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【感想】徹夜不可避のノベルゲーム。
G線上の魔王
今回は、美少女ゲームアワード2008大賞作、『G線上の魔王』を紹介させていただきます。
ノベルゲーム(ADV)界隈では超有名作品で、名前くらいは聞いたことのある方も多いでしょう。
作品のジャンルとしては、ミステリー・サスペンスになります。
“魔王”を名乗る天才犯罪者との、命を懸けた戦い。
2020年にアニメ放送された『無能なナナ』の原作者である、
「るーすぼーい」さんが企画・シナリオを書いたことでも有名な作品です。
感想
さっそく、完走した感想になりますが・・・。
結論、これを薦めて「面白くなかった」とか言われたら、もうお手上げです。
つまり、メチャクチャ面白い作品です。
これがダメだったら、ノベルゲーム自体が合わない人だと思われるので、
ADVするのやめましょう。
本当に面白いシナリオをプレイした後って、「面白かったー!」って興奮するとかじゃなくて、
魂が抜けたような放心状態になってしまうんですよね。
いや、本当に面白かった・・・。
こんな作品に出会ってしまったら、これからどうすればいいのか、真剣に考えてしまいます。
ちなみに、本作は18禁版のPCソフトでしか発売されておりません。つまりエ●ゲです。
抵抗感がある人はプレイしにくいかもしれませんが、
「面白そうなゲームがたまたま18禁だっただけ」の精神で、是非やってみてください。
今回は、以下のような流れで本作を紹介しようと思います。
記事の構成
- あらすじ
- 作品の魅力
- シナリオの感想
- 気になった部分
- 統括
では、さっそくはじめていきましょう!
1.あらすじ
主人公:浅井京介(あざい きょうすけ)は一介の学園生。
友人たちや妹とバカをやりながら昼を「学生」らしく平穏に過ごす彼は、
夜は義父の片腕として辣腕を振るう「ビジネスマン」の顔もあった。
そんなある日、学園に時期外れの転校生、宇佐美ハルがやって来る。
奇妙な言動で京介たちとつるみつつ、時折鋭い知性を覗かせるハル。
ハルは彼の裏の顔を見透かすように次の問いを発した。
「“魔王”、知らないか?」
街の闇に浮かび上がり、義父の「ビジネス」を妨害し始めた“魔王”らしき存在。
義父の命令を受けて“魔王”の炙り出しを始めた京介はハルと共に、
影に蠢く“魔王”を追うこととなったー・・・。
(Wikipediaより一部引用。)
人口1000万人を超える巨大都市。
その地に姿を現した謎の人物:“魔王“と、“魔王“を追って転校した少女:ハル。
何かの決意と、膨大な憎しみを漲らせた二人の闘いに、
主人公と3人の少女がその渦中に巻き込まれていく・・・。
ーというあらすじから分かる通り、この作品のメインヒロインは、
ぼさぼさの超ロングヘアーが特徴の「宇佐美ハル」になります。
物語は1〜5章まであり、選択肢によって各ヒロインのシナリオに分岐するのですが、
共通部分はずーっと「ハルルート」のお話になっております。
ハルの他に登場する3人のヒロイン。
彼女たちのシナリオも面白く、それぞれに違った魅力がありますが・・・。
やはり、このゲームの真髄は最後の第五章。
ハルと“魔王”との本当の闘いが始まるラストシナリオから、
やっと本編が始まると言っても過言ではありません。
2.作品の魅力
『G線上の魔王』の魅力。
完成度の高いサスペンスものであり、人によっては「一番泣いた」と言われるほど、
“泣きゲー”としての評価も強い作品です。
私がこの作品の魅力を「一言で表現しろ」と言われたら、
「面白すぎてプレイする手が止まらない」というのが最大のポイントだと思っています。
マジで、面白い。シナリオが面白すぎて神。
続きが気になりすぎて、プレイ中は私生活に支障が出るほどでした。
本作のシナリオの魅力を、大きく3つの要素に分解して紹介します。
魅力①.設定
まず、設定が非常に面白いです。
主人公はヤクザの組長の義理の息子で、学園生でありながらフロント企業のオフィサーを務める日々。
