受できる幸福。
皆さんは正しく理解した上で、説明できますでしょうか?
もし説明できないなら、今回の記事は自分の生活を見直すきっかけになるかもしれません。
そうなってもらえたら嬉しいですし、飲酒に対する認識を改めた上で、「自分ならどうするか・どう向き合っていくか」ということを考えて欲しいと思います。
記事の構成
ここから、本の解説と禁酒・断酒のやり方を紹介していきます。
ココがポイント
1.お酒は合法の薬物である。
お酒に対する認識を改めましょう。本当に人生に必要なものですか?
2.依存症であることを自覚する。
無自覚に依存症になってはいないでしょうか。依存症になり易い人の特徴。
3.シラフの方が幸せなんだ。
具体的な禁酒のやり方と、価値観を改めていきましょう。
最後まで楽しんでいただけたら、幸いです。
1.お酒は合法の薬物である。
『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』では、最初にお酒の正体を説明します。
“正体”というと大袈裟かもしれませんが、皆さんはお酒をどのように捉えていらっしゃいますか?
もし、「食料品」や「嗜好品」の一種と思われているのであれば、それは大きな勘違いです。
人の好みで呑む/呑まないがありますから、「嗜好品」と考えている人も多いと思いますが、人間の脳や体へ与える影響を考えると、立派な薬物です。
お酒は、薬物なんです。
それも、精神的な効用はありますが、身体的な健康効果は何一つとして存在しない薬品です。
・・・その認識は、持っておられましたか?
タバコに関しては、皆さんも悪影響は充分に理解しているはずです。
肺は汚れるし、煙は臭いし、癌になるリスクもあるし、あと税率が上がってクソ高いし・・・。
しかし、お酒に関してはどうでしょうか?
疲れた後の一杯は格別に美味いですし、アルコールは脳内でドーパミンの分泌を促すので手軽にハッピーになれます。
その高揚感と気持ちの良さは、私もよく知っています。しかし・・・
呑みすぎることによる健康被害のリスク。また、気が昂ることによる暴行事件。
さらには飲酒運転による事故などは、今も世界中で起こっています。
最悪、人を殺傷しかねないということを考えれば、社会的な影響は計り知れないもの。
そんなものが手軽に入手できてしまう為、誰もが知らず知らずに、もう後戻りができないところまで来ている可能性は、充分あります。
それも、極めて現実的に。
「酒は百薬の長」は単なるキャッチコピー
“適量の酒はどんな良薬よりも効果がある”という意味で使われる「酒は百薬の長」という言葉。
お酒を呑む人の免罪符として使われている節がありますが、確かに私が中学生の頃、保険体育の教科書にも載っていた記憶があります。
参照リンクはこちら!
ネットで検索した記事に依ると、「適度な量を守れば〜」という記述がありました。
なので、「たまに呑む分にはむしろ体に良い」と思われている方も多いと思います。
しかし実際には、この言葉の起源は“酒税をたくさん確保するためのキャッチコピー”でしかなく、飲酒による病理も多々あります。
うまく使えばメンタルヘルス的なメリットがあるとしても、
(中略)
たとえ少量であれ、体のためには飲まないのがベストです。
というのが、本書に記載されていた解説です。
あと、メディアなんかでは90代の方が毎日晩酌するのに健康です!とか紹介されていたりしますが、それは珍しいから取り上げられているだけであって、健康を保証するものでは決してありません。
そんな事例はお酒に限らず、世の中には山ほどあります。踊らされないようにしましょう。
・・・まあ、何を信じたいかは人それぞれですけどね。
2.依存症であることを自覚する。
自分がアルコールの依存症か、そうではないのか。
習慣としている飲酒量に、どの程度のリスクがあるのかを正しく理解しておくことは、非常に大事です。
といっても、病院に行って検査や薬を飲む必要はなく、簡単なテストがあります。
WHOが開発したスクリーニングテスト:AUDIT(オーディット)と呼ばれるもので、世界標準として使われています。
ネットでも簡単に受験できますし、やり方は10の質問に答えるだけなので5分あれば十分です。
参照リンクはこちら!
