【要約】自分自身の声を聴こう『「言葉にできる」は武器になる』

2020年5月26日

©日経BP/梅田悟司

【書評】無意識に使っている言葉に本質が表れる。


 

伝わる言葉を生み出すには

突然ですが、皆さんには好きな言葉や、キャッチコピーはありますか?

 

私は特にこれ!といったものはないのですが、強いて一つ挙げるとすれば、

ジョージアの「世界は誰かの仕事でできている」が好きです。

まあ、普段の生活で缶コーヒーそんなに飲まないですけどね。

 

この『「言葉にできる」は武器になる』の著者は、そのキャッチコピーを生み出した方です。

こういった“名フレーズ”を生み出している人は、どうやって万人に共感させる言葉をつくっているのか、気になりますよね。

 

私は、目の前にいるたった一人と、意思疎通をとるだけでも精一杯です。

その違いを、「才能」という言葉で片付けるのは簡単ですが、私はそんな簡単に諦めたくありません。

 

どうしたら、人に伝えられる言葉を生み出せるようになるのか?

結論は「内なる言葉を磨くこと」です。

 

 

内なる言葉

本書のキーワードになります。この内なる言葉を磨くことで、

日常会話・ビジネスシーンにおける相手との理解の壁を取り去り、共感を得られるようになります。

コミュニケーションにおける最高の状態ですね。

 

内なる言葉というのは、無意識に浮かんでいる感情や、何かを考えているときに頭の中で使っている言葉のことです。

自分の考えや感情は、「内なる言葉によってもたらされている」と言えます。

これを正確に把握することで、自分の考え・意見が芯の通ったものになり、相手に納得させることができるようになります。

 

つまり、内なる言葉を磨くことで、外に向かう言葉も強くなっていくということです。

 

「相手に共感させるためには、いろんな言葉の使い方を覚えたり、上手い話し方の技術を身に着けたほうが早いのでは?」

ーという意見もあるでしょう。

 

確かに、私たちには他人の思考を読み取ることはできません。

人に伝えるためには、喋り方・言葉の使い方も重要です。

 

しかし、思考の進化がなければ、言葉が成長することはありません

いかに難しい言葉を使っても、喋り方の技術を身に着けたとしても、

言葉に宿る“重さ”や“深さ”を偽ることはできません。

 

話を聞く相手からしてみれば、

「なんか格好良いこと言っているけど、結局何を言っているのか分からないんだよなあ」

ーとなります。下手すれば「薄っぺらい奴」と思われて終わりです。

 

内なる言葉を磨く

まずは自分の意見を育てましょう。そして、その意見を言葉に変換しましょう。

内なる言葉は、常に生まれています。

 

  • 悲しいとき、嬉しいとき。
  • 過去を振り返るとき、未来を思うとき。
  • 困難に直面したとき、成功を収めたとき。

 

湧き上がってくる感情を、漠然と受け流すのではなく、一つ一つを言葉として認識すること。

この繰り返しによって、内なる言葉に幅と奥行きが生まれます。

 

これは、自分自身の本当の気持ちに向き合うということです。

外に向かう言葉が変わるだけでなく、人生そのものに変化をもたらします。

 

もし、内なる言葉を無視し続けていたら、あなたはずっと「建前で生きていく」ことになります。

  • 皆が勧めているから、美味くもない料理をおいしいと言う。
  • 皆が「泣いた」と言っている漫画だから、嘘をついて「私も泣いた」という。

 

こんな経験ありませんか?

ちなみに、この例は全て私がやってきたことです。他人にも自分にも嘘つきまくりの人生でした。

まあ、大人には時に“嘘”が必要な場面はあります。

 

でも、自分自身に嘘をつくような人生は、もう終わりにしませんか?

 

 

内なる言葉の解像度を高める

本書の中で、内なる言葉を磨くという行為は「解像度を上げる」と表現されています。

内なる言葉というものは、それだけでは頭の中に浮かんでいる状態なので、

目に見えないですし、客観視もできません。

 

内なる言葉の解像度を上げる、すなわち思考を深めるという行為は、頭の中だけで行うものではありません

そんなことをしても、頭がごちゃごちゃになったり、同じことで悩んだりします。

 

では、どうすれば内なる言葉の解像度を上げることができるのか。結論は「書きだす」ことです。

これは以前、『ゼロ秒思考』という本を紹介したのですが、同じテクニックを使います。

【要約】思考の質とスピードを上げるトレーニングメソッド『ゼロ秒思考』

続きを見る

 

解像度が低いと?

内なる言葉の解像度が低いと、思考や感情が漠然としており、

自分が本当は何を感じているのか・考えているのかが正確に把握できていません。

相手に論理的に突っ込まれた時に、グウの音も出なくなってしまいます。

 

これを私は勝手に「ぐぅ状態」と名付けているのですが、仕事中はそうなることが多いです。

この状態になったとき、私はまだまだ未熟だなーと思います。

 

それだけなら良いのですが、こういうことが続くと、自分に自信が持てなくなってしまいますよね。

人にダメ出しを受けるのが怖くなり、やがて意見を言うこともなくなってしまう。

 

そうなると、成長の機会も失われてしまいます。

こういった“負のループ”に陥らないためにも、内なる言葉の解像度を高めることが大事なんです。

 

内なる言葉が鮮明になればなるほど、あなたは自分がやりたいことがはっきりし、

周りに押し流されて見えなくなってしまった「本当の自分」を把握できます。

自分自身を理解したとき、言葉は自然と強くなっていきます

 

 

抽象度を意識して話す

解像度を上げるという行為は、抽象度を失くすということと同義です。

コミュニケーションに齟齬が生まれる大部分は、話す内容が抽象的すぎるから起きています。

思えば、私が仕事で「ぐぅ状態」になっていたのも、大体の原因がこれです。

 