そんな生活を脅かすように暗躍する、“魔王”を名乗る謎の犯罪者。
そして、“魔王”に強い憎しみを抱くメインヒロイン。
いわゆる「普通の人」がほとんど登場しません。
登場人物のほぼ全員が強烈な個性を持ち、展開も二転三転していくので、
読んでいて全く飽きがこなかったです。
魅力②.シナリオ
先述した通り、この作品はとにかくシナリオが面白すぎます。
特に評価されているのが、“魔王”との駆け引き・心理戦。
物語の全編において、主人公サイドと“魔王“との手に汗握るような攻防が描かれ、
緊迫したサスペンスが繰り広げられます。
少し読むのに疲れてきたな・・・というタイミングで、プレイヤーが思わず
「えっ!?」
と声に出してしまうような、意表を突く展開が随所に仕掛けられており、
シナリオが進めば進むほどゲームのやめ時を見失ってしまいます。
息が詰まるような重苦しい場面もある一方で、シュールなギャグシーンも数多く、
キャラクターたちの会話劇は純粋に楽しかったです。
名セリフ・迷セリフの両方が多い、非常に私好みの作品でした。
メインヒロインであるハルも、“魔王”と戦っているときはメチャクチャ真剣なのですが、
日常の学園生活ではかなり緩く、「不思議ちゃん」な属性を持っています。
(↑フーンみたいな表情が好きです。)
緩急がとても上手で、ほとんどダレずに最後までプレイすることが出来ました。
ノベルゲームという媒体でここまで引き込まれるのは、本当に凄い。
魅力③.キャラクター
「名作」には欠かせない、登場人物の魅力。
主人公やヒロインはもちろん、本作は特に“敵”の持つインパクトが見事でした。
何といっても、この作品を象徴する“魔王”の存在。
ル●ーシュのような悪魔的な頭脳と圧倒的なカリスマ性を持ち、
最終局面である第五章では「史上最悪の大犯罪」を実行します。
ヒロインであるハルが天才で、もの凄い機転と行動力を発揮して“魔王”を追いかけますが、
全然、手も足も出ない。本当に“魔王”が強すぎます。
「これならイケる」とプレイヤーが確信した作戦をも、“魔王”の策略は悉く上回ってくるので、
どうやったらコイツに勝てるんだ・・・という気持ちになります。
「天才同士の頭脳戦」といえば、『デスノート』を思い浮かべる方も多いと思いますが、
作品の魅力はそれに近いかもしれません。
冷静に分析していくと、キャラの行動や計画には穴があるのかもしれませんが、
プレイ中は全く気になりませんでした。
キャラを“天才”のように描くのが上手い、と言ってもいいかもしれません。
また、“魔王”よりも主人公の身近にいて、ある意味では“魔王”よりも厄介な存在である、
主人公の義父:浅井権三(あざい ごんぞう)。
街を守るいいヤクザとかではなく、最初から最後まで悪人ではありますが、
「悪」としての美学とか信念も持っている人物で、
最終的にはめちゃくちゃ好きなキャラクターになりました。
“魔王”の噛ませになるだけの脳筋ゴリラかと思いきや、全然そんなことはなく、
あの“魔王”さえも怯ませる気迫は凄まじかったです。
3.シナリオの感想
では、ここからは本作のシナリオの感想を書いていきます。
致命的ネタバレは避けますが、内容を紹介する都合上、ある程度のネタバレを含みますので、
全く知らないゼロの状態で作品をプレイしたい方は、ブラウザバックを推奨します。
第一章
ー戦いのときは近い。
お父さん、お父さん、“魔王”がそこにいるよー。
物語のプロローグ。
主人公:京介の日常。彼の周囲にいる友達との学園生活。
そこに、「宇佐美ハル」が転校してきたことで、彼らの運命は大きく変わっていきます。
ここのターニングポイントとなるのは、ハルと“魔王”との知略を交えた鬼ごっこ。
ヴァイオリンのG線上で繋がった宿敵同士が対峙し、宣戦布告する場面からオープニングが始まります。
序盤からクッソ面白いです。
そして、ここから尻上りで物語が盛り上がっていくので、もうたまりませんね。
そら名作と呼ばれるわ。
第二章:遊興の誘拐
仕事で京介が受けた依頼は、
