©日本実業出版社/安達裕哉
【書評】新社会人必読の一冊。
ビジネスパーソンの教科書
社会人なら誰でも、「仕事ができる奴になりたい!」という思いは共通しているのではないでしょうか。
出世にはそんなに興味無い人はいるでしょう。でも、仕事を楽にこなせるに越したことはありませんよね。
だから、「仕事ができる」という状態は、社会人にとって共通の理想です。
具体的に「仕事ができる」ようになるには、どうすればよいのか?
業種によっては、求められる知識・技術・考え方が異なりますから、万能のスキルというものは存在しないでしょう。
しかし、どんな仕事をしていたとしても、大事にすべきものはあります。
今回紹介する『「仕事ができるやつ」になる最短の道』は、
コンサルティングを通して8000人以上のビジネスパーソンと会話した著者が、見聞きしてきた仕事に関する見解を、
一冊の本として集約したものになります。
正確にいうと、著者の安達さんが運営するブログ「Books&Apps」の仕事に関するコンテンツのみを、書籍として編集したものです。
本書の登場人物は、一般的な会社の経営者の方がほとんどです。スティーブ・ジョブズや、イーロンマスクのような伝説的人物の話ではありません。
だからこそ、私たちにとっても実践しやすい内容になっています。
- 仕事を依頼されたとき、どう動くか
- 信頼される人間とは、どういった人間か
仕事のやり方から、人間の本質に迫るようなものまで、様々な経営者の考えを知ることができます。
そのうちのいくつかは、今あなたが抱えている悩みに対して、問題解決への糸口になるかもしれません。
本書は以下のような構成です。
構成
- 今日からできること
- 1週間程度でできること
- 1ヶ月以上しっかりと取り組むべきこと
- 1年程度かけてじっくりと取り組むこと
- 3年は取り組むべき大きなテーマ
- 一生かけてやる価値のあること
一章ごとに、安達さんが現場で得られた具体的なエピソードが紹介されています。どれもタメになる話だったので、要約することが難しかったです。
当ブログでは、私が読んだ中で「特に良かったもの」を、厳選して紹介させて頂きます。
・・・が、それでも長くなってしまったので、前編と後編に分けました。前編が1~3、後編が4~6の内容の紹介です。
本書はアマゾンプライム会員なら無料で読めるので(2020年6月現在)、興味を持った方は是非読んでみて下さい。
決意する(今日からできること)
人生で大切なことは、今日からできることをまず、やるということです。
人生を変えるには
人生を変えたい!と思っている人が、実際に変わるにはどうすればよいのでしょう?
結論をいうと、「日常の習慣を変えること」です。
ゲームやドラマとは違って、人生に一発逆転のイベントなんて存在しません。
日常の習慣とは、例えば「早起きをする」、「通勤中は必ず読書する」といったものです。
何かやるべきことを決めて、継続させることが人生を変える第一歩になります。
ただし、経験がある方には分かるでしょうが、習慣化させるのは非常に難しいことです。
特に「早起きの習慣」なんて、私は何度も挫折してきました。
意思の力だけでは絶対に習慣化できないので、「絶対にやるためのシステム」をつくる必要があります。
テレビを見るのを止めたいなら、テレビの線を切断するか、テレビ自体を処分するかしないといけません。
この例でいうと他の手段も考えられますが、そこまでしないと習慣化は無理ですよ、ということです。
習慣化で本当に人生変わるの? と、思うかもしれません。
ですが、本書では毎日「仕事で電話を10本かけること」を習慣化させた社員が、社内トップの営業マンになったエピソードが紹介されています。
そして、上手くいかない原因を他人のせいにしてはいけません。
仮にその人が悪かったとしても、人は他人を変えることはできませんから、悩んだり愚痴を言ったりすることは無駄な行為です。
人生を変える上で最も重要なのは、人に親切にするということを守ること。全ての変化は人に感謝することから始まります。
これができているなら、その人の人生はもう成功しています。
やってみたいは迷信、やってみたは科学
散々いわれていることですが、世の中にアイデアというものはありふれています。
世界的IT企業であるGAFAも、やっている事業そのものには先駆者がいました。
だから、世の中に変化を起こすなら「行動する」以外にはありません。
自己啓発本とか読んでいると分かりますが、書いてある内容ってどれも大差ありません。
表現が秀逸とかの違いはありますが、人生の成功法則って既に分かりきっているんです。
なのに、書店とかの自己啓発系の新書コーナーは、平積みされるほど大人気です。