危険な飲酒のカットオフ値は世界的には8点です。
またアルコール依存症の場合には13点にしているところが多いようです。
わが国では15点あたりが妥当だと考えられています。
私は社会人になってからは、仕事の前日には呑まないようにしていたので、基本的には週に2回。
それなのに、17点もありました。
この本に依ると、立派にアルコール依存症の予備軍です。
飲み方として危険なレベルにあり、様々な悪影響・問題が起こりやすいほどのレベル・・・とまで書かれておりました。
厚生労働省のサイトでは「15点あたりが妥当」と書かれていたので、何が何でもダメ!とも言い切れませんが、結果は結果です。
私のように、“依存症”であることに無自覚な方はきっと多いと思います。
日本人は依存症になりやすい
お酒に強い/弱い、依存症になりやすい/なりにくい
・・・というのは、アルコールの分解酵素とアセトアルデヒドの分解酵素の組み合わせにより、5つの体質のタイプに分けることができます。
そして、日本人のおよそ半分は、お酒に弱い遺伝子を持っています。
私たちは、体質的にはアルコールに弱いのです。
5つの体質はA〜E型に分類されており、ざっくりと線引きすると・・・
- A,B → アセトアルデヒドがたまりにくい(お酒に強い)
- C,D,E → アセトアルデヒドがたまりやすい(お酒に弱い)
という感じです。本の内容としては、こういう大まかな分類しか載っていなかったので、確実に知りたい方は遺伝子検査を検討してみてください。
ここで重要だと私が思ったのは、お酒が強い人ほど依存症になりやすく、将来へのリスクが高いということです。
お酒が強い=カッコいいという価値観を持っているかもしれませんが、その認識は改めた方が健全です。
お酒の強い/弱いで、人としての優劣が決まることは決してありません。
私は呑んでもあまり顔に出ず、翌日までお酒が残る傾向にあったので、恐らくA型かC型に分類されると思います。
このタイプ(A型)こそ最も依存症になりやすいとのことでしたので、特に注意が必要ですね。
そして、どんな人がお酒にハマりやすいかと言うと、「頑固」な人。そして、「優等生」と呼ばれるタイプが多いとのことでした。
表向きは恵まれた家庭で育った真面目な子供でも、両親が不仲だったり、大人の顔色を伺ってばかりだったり、
・・・ということは十分に考えられます。
本音を抑えて我慢することを強いられた結果、寂しさや孤独から逃れる為に、自己治療としてお酒を用いる。
そんなケースは本当に多いらしいです。
真面目な優等生こそ酒に溺れる、ということは肝に銘じておきましょう。
私が思うに、日本人はそんな方ばかりだと思います。
それ自体は良いことですが、同時に、お酒で人生を台無しにする危険性を多くの方が抱えているのです。
3.シラフの方が幸せなんだ。
そうはいっても、人類史全体で観ても、アルコールとの付き合いは長いです。
いきなり今の社会からゼロにするということは、不可能でしょう。飲酒によるメリットも当然あります。
例えば、お酒が入ると気持ちに遠慮がなくなって、友人に対して思い切った相談をすることが出来ます。
プライベートだけでなく、ビジネスの場においても効果的に使われてきました。
ただ、時代は変わるものです。
「お酒を呑まない生き方(ソーバーキュリアス)」という動きが近頃トレンドになっており、SNSなどを通して変化が加速しています。
呑めるのがカッコいい時代は終わり
ソーバーキュリアスという言葉を訳すと、
「シラフでいたがる」
「あえて呑まない人」
というニュアンスになります。
実際、今の日本でも若い人たちは、アルコールを口にする機会は少なくなっています。
私の周囲の人たちも、普段の生活で全然呑まない人は珍しくありません。
私自身は呑む方だと自覚していたのですが、それでも正月に実家に戻ると「休日しか呑まないのか!?」と、伯父さんに驚かれました。
