©幻冬社/須藤憲司
【書評】生産性をぶち上げる方法。→大多数と同じ土俵で勝負するな。
少し前から『コードギアス』という昔のアニメを見ていたのですが、最終回が近づくにつれて先が気になりすぎてしまい、一気に見てしまいました。友人から推されて見たんですが、面白かったですね。
超ざっくり内容をまとめると、天才主人公がイケボと催眠能力を駆使して、大国に革命を起こそうとするロボットアニメです。
面白いのですが、少々長いのが欠点ですね。2シーズンで50話あるので、見終わるまでに2ヶ月位かかりました。
とはいえ、今回の記事の内容は『コードギアス』ではなく、本の紹介です。
ハック思考
退学率を減らしたい。温浴施設のチェーンでの会員の予約率を高めたい。大規模な営業組織の売上を高めたい。金融機関でローン審査が通った人の貸出率を高めたい…2ステップでハックし、劇的に成果を上げる。創業2年半で顧客の売上を240億円増やした、スーパーグロースハッカー初の著書。
いかにもなザ・ビジネス本です。
Newspicksのビジネス系の記事は普段の通勤時間とかにチェックしているので、あまりこういうビジネス本を読むことは少なくなっています。
ただ、この本はkindleセールで半額になっていたので購入しました。
一言でいうと、良いところと悪いところが両方あるという内容でした。先に良いところから紹介します。
良いところ
- 本の最初に概要が載っているので、全体像が分かりやすい。
- 著者の経験則や実際の会社人生で学んだ考え方が載っており、勉強になる。
まあ、勉強にならない本なんて滅多にないですけどね。では、悪いところも紹介します。
悪いところ
- 抽象度が高いので、実践的でない。
- 何を言っているのか分からないところがある。
最短最速で世界が変わる方法
この本ではまず、最初の方でハック思考とは何か?ということを初めに提示されます。
ハック:同じインプットから大きな成果を得られるように転換効率を劇的に高めること。
その方法としては、次の2ステップで実行できるとされています。
人と違う規則性や法則を見つけて、・・・①
その規則性や法則を構成するシステムのスキマに介入する。・・・②
私なりに言い換えると、「人と違う結果を出したいなら、人と違うことをやらなければいけない」ということです。
歴史上の偉人とかの、自伝を読んだことある人は多いと思います。全員、漏れなく変人ですよね。
言ってしまうと、彼らは頭がイッてしまっています。だからこそ、他の人とは違う結果を出すことができたのです。
他人がつくったルール、常識で勝負するのではなく、自分が常識をつくってしまえばいい。
そういう考え方が「ハック思考」です。めちゃくちゃ難しいですね。
では、具体的にどうすればいいのかという話ですが、重要なのはトライアンドエラーらしいです。実際の経験を通して学んだ知恵や感覚、それがハックする為の大元になるとのこと。
つまり、何が言いたいかっていうと、「楽して結果を出せる方法なんて無い」ってことです。
こう書くと当たり前のこと過ぎて、拍子抜けしてきますね。
「ハック思考」なんてカッコイイ言葉使うからどんなものかと思ったら、結局のところ根性論です。でもまあ、その通りなんですよね。
成功を掴みたければ、試行回数を増やせ!
