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【感想】人に勧めにくいけど、僕はめっちゃ好きです。
ニトロプラス初心者向け作品(?)
今回は、以前からずっとやりたかったPCノベルゲーム、『沙耶の唄』をプレイしたので、
その感想を書きます。
公式PV(YouTube):『沙耶の唄』紹介PV【ニトロアーツVer.】
発売は2004年と、20年も昔のゲームですが、
シナリオを書いたのが『魔法少女まどか☆マギカ』、『Fate/ Zero』等で有名な虚淵玄さんということもあり、
現在でも一定以上の知名度がある、R18ゲームです。
参考:
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【アニメ】魔法少女まどか☆マギカは、詐欺アニメなんかじゃない!
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【紹介】今さら人に聞けない、「Fate」シリーズの解説【入門編】
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まどマギやFate/ Zeroを知っている方は、とっくにご存知かと思いますが、
虚淵さんの手がけた作品の世界観はかなりハード寄りで、
真っ当に生きているはずの登場人物たちが、あまり救われないことが多いです。
全部がそうではありませんが、ダークな作風が得意な作家さん、という印象は間違ってはいないでしょう。
ーで、そんな虚淵さんが書いた『沙耶の唄』というノベルゲーム。
ジャンルはサスペンス・ホラーで、レーティングがR18ということもあり、作品の表現規制が非常に緩いです。
つまり、ゴリッゴリにエグい代物に仕上がっております。
参考動画(YouTube):まどマギ原作者のヤバすぎる神ゲー…沙耶の唄のレビューと紹介【実は純愛】
この作品のレビューを見ると、
「肉が食えなくなる」
「冷蔵庫がトラウマ」
ーといった、中々に強烈なワードが並んでおります。
一応エロゲなので、主人公とヒロインが性行為する場面もいくつか用意されておりますが、
それ目当てで本作をプレイする方はいないでしょうね・・・。
私は基本的にビビリで、人に勧められでもしない限りホラー映画を見ることもないような人間なので、
『沙耶の唄』の存在は知っておりましたが、プレイするのに躊躇う気持ちもありました。
しかし、まどマギは私の中で一番と言ってもいいくらいに夢中になったアニメだし、
『Fate/ Zero』も好きなので、いつかプレイしよう!とは思っていました。
そんな折、開発元であるニトロプラスの関連作品が、期間限定セールになっていたので、
その機会に思い切って購入しました。
今回の記事の流れは、こんな感じです。
記事の構成
- あらすじ
- プレイした結果
- 各ルートの感想
- 統括
では、さっそくはじめていきましょう!
1.あらすじ
爛れてゆく。
何もかもが歪み、爛れてゆく。
交通事故で生死の境をさまよった匂坂 郁紀(さきさか ふみのり)は、
いつしか独り孤独に、悪夢に囚われたまま生きるようになっていた。
彼に親しい者たちが異変に気付き、救いの手を差し伸べようにも、
友人たちの声は決して郁紀に届かない。
そんな郁紀の前に、一人の謎の少女が現れたとき、
彼の狂気は次第に世界を侵蝕しはじめるー・・・。
まず、このゲームは開幕0秒でヤバいです。
プレイ中にグロテスクな画像が出てきますが、解像度を下げますか?
・・・という不穏な警告文が出てきた後、物語がスタートするのですが、
いきなり得体の知れない怪物が、不気味なノイズの混ざった声で喋りかけてきます。
「ネェネェ、今度ノすタfセセf劔。ゥI撥D錐年ハ、ドッカ渙ィt―とモ遊ベヒ坥ソ牴xLナイ?」
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これは交通事故により知覚異常となってしまった主人公:郁紀の視点で、
実際には大学のカフェテリアで、友人たちと談笑しているだけの場面です。
かつての友人たちは今や、不快な雑音と腐臭を撒き散らす肉塊に変わり果て、
周囲の環境の全てが、血塗れの臓物に溢れたものに視えてしまうという、
地獄としか言いようがない世界。
主人公にとって唯一の救いといえるのが、本作のヒロインである沙耶という少女。
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狂った世界の中で、沙耶の存在だけは可憐な少女の姿に認識できて、
彼女を通してのみ、正常な人間の声と体温を感じられることができます。
身寄りのいない沙耶は郁紀とともに暮らすことになり、郁紀もまた、
絶望の中で沙耶に希望を見出し、愛し合っていきます。
しかし、知覚異常になった彼の視点で可憐な少女に見えるということは、正常な人間から見た沙耶はー・・・?