友人である椿姫の家を立ち退かせること。
その矢先、思いも寄らぬ誘拐事件が起こる。
魔王の“お遊び”の始まりだった。
この章では、ヒロインの一人である美輪椿姫(みわ つばき)の弟が、
“魔王”の手によって誘拐されるという事件が発生します。
主人公の家族関係や、現在までの経緯が断片的に描かれ、
それと立ち替わるように、物語を暗躍し始める“魔王”。
自身の目的とは無関係の椿姫を、ただの「余興」で巻き込み、
身代金を強奪して、椿姫の家族全員を追い詰めた魔手。
友人となった彼女を悲しませた“魔王”に対し、ハルは怨嗟の眼を京介に向ける。
「赦されないと思いませんか、浅井さんー?」
「赦されないな」と頷く主人公の胸の内は、ハルに掛けた言葉とは裏腹に、冷めていた・・・。
椿姫の章: ー鏡ー
第二章の選択肢次第では、このシナリオに突入します。
各ヒロインの個別ルートに入ってしまうと、“魔王”の正体は判明しないまま物語が終わります。
攻略順としては、第五章より先に個別ルートをプレイすることが推奨されています。
お楽しみは最後までとっておこう♪
・・・ただ、私がやっていたときは続きが気になりすぎて、さっさと物語を進めたかったですね。
完走した今は、最終章をやる前に全てのエンドを見ていて良かったと思います。
椿姫ルートの感想としては、普通に面白かったです。
終わり方としては、一番幸せなエンドといってもいいのではないでしょうか。
“魔王”との決着をつけるシナリオでは絶対にあり得ない展開なので、
「この子を選んでいたら、あんなことにはならなかったのにな・・・」と、
切ない気持ちになります。
第三章:悪魔の殺人
「浅井花音の関係者を殺す。」
ある日、権三の屋敷に届いた殺害予告。
阻止せんと動き出すハルと京介だったが、
殺人者は容易には見つからない。
この章では、フィギュアスケートの大会を目前に控えた主人公の異母兄妹、
浅井花音(あざい かのん)が事件に絡んできます。
“魔王”の目的は、花音を日本代表から落選させること。
その為に花音の父である権三へ脅迫状を送り、手駒である殺人鬼を解き放った。
“魔王”の撹乱工作を掻い潜り、その手先を追い詰めるハル。
そして明かされる殺人計画と、“魔王”の本当の目的。
全てが終わった後、ハルの元へ“魔王”から電話が掛かってくる。
ハルは、尽きることのない憎しみを漲らせつつ、闇の中を歩いていくー。
花音の章: ー我が母の教えたまいし歌ー
第三章の選択肢次第では、このシナリオに突入します。
個別ルートの中では、突き抜けて面白かったと思います。
サブタイトルの出てくるタイミングが完璧すぎて、鳥肌不可避でした。
花音はまぁ、言い方悪いですが「頭の悪い女の子」という感じで、
最初の方はホンワカパッパしてるだけのヒロインでしたが・・・。
フィギュアスケートで演技をしている彼女の姿は凛として美しく、そのギャップに驚かされました。
『クレヨン●んちゃん』の野原ひ●わりにそっくりな幼い声というか本人なのに、
主人公と愛し合う場面ではしっかり“女”を感じさせる演技になっていて、
声優さんって本当に凄いなって思います。
第四章:交渉の死角
束の間の平穏な日々の中。
突如、起こった学園立て篭もり事件。
クラスメイトである水羽を救う為、犯人との交渉に臨む。
その裏には、暗い真実が隠されていた。
年が明け、ハルの親友を名乗る人物が学園に転校してきた。
それをきっかけに、主人公を気に掛ける学園理事長の娘:白鳥水羽(しらとり みずは)とも、
少しづつ交流を深めていくこととなる。
そんな日々の中、学園内に現れた暴漢に水羽を人質にとられ、
立て篭もり事件が発生してしまう。
その背後にいたのは、やはり“魔王”の存在だった。
ハルの親友:時田ユキとともに、犯人との緊迫した交渉が始まる。
そして、事態は思いもよらない方向へ、動き出していく・・・。
水羽の章: ー姉妹の言葉ー
第四章の選択肢次第では、このシナリオに突入します。
うーん・・・プレイヤーからの評価は残念ながら、一番低い章です。
水羽ルートのプロットには難儀し、タイムオーバーで尺が足りなかったということが、