私の体験
  • 仕事でPCの画面を見せながら成果を報告していたとき、「ここをどうすべきか迷っています」と言うと「ここって何?」と返される。そういった細かい部分の名称や役割まで把握できていなかったため、「ぐぅ」。
  • 仕事を依頼されたとき、「今の仕事を終わらせてから取り組みます」と答えると「いつまでにできるの?」と返される。一つ一つの作業に関する工数を計算できていなかったため、「ぐぅ」。

 

新卒一年目の頃は、こういうことが本当に多かったです。

何が原因で起こっているのかというと、「考えが浅い」ということに尽きます。

 

対策

私のようにならない為に、本書では「T字型思考」というものを推奨しています。

詳細は本を読んでほしいのですが、簡単に紹介すると

  1. なぜ?
  2. それで?
  3. 本当に?

ーという思考のプロセスを踏んでいくことです。

そうすれば、言葉の解像度は自然と高まっていきます。

 

一人で考えていると思考が止まってしまうことも多いので、是非試してみてください。

上司に理詰めで責められることも少なくなります

 

抽象的な表現に逃げないこと

抽象度を失くし、具体的に突き詰めていくというプロセスは、

人生においても滅茶苦茶大事です。

 

とある有名大学の学生に調査した結果、将来に向けての目標があると答えた学生と、

超具体的な目標設定ができていた学生では、年収が数倍も違っていたそうです。

 

まあ、当たり前の話ですよね。このことから私達が学ぶべき教訓は、

目標設定は具体的にやらないと意味が無い」ということです。考えてみてください。

  • 私達は何度、英語の勉強を挫折しましたか?
  • 私達は何回、ダイエットに失敗しましたか?

 

意気揚々と「毎日2時間勉強する!」、「来月までに3kg落とす」と決意しても、絶対に達成できません。

そんなので達成できるのは、天才か変人だけです。

達成するまでの具体的なプロセス、行動目標が皆無ですから。

 

このことについては以前紹介した、MBさんのこちらの動画をご覧ください。多くの方にとって耳が痛い内容ではないかと思います。

【紹介】私が普段よく見ているyoutuber 人生を豊かにする発信。

続きを見る

 

当ブログも、1週間に1本の投稿を目標に最初はやっていましたが、

行動目標が具体的に設定できていないときは、全然投稿できていませんでした。

 

今はやり続けるための工夫を取り入れているので、曲がりなりにも続けられています。

 

 

実際に心に響いた言葉

私の人生の中で、特に印象に残った名スピーチは2つあります。

キング牧師の“I have a dream”とスティーブ・ジョブズの“Connecting dots”です。

あまりにも有名なスピーチですから、知っている方も多いですよね。

 

これらのスピーチが印象に残るのは、決して難しい言葉を使っているからではありません。

むしろ、誰にでも理解できるような簡単な言葉しか使っていません。

 

彼らのスピーチは話す言葉の巧さによって共感を得たのではなく、自身の体験から生まれた感情、

命を懸けてでも伝えたい思いがあったからこそ、多くの人々の心を動かしたわけです。

 

別にこんなに有名なスピーチでなくとも、感動できる言葉は世に溢れています。

例えば、結婚式での花嫁のスピーチ。「お約束」だと分かっていても、やっぱり感動しますよね。

 

あの場で花嫁が話している言葉は、とても平易なものです。

「お母さん、私を生んでくれてありがとう」といった、

極普通の、当たり前といってもいい両親への感謝の言葉。

 

でも、正真正銘その人の“本当の感情”です。花嫁の話す言葉から、その人自身の人生や、思いが伝わってきます。

「今まで素直になれなかったけど、心の底では誰よりも愛している」

実際には喋っていなくても、そういったメッセージを私達は受け取ることができます。

 

人の心を動かすのは、話している人の本気度・使命感です。

その人が生きる上で感じてきた、思いの込もった、体温ある言葉だからこそ人に伝わるんです。

それは得てして、かっこいい言葉や難しい言葉ではなかったりします。

 

“名曲”と呼ばれる曲も、歌詞自体はとてもシンプルなものが多いですよね。

人の気持ちに深く染み込む言葉は、誰もが知っている単語によって成り立っているんです。

 

 

一人に伝われば、皆に伝わる

著者である梅田さんが、仕事で気をつけていること・人に伝わる言葉のテクニックが、

本書の中でいくつか紹介されています。その中でも印象に残ったのがこれです。

皆に伝えようと思っても、誰にも伝わらない」ということ。

 

多くの人に伝えようと思えば思うほど、逆に誰の心にも届かない言葉になっていきます。

それは、世の中に誰一人として“平均的な人”なんて存在していないからです。

そもそも存在しない相手に伝えようと思っても、何を重点的に話していいかが分かりません。

 

だから、たった一人の為に言葉を生み出すこと。その一人をはっきりと意識して、

「この人だけには伝えたい」という気持ちでつくった言葉こそが、

結果的に多くの人の心を動かします。

 

どう言い換えれば、多くの人にとって分かりやすいものになるか、考えることを習慣化しましょう。

言葉にできないということは、言葉にできるだけ考えられていないのですから。

 

 

紹介した本

「言葉にできる」は武器になる』 著:梅田悟司

オススメ度:★★★★☆

※自分の本心を話せるようになれば、多くの人から信頼されるようになります。

 

  • この記事を書いた人

イナ

本業は設計者。29歳。書評とコラムを発信する、当サイトの管理人。気ままに記事を更新します。日課は読書と筋トレ。深夜ラジオとADVゲーム好き。

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