私自身がそうだったから分かるのですが、大体の人は本を読んで満足しています。本の内容を実践しないのです。
本から学んだことの中から、あるいはこれからの人生で、「やってみたい」と思うことと「やってみた」の間にはとてつもない差があります。
この2つは、全く次元が違う話です。
やっていない人は、思い込みの中でしか動くことができません。
やってみれば、失敗するにせよデータがとれます。そこから課題の分析、次の試行の方向性が決まっていきます。
簡単にいえば、「とにかく打席に立ってバットを振り続けろ!」ということです。
アウトプットを先に行う
仕事ができる人は、概ねアウトプット派が多いそうです。アウトプットを先に行えば、スキルアップのスピードが大きく変わります。
プログラミングを早く身につけたい!という人は、先に何かしらのアプリやゲームをつくることから始めましょう。
よく分からない情報商材やらスクールに通うより、よっぽど得られるものは多いはずです。
これは仕事に限らず、勉強でも使えるテクニックです。
TOEICのスコアを伸ばしたいなら、とにかく先に模試をやりまくる。そして、覚えられない単語や文法を後から学習する、といった具合にです。
その方が遥かに効率が良いです。
しかし、世の中の多くの人は「インプット派」です。
これは小さい頃からの学校教育で授業が先、テストが後という体験をしてしまっているので、どうしてもこのスタイルが身についてしまっています。
これの何が良くないのかというと、仕事において「習っていないからできない」という言い訳が生まれます。
でも本来、「きちんと習える」という経験は非常に少ないことです。
習ってからできるようになるのではなくて、やりながら覚えていけばいいのです。
とにかく、手を動かすこと。どれだけ知識を自分の頭に詰め込んだところで、世の中には何も還元されませんからね。
仕事の選択
一流になるには、当たり前ですが時間がかかります。スキルを身に着けたり、不本意な仕事をこなしたりするのは避けて通れないからです。
だからこそ、自分がやりたい仕事、一生懸命できることを探しましょう。
自分にやりたいことがないなら、先ずは与えられた仕事で一流を目指すかどうかを決める。
それが嫌な場合は、どの仕事で一流を目指すのかを早く決めなければいけません。
決断が早ければ早いほど、一流になれる確率が上がるからです。
「好きなことが分からない病」にかかっている人は、自分が何が得意なのかを自分で決めてください。そこに正解・不正解はありません。
全部、正しいからこそ、「何になりたいか」を突き詰めて考えてください。
また、この章では仕事の「辞め時」をどう判断したらいいのかも書かれていました。
長くなるので割愛しますが、概ね同意できる内容でした。
「石の上にも三年」という格言がありますが、今の時代には三年は長すぎるのかもしれません。
小さな変化を起こす(1週間程度でできること)
習慣化ができれば人生は上手くいきます。ここからはより具体的な、仕事の話になります。
仕事ができるようになるには
どうすれば仕事ができるようになるのでしょうか。
「スキルを身につける」
「論理的思考力を鍛える」
・・・といった回答でも、間違いではありません。
しかし、安達さんはこの質問に対して、最も重要なのは次のことだと述べています。
最初に意見を言うこと。
簡単そうに見えて、これはとても勇気がいることです。意見が見当外れのものであれば、当然上司からは否定されます。
特に、新人が会議などで真っ先に手を上げるというのは、中々ハードルが高いのではないでしょうか。
ですが、ある経営者の方は「仕事で一番偉いのは、一番最初に案を出してくれる人」と述べています。
権限を持っているから偉い、というのは違います。
私たちも気をつけないといけないことですが、批判や粗探しをするのは、誰だってできるんです。
ですから、たとえ間違いであったとしても、最初に意見を言ってくれる人を尊重しなければいけません。
仕事を依頼された時に、どう動くか
ここは是非、本で読んで欲しい部分です。ここでは流れだけ書きます。
①納期を確認する。
②アウトプットの合意をとる。
③仕事を分割する。
④難しいことから取り掛かる。
⑤行き詰まったら、即相談。
⑥説明責任を果たす。
⑦前例を探す。
⑧仕事を依頼するときには早めにして、1〜7を守らせる。
安達さんは今でも、このルールを守って仕事をしているそうです。
どの業界・分野でも使えるテクニックですので、仕事が上手くいかないと感じている方は試してみてください。
会話のコツ
社会人になってから痛感したことの一つですが、「人と喋らない仕事」って存在しません。
頻度・重要性は業界によって様々だと思いますが、「コミュニケーション能力は重要なスキル」と考えている人は多いのではないでしょうか。