世界的企業の経営者や、輝かしいキャリアを歩んでいるエリート。
彼らの人生は、私のような凡人から見れば羨ましい限りですが、私達が見ているのは今の彼らの“結果”だけです。
そこに至るまでの挫折・苦難を知れば、「あの人はいいなあ」なんて気軽には言えなくなります。
一流の人は、やっぱり一流の努力を積み重ねています。
例)ユニクロ
例えば、ユニクロは今ZARAを超えて世界一のアパレルブランドになろうとしています。でも、これまでのユニクロの経営全てが、順風満帆だったわけではありません。
GUとの差別化のために価格帯を上げる路線でいって、一時期売上が減少しました。また、潜入ライターによってユニクロはブラック企業だと世間から見られることもありました。
ユニクロは安いけど、ダサいなんて言う人も世間にはいます。私も昔、言われたことがあります。
(そんなことを言うような不届き者は、一生ユニクロを着なければいい。)
それでも今、ユニクロが世界的な企業になっているのは、前に進むことを諦めなかったからです。
新しい挑戦をして失敗しても、そこで立ち止まるのではなくて、次の挑戦の糧にした。そういった泥臭い努力の継続。
また、服の素材の細かい繊維、広告の配置一つ一つにも妥協しない姿勢。
それらの積み重ねが、ユニクロを一流企業まで成長させたんです。もちろん、柳井会長のようなカリスマ的経営者の影響も大きいと思います。
『ハック思考』という本で伝えたいことは、常識を疑って最短で結果を出そうとはいうものの、そのためには試行回数を増やす努力が必要ということだと私は解釈しました。
世の中、そんな簡単に結果を出せるウルトラCはないんです。そのことを改めて学ぶことができました。
個人的に気になった点(悪い意味で)
では、本書の悪いところも書きます。
何を言っているの分からないところがあると書きましたが、正確には、ビジネス用語が多い印象を受けました。
これは私の勉強不足なんですが、初見でどういう意味なのか分からない文脈がいくつかあったんです。
例えば、レバレッジ(他人資本を使って自己資本の利益率を高めること、その倍率)とか、パワーシフト(支配力を持つ対象が移行すること)とか、パーセプション(認識・認知)とか、いわゆる“ぶっている”用語がポンポン出てきます。
ビジネス本だし別にいいんですが、個人的には、少し鼻につきました。分かりやすく書けばいいじゃないですか。
私は「議題」のことをわざわざ「アジェンダ」と書く感性が分からないタイプの人間です。
まあ、個人の解釈なので良い悪いで判断できる部分ではないかもしれません。
経営者は会社をコントロールできない。
著者の方がスタートアップ企業の経営をされているので、経営を通して学んだことも書かれていました。その中で私が気になった項目がこれです。
経営者が会社をコントロールできるのは、せいぜい15%程度
もちろん、会社の規模や事業内容によって変わる部分ではあります。
ただ、私の感覚としてはスタートアップの企業は特に、カリスマ的経営者がどんどん会社を引っ張っていくイメージだったんです。
だから、この数字はかなり低いという印象を受けました。
経営者が会社をコントロールできるわけではない、だからこそ、経営者が一人で考えるのではなくて、メンバー全員が10%ずつでも会社のことを考えられる方が強いと著者は述べています。
こういう考え方を私はしていなかったので、面白いと思いました。
この本の内容をとある場で紹介したときに、会社は違いますが、私の知り合いの方もこの意見に共感していました。
某通信販売事業の関連会社に勤めている方なのですが、その会社の前社長が正にカリスマ的存在で、自分が前に出てどんどん引っ張っていくタイプでした。
そして、後を継いだ今の社長は、あまり俺が俺がと前に出るタイプではなかったため、就任当初は「この社長に任せてて会社は大丈夫なのか」という声が社内であったそうです。
で、実際にどうなったかというと、前社長の頃よりも業績が伸びているということでした。
前社長とのやり方は違っても、その会社の理念を実践し、結果を出すことができたんでしょうね。
どういう経営方針をとったのかという話まではしていないですが、自分が前に出ない代わりに、周りの人を使うのが抜群に上手かったのだと思われます。
「個の時代」と良く言われることではありますが、それを実感するエピソードでした。
紹介した本
『ハック思考』 著者:須藤憲司
オススメ度:★★★☆☆
※ビジネス用語を多用することに嫌悪感を覚えなければ、オススメできます。
この『ハック思考』は、今年の初め頃に読んだ『ずるい考え方』と内容が似ている印象を受けました。こちらはprime readingで読めます。
内容も面白く分かりやすいので、オススメです。