・・・ーという話です。
このあらすじだけで充分に察せられるかと思われますが、
沙耶との運命の出会いによって、主人公がどんどん壊れていく物語です。
『Fate/ Zero』をご存知の方ならよく覚えているであろう、
サイコパス殺人鬼の雨生 龍之介とキャスター:ジル・ド・レェのコンビ。
この最悪の2人が主人公になった物語と評価する方もいました。
ノベルゲームとしてのボリュームはかなり短く、全ルートをプレイしても10時間も掛かりません。
登場するメインキャラクターも4人程度なので、超コンパクトにまとまっています。
開発元であるニトロプラス作品への入門編としては、ちょうどいいですね!!
ーでは、さっそく完走した感想を話していきます。
2.プレイした結果
実際にゲームをプレイした結果を伝えると、これは嘘偽りなくハッキリと言えますが、
個人的にはめちゃくちゃ好きでした。
世界観もシナリオも、各ルートの結末も最高といっていいくらい。
ただ、やはりエグい物語であることは間違いないので、人に勧めるのは難しいな〜というのが正直なところ。
それでも、目を背けたくなる程のグロ画像とかはなかったし、
吐き気を覚える程の不快な場面はありませんでした。
何なら、『Fate/ Zero』の方が精神的にキツいと感じるところがあったくらいです。
有名なSF漫画、『寄生獣』を読んで問題なければ、本作をプレイしても差し支えないでしょう。
私個人の感覚ですが、グロさのレベルでいえば同じくらいです。たぶん。
サスペンスホラー要素もありますが、その犯人・・・もう、隠す必要もないですね。
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作中で郁紀と沙耶がどういう意思で、どうしてそんな行動をとったのかは地の文で書かれているので、
彼らに対して強い恐怖は感じませんでした。
ホラー作品にありがちな、プレイヤーを驚かせる心臓に悪い場面も、ほとんどなかったです。
むしろ、それ以上に彼等の境遇がプレイヤーから見ても同情できるので、
「こうなっても仕方がないのでは?」
ーと、個人的には思ってしまうくらいでした。
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勿論、主人公とヒロインが作中でやった行動は、真っ当な人間からすれば明らかに間違ってる。
でも、彼らの世界ではそれが正常で、生きる為に仕方がないことなんですよね。
そして、行動の結果がどんな結末を迎えても、倫理的にはどれだけ道を踏み外していようとも、
郁紀と沙耶がお互いを一番大事に想い合っていることだけは変わらない。
- 正常な人間の視点との対比構造。
- 圧倒的な狂気の中にある美しさ。
- 世界観に合う文体と音楽。
シナリオの量は確かに短いですが、内容は超濃密で、プレイし終えたときの満足感は凄かったです。
特に、サントラが欲しくなるほどBGMが良かったのですが、値段がかなり高騰していて買えません・・・。
参照リンク:『沙耶の唄』オリジナルサウンドトラック
あと、主人公たちが医学部の学生という設定もあってか、難解な言葉や表現が結構出てきます。
単語の意味を都度ググりながら、プレイしていたほどです。
一例を挙げると、
臍(ほぞ):腹のまんなかにある小さなくぼみ。要するにへそ!