本書で紹介されている会話のコツは、以下の2つです。
- 相手が話したいことを聞く
- 相手が聞きたいことを話す
ポイントは、自分が話さなくても相手が勝手に話したくなる状況をつくることです。
そうすれば、「上手く話さなければいけない」というプレッシャーも少なくなります。
緊張すると、逆に喋りすぎてしまうという状態に陥りますが、無理に話す必要はないんです。
そして、最も重要なのは「相手の立場になって考える」というサービス精神です。
それが、話の分かりやすさに直結します。
話し方については、以前紹介したyoutuberの「マコなり社長」がいくつか有益な動画を出しています。そちらもご参考ください。
-
【紹介】私が普段よく見ているyoutuber 人生を豊かにする発信。
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信頼を積み上げる(1ヶ月かけてできるようになること)
仕事で最も大切なこと、言うまでもなく「信頼関係」です。時間をかけてつくっていきましょう。
学生と社会人とのコミュニケーションの違い
学生時代と社会人では、要求されるコミュニケーションが大きく違います。本書では、次の3つに集約されるとあります。
- 上下関係を含む
- 受け手が中心になる
- 要求を含む
1に関しては、学生時代にも上下関係があった方がいると思います。
私も体育会系の学校出身なので、先輩とのヒエラルキーはありました。
むしろ、社会人になった今よりも大きかったかもしれません。ここの説明は省きます。
2は「嫌いな相手とも付き合っていかないといけない」ということ。
3は「相手を動かさないといけない」ということです。
私は職場に部下がいないので、現状、3のコミュニケーションに関して困ってはいません。
しかし、過去の経験から、人を動かすことの難しさは理解しているつもりです。
私の体験談
私が学生時代、体育祭の実行委員をやっていたとき、指示どおりに動かない人・やる気の無い人の多さに驚きました。
当時は先生方の協力もあったので、自分が困っているということを伝えれば、何とかなりました。
この話を聞くと、「子どもだから仕方ないよ」と多くの人が思うでしょう。
しかし、社会人になってからも同じようなことがありました。
以前に仕事とは全く関係ない、あるプロジェクトを4人のチームでやったことがあります。
簡単にいうと「4冊の別ジャンルの本を、それぞれが要約して発表する」というものです。何も難しいことはありません。
しかし、仕事外で責任感の欠如したものだったからでしょうか。最終的に準備してきたのは、私を含めて2人だけでした。
やっていないメンバーに対して、何回もこちらから連絡したのですが、最終的に着信拒否されました。
最初は、自らが志願したプロジェクトだったのに、途中で諦めて放棄したんです。
その人を責めるのは簡単ですが、私にも反省点があったなと今では思っています。
どうすれば、人に動いてもらえるか?
こういった、性格の合わない人・やる気の無い人に動いてもらうにはどうすればよいか、本書で参考になったのは以下のポイントです
- 相手が欲している情報を、常に相手に確認する。
- 相手の価値観を重視し、感情を理解する。
一人ひとりの価値観は違いますし、どれが絶対的に正しい考えかというのは、人それぞれです。
だからこそ、仕事上ではコミュニケーションの齟齬を失くすために、共有度を高める必要があります。
相手が理解しやすい「共通言語」を使ったり、自分が話す前に相手が欲しい情報を聴いたりすると良いですね。
また、人間は感情を持っている生き物です。だから、人を動かすものは論理ではなく、感情です。
かといって、論理性がなければコミュニケーションは崩壊してしまいます。
論理+感情が必要ということです。
ただ「これをやっといて下さい」で済ませるのではなく、
「信頼しています」という一言を加えるだけで、その人が仕事に取り組む意欲が変わります。
要するに、「相手に充分な配慮をする」ということです。
要約のため、色々説明を省略していますが、この章では「信頼を築くコミュニケーション」について論じています。
その基本にあるのが「相手の立場になってみる」ということです。
そのために重要なのは、自分の意見に自ら反論してみること。そうすれば、自分の意見と異なる相手の、考えの本質が見れてきます。
自分の「正しさ」は一旦、脇に置きましょう。
自分という人間も感情を持っているので、難しいことですが、それが信頼される人になるための第一歩です。
紹介した本
『仕事ができるやつになる最短の道』 著:安達裕哉
オススメ度:★★★★★
※後編へ続く