引用:『新しいきみへ』 (著)三都慎司 ©集英社
【感想】冴えない教師と女子高生の恋愛漫画だと思ったら・・・ある日、世界は崩壊した。
オススメ漫画
今回は、最近読んで面白かった漫画を紹介します。
ウルトラジャンプで連載されていた、『新しいきみへ』という作品です。
先月くらいに1巻、2巻が100円セールをやっていて、博打で買ってみたところ、
続きが気になって気になって、すぐに全巻ポチってしまいました。
さっそくレビューをはじめていくのですが、この漫画、一言で説明するのが難しいです。
よくある不倫ものかと思ったら、『20世紀少年』かと思ったら、『サマータイムレンダ』が始まるマンガです。
あらすじ
引用:『新しいきみへ』 (著)三都慎司 ©集英社
主人公は高校教師の佐久間悟。
妻との関係に悩み、傷心のまま故郷である小田原へ向かった彼は、そこで一人の少女と出会う。
少女の名前は相生亜希。どこか現実離れした雰囲気を持つ彼女は、悟に強烈な印象を残す。
そして新年度を迎え、悟が教師として学校へ戻ると、そこには「あの日」出会った少女の姿があった。
「相生亜希です。はじめまして、佐久間せんせ」
注意
ネタバレは避けますが、内容を説明する都合上、ストーリーの展開について一部言及します。
全く知らない状態で読みたい方は、ブラウザバックを推奨します。
ジェットコースターのような展開
この漫画を読んで、真っ先に抱く感想は、「予想していたストーリーとは全然違う」ということです。
奥さんの浮気現場(※後に勘違いと判明する)を目撃し、衝動的に逃避行をはじめた主人公、佐久間悟。
旅先で偶然出会った女の子と、誘われるままにホテルへ入る。
帰宅後、何事もなかったように元の日常へ戻ったが、悟が受け持つ新学期のクラスには、
あのときの少女が待っていたー・・・。
ーというのが第一話なのですが、ここから、物語はとんでもないことになっていきます。
引用:『新しいきみへ』 (著)三都慎司 ©集英社
日常から非日常へ
冒頭だけ読むと、教師の不貞行為を描いた作品かと勘違いしそうになります。
いや、それも決して間違いではないのですが、この作品が占める大きな要素は「パンデミック」です。
人々が突然吐血し、やがて死に至る原因不明の奇病が、日本中で拡大していきます。
第一話時点では「新型インフルが全国で多発」とニュースで報道されていた程度のものが、
登場人物たちの日常を破壊していきます。
引用:『新しいきみへ』 (著)三都慎司 ©集英社
この「日常から非日常への移行」が、『新しいきみへ』で特に印象強く描けている部分で、
最初から世界がおかしくなっている訳ではなく、気がついたら取り返しのつかない事態になっていたというのが、
私たちにも起こりうる嫌な現実感があって、恐ろしいと感じたポイントでした。
更に、新型ウイルスの感染が人為的に拡散されていることが判明し、
登場人物たちは否応なしに事件に巻き込まれていくことになります。
自然な形で物語に挿入されていたものが、徐々に意味深な要素に変化する等、
作品のジャンル自体をカムフラージュに使い、物語の全貌を巧妙に隠している点は、
本作の評価点に真っ先に挙げられます。
ヒロインの謎
パニックに陥る世界の状況と並行して、ヒロインである亜希の謎もクローズアップされていきます。
引用:『新しいきみへ』 (著)三都慎司 ©集英社
何故か、「これから起こること」を知っている彼女。
物語を読み進めていくうちに、説明のつかない違和感が積み重なっていきます。
- 何故、主人公の悟に執着するのか。
- 何故、名前や住所を偽り素性を隠すのか。
- 何故、知っているはずのないことを知っているのか。
悟と行動を共にして、遂に感染症を拡大させる謎の男まで辿り着きますが、あと一歩のところで取り逃します。
ここで、これまで隠されていたヒロインの秘密と、
『新しいきみへ』というタイトルの意味が明らかになります。
そして、物語の中盤以降はヒロインの視点に切り替わり、
世界を壊す黒幕の正体と、その動機について迫っていきます。
読み進めていくと、第一話の何気ない場面に伏線があったり、
ヒロインの台詞の意味が明らかになったりして、何度も読み返したくなる漫画です。
黒幕について
謎の宗教団体と何らかの繋がりがあり、ガスマスクを被り、日本中に殺人ウイルスを撒き散らすスーツの男。
『20世紀少年』で見たことがありすぎる存在ですが、後半ではこの黒幕の謎が明らかになっていきます。
引用:『新しいきみへ』 (著)三都慎司 ©集英社
それを説明するとネタバレが過ぎるので、ここでは書きませんが、
読んでいて良かったのは、「動機が納得できるものだった」ということです。
勿論、やっていることは未曾有のテロで、常識的に考えれば1億%の悪行。
許されるはずがない大犯罪ですが、そこに至るまでの過程には、苦しい程の切実さが溢れていました。
犯人の台詞で、こういうものがあります。
「怒ることはできても戦うつもりはない」
「他人を傷つける悪人でもないけど 誰かを守る気概もない」「何が起きても目を閉じたまま何もせず 大多数に埋もれていたい」
「どこにでもいる罪人だ」
この台詞はかなり刺さりましたね。
「見てない振りをすること」は実に楽で、卑怯な行為なのだと、
実際に同じ経験をしてきた自分が責められている気持ちになりました。
統括
今回は、『新しいきみへ』という漫画のレビューでした。
ストーリーの詳細や結末は、是非本編を読んで確かめてください。
引用:『新しいきみへ』 (著)三都慎司 ©集英社
ここまで作品を賞賛してきましたが、一つだけ不満なところを挙げると、未回収の伏線や謎はありました。
そこは「読者のご想像に任せます」ということなのかもしれませんが、
人によっては釈然としないものが残る可能性があります。
あと、4巻で宗教団体の謎を調査するパートがあるのですが、個人的には、冗長に感じるところがありました。
とはいえ、全6巻という短さで完結し、最初から最後まで興味を惹きつけ、
読了後には非常に心地よい満足感のある作品でした。
改めて思ったことですが、漫画において「続きが気になる」という要素は大事ですね。
これこそが、漫画の面白さというものの原点ではないでしょうか。
実際、タイトル回収された40巻以降はほぼ惰性で読んでいて、
先日発売された『宇宙兄弟』の最終巻(46)を、私は未だ買ってないですからね。
不必要に物語を引き延ばされて、とうとう結末にさえ興味を持てなくなってしまいました。
-
-
【マンガ】『宇宙兄弟』には違和感がある? その理由とは。【5選】
続きを見る
終わるべきタイミングで、キッチリと終わらせる。
それが、作品にとっても読者にとっても、一番幸せな形。
『新しいきみへ』は、そのことを再認識させてくれました。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。
紹介した作品
『新しいきみへ』
少年ジャンプ+ (公式サイト)