馥郁(ふくいく):よい香りがただようさま。日常生活で使うことはない。
こういった難読漢字が頻発するところも、この『沙耶の唄』の異物感を体現しているようで、
作品の雰囲気に合っていてよかったです。
さて、ここからは各ルートの感想を、ネタバレにならない程度に簡潔に書いていきます。
ーが、そもそも短いシナリオであることと、内容に触れる以上、
ある程度のネタバレは含みますので、ご了承ください。
3.各ルートの感想
沙耶の唄には、以下の3つのED(エンディング)が用意されています。
- 病院エンド
- 開花エンド
- 耕司エンド
マルチエンディングのある作品ではありますが、
シナリオの途中で主人公が元の正常な世界に戻りたいと願えば病院エンドへ。
知覚異常を抱えても、このまま沙耶とともに過ごしたいと願えばシナリオが続き、
開花エンド・耕司エンドのどちらかを迎えるという構造になっています。
従って、『沙耶の唄』にルート分岐はほぼ存在しないといってよいでしょう。
このゲームで主人公が愛するのは沙耶だけです。
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ーでは、各エンディングの感想を書きます。
病院ED
このゲームで真っ先に到達することのできるエンディングです。
人的被害が最も少ないという意味では、平和的な結末かもしれません。
このエンドで示唆されるのは、郁紀が沙耶の正体が人間ではないことを知っていて、
それでも彼女のことを愛していたこと。やはり『沙耶の唄』は純愛。
まぁ、このエンドに辿り着いた時点で、登場人物の4人くらい惨殺されますが。
開花ED
3つのEDの中で、一番トゥルーエンド・・・っぽいと思いました。個人的には一番好きな結末です。
作中世界の人たちから見れば、地獄以外の何もんでもありませんが。
作品のキャッチコピーである、“世界を侵す愛”という意味が明らかになります。
ラストシーンが本当に美しく、悍ましい。
あまり書くとネタバレになりすぎるので、感想はここまでにしておきます。
耕司ED
シナリオの流れは概ね開花エンドと同じで、結末だけが異なるという内容。
耕司というのは主人公の一番の親友だった男で、めちゃくちゃ良い奴です。
人間性を完全に捨て去るほど変貌した主人公に、最も深く関わることになります。
耕司エンドと名を冠していますが、耕司にとっては本当にこれでよかったのか・・・
答えを出せない終わり方でした。
虚淵さんは、こういう物語をつくるのが本当に上手いですね。
あと、途中で銃に関する少しコアな知識が出てきますが、虚淵さんの趣味でしょうね。
4.統括
ここまで、感想を書いてはみましたが、ネタバレに配慮すると物語が短いこともあり、
具体的な内容についてはほとんど書けませんでした。
とはいえ、これくらいあっさり終わるゲームもたまにはいいですね。
Fateとか超面白いですけど、シナリオ量が膨大すぎて、完走するのが大変ですから。
ストーリーを追っていくうちに、沙耶の正体、彼女が本当はどういう存在なのかは説明されますが、
最後まで沙耶のビジュアルはハッキリとは描かれず、プレイヤーの想像に委ねられるところも面白いです。
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しかし、シナリオが短いが故の弊害もあり、ストーリー中に発生する出来事があまりに急すぎて、
心がついていけない部分もありました。
一例を挙げると、ある日、主人公と同じ知覚異常にされてしまった男性が登場します。
平穏な日常が突然、醜悪な絶望の世界に変貌したことで、彼は発狂。
帰ってきた妻と娘を錯乱状態のまま惨殺。現れた少女(沙耶)にいきなり性的暴行。
その場面を目撃してしまった主人公に、肉切り包丁で滅多斬りされるという、地獄絵図が展開されるのですが・・・。
絶対に笑う場面ではないのですが、この一連の流れにスピード感がありすぎて、思わず笑ってしまいました。
家族殺害から沙耶を襲うまでが、いくら何でも早すぎるだろ!
そして、もっと尺があれば、感動できる場面もより登場人物に感情移入ができたと思います。
・・・が、それはもう、一長一短ですね。
統括すると、プレイして本当によかったと思えた作品でした。
いや、サントラがマジで欲しいです。
紹介した作品:
PCゲーム(R18):沙耶の唄 Nitro The Best! Vol.2 Windows 10対応版