言い方が悪いかもしれませんが、昔の人たちは毎日酒を呑むことが当たり前であったのでしょう。
ハードボイルドに、豪快に酒を呑むことが、賛美されていた時代でしたから。
しかし、これからの令和以降の時代は、社会人であってもお酒を使わない、シラフでのコミュニケーションの方が自然になっていくでしょうね。
「呑めるのがカッコいい」、ではなく「シラフでいるのがカッコいい」という価値観に変わりつつあるのです。
更に、本書に書かれていたこととして、「お酒も規制が入る時代になるかも」といった文脈がありました。
アルコールの取り締まりが当たり前になる時代が、来るかもしれない。
かつては電車で喫煙できたことを考えると、決して有り得ない未来ではありません。
世の中には未だ、「お酒の席だから・・・」という価値観が残っているのかもしれませんが、これからは決して許されません。
お酒の席で気が大きくなって、暴言を吐いたりするような人も実際にいます。
そんなのは、人間のクズだとすら思っています。
自分のことだけでなく、周囲の人を不幸にしてしまう。
その結果、家庭内で亀裂が入っていき、最終的には離婚するというケースもあります。
そういったリスクを受け入れる覚悟が、あなたにはありますか?
そこまでして、呑まなきゃいけないものでしょうか?
禁酒のやり方
ここまで勿体ぶってきましたが、禁酒のやり方で最も効果的だと感じたのは、ソーバーキュリアスへの価値観のアップデートです。
シラフのままでいる自分を誇りに思い、「お酒がない人生こそ素晴らしい」という変化を人生に起こすことです。
飲酒習慣がなくなれば、その空いた時間を使って新たな目標にチャレンジしたり、将来の投資となる活動に取り組む余地が生まれます。
体重は落ちるし、暴飲暴食を止めることで肌の状態も良くなります。見た目も若々しくなるでしょう。
実際、お酒を呑まない方で芸人の「なかやまきんに君」が有名ですが、とても40代には見えないですよね。
(ストイックな運動と食事をしているという理由もありますが・・・)
その恩恵を得るには、“呑まない選択をする”だけです。
時間は有限だから、今までの自分から変わりたいなら、惰性でやっていた習慣を「捨てる」しかありません。
・・・とは言っても、
「お酒がない人生なんてつまらない。」
「1日(1週間)が終わった気がしない。」
そう思う方もいらっしゃると思います。断酒生活を始めた私も、正に同じことを思っています。
本書で推奨されていた禁酒のやり方は、大きく分けると2つです。
- 禁酒の記録を「見える化」すること。
- 周囲に宣言すること。
記録するものは紙でもExcelでもなんでも良く、毎日の成果が見られるように出来ればOKです。
私は大学ノートに毎日記入しています。
禁酒は本当にツラいと感じるので、「一人でやってはいけない」と本書では強く書かれておりました。
同じ志を持つ仲間をつくり、皆で頑張れるような環境をつくれれば、禁酒できる可能性は高くなります。
SMS上で探せば、いくらでも見つかると思います。あるいは、親しい人への約束事にするとかですね。
在宅勤務が続いてストレスが溜まりやすいご時世。
私もつい呑みたくなっていますが、ノンアルコール飲料や炭酸水でごまかしごまかしやっています。
一緒に頑張っていきましょう!
余談
断酒生活3週間目の心境ですが・・・。
流石に未だ、体調面で驚くほどの変化は感じていないです。
1週間が終わったスイッチという意味で、酒を呑んでいたところがありましたので、「リセット感」がなくなったことが辛いですね。
1週がずーっと続いているように錯覚します。
良かったこととしては、休日が凄く長く感じるようになりました。
「あ、未だ明日(日曜)まで休みか〜」みたいな気分です。
以上、最後まで読んで下さってありがとうございました。
紹介した本
「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本 (著)垣渕洋一