シナリオライターへのインタビューで明かされていました。
別に全然面白くないということはなく、一番ギャルゲーやってる感じがあったので、
好きな方も一定数いると思います。
ただ、水羽の話に関しては、第三章から登場する「時田ユキ」の存在が大きく、
プレイヤーの興味がそっちに持って行かれますね。
シナリオ的には不遇ですが、ツインテールの白髪ヒロインは希少なので、私は応援したいです。
第五章
ついに“魔王”は動き出した。
悪魔の契約に支配された、“坊や”たちに蹂躙され、
地獄へと変貌してしまった街。
ハルは再び“魔王”と対峙する。
ーそれは、とある父親の告白。
ただ、家族を愛していただけだった男の人生は、ある男との出会いによって大きく歪められていく。
そして現在。かつて父の美しい思い出だった『G線上のアリア』の調べは、
激しい憎悪を蘇らせる復讐の旋律となって、ひとりの子へ受け継がれていた・・・。
遂に、物語の表舞台に降臨した“魔王”。
隠されていたベールを脱ぎ、前例のない規模の地獄絵図をつくり出した。
愛するヒトへの思いを胸に、何よりも大切なものを奪った男を殺す為に、
少女は“魔王”へ戦いを挑むー。
本作の最終局面であり、ここまで隠されていた“魔王”の正体が、
とうとう明らかになります。
結論だけ書きます。面白すぎてヤバいです。
シナリオも演出もBGMも全てが最高で、プレイヤーのボルテージが最高潮に達します。
これを仮にサウナの中で出来るとしたら、止められなくて死にます。
それくらい、面白いです。
物語の冒頭で示されていた、「この街を襲う史上稀に見る大犯罪」の内容が、
ここまで凄惨なものだったとは、思っていませんでした。
“魔王”にとって、ここまでの犯罪は本当に「お遊び」に過ぎなかったというのが分かります。
この手の作品で、“魔王”の正体が判明する場面がピークじゃないというのが、恐ろしいですね。
そこも凄く盛り上がるのですが、“魔王”との決着とかヒロインの救出劇とか、
最終盤にふさわしい展開の連続で、めちゃくちゃ興奮しました。
あまり書くとネタバレになるので詳細は省きますが、この章では主人公のカッコ良さが半端じゃないです。
有能だけどどこか冷徹だった彼のキャラ設定は、全てこのラストシーンの為にあった。
そう断言できるほど、非常に良く出来たシナリオでした。
挿入歌である「Close Your Eyes」が流れ始める場面で、思わず涙したプレイヤーは多いことでしょう。
4.気になった部分
「名作」という呼び声の高い本作ですが、個人的に気になった部分にも触れておきます。
“魔王”の正体について
本作の最大の仕掛けといってもいい、「“魔王”は誰?」という謎。
第五章でその正体が明らかになり、驚愕したプレイヤーも多いでしょう。
しかし、このトリックを成立させるために強引な展開や伏線も多く、
後から振り返ると「ここは何だったんだ…?」と、首を傾げる部分もありました。
これに関しては、シナリオライターの方も「辻褄が合わない部分はある」と発言されており、
『G線上の魔王』は全く矛盾がないミステリーとは言えません。
でも面白ければOKです。というスタンスで楽しむのが正解だと思います。
サブキャラの立ち絵がない。
本作にはメインキャラクターの他に、サブキャラクターも複数人登場します。
しかし、そこそこのセリフ量があるキャラクターでも立ち絵が無かったのは、少し残念でした。
権三の部下である堀部やクラスメイトの橋本、人間のクズである学園理事長あたりは、
シナリオにも絡んでくる部分があったので、出来ればビジュアルをつくって欲しかったです。
統括
少し長くなってしまいましたが、『G線上の魔王』を完走した感想を書きました。
総括すると、今年プレイしたノベルゲームの中ではNo.1です。
本当に、面白すぎて手が止まりませんでした。
今後も、面白い作品をプレイした後は紹介していこうと思います。
それでは、次回の記事でお会いしましょう!
参考
あかべぇそふとつぅ Official Web Site(年齢確認あり)