【書評】初見時は面白すぎて、時が止まったマンガ。
カイジを語るっ・・・!!
今回は、超有名なギャンブル漫画、「カイジ」を紹介します。
皆さんは、「カイジ」を読んだことがありますか?
「ざわ・・・ざわ・・・」
「キンキンに冷えてやがるっ・・・!」
「金は命より重い・・・!」
作中での有名な台詞、登場人物たちのアゴ・鼻の鋭さ等はご存じの方も多いと思いますが、
実際に漫画を読んだ方って、若い読者では意外と少ないのではないでしょうか?
96年に連載が開始したシリーズ作品なので、無理もないかもしれません。
むしろ、作中に登場する敵キャラクターを主人公としたスピンオフ作品、
「トネガワ」や「ハンチョウ」は読んだことがあるけど、「カイジ」は読んだことがない。
そういう人も、いるかもしれません。
それが悪いことだとは、全く思っていません。
私自身、「トネガワ」も「ハンチョウ」も大好きなマンガです。
でも、それらのスピンオフ作品を読んでいて、本編の「カイジ」を知らないというのは、
・・・正直、もったいないなぁと思ってしまいます。
何でかというと、シンプルに「カイジ」が面白すぎるからです。
初めて読んだときは、GEOのレンタルブックのコーナーでパラ読みしてたときだったのですが、
あまりに面白すぎて、その場から動けなくなりました。
(当然、店員さんに怒られて、すぐに全冊借りました。)
ココがポイント
常に圧倒的絶望の状況の中で、主人公が一筋の活路を見出す。
ギャンブル・賭け事に興味がない人でも絶対に面白い。
作品の魅力っ・・・!!
世界累計発行部数1億部を突破した、文字通りモンスター級の作品である『進撃の巨人』。
その作者である諫山創先生が、こんなことをおっしゃっています。
「漫画でも映画でも、物語を面白くする方法は同じです。それは登場人物を追い詰めることです。」
私も、その通りだと思います。人は何だかんだ、キャラクターが追い詰められていく様を見てみたい。
「笑いは緊張と緩和で決まる」に通ずるところがあると思います。
例を挙げると、古くは「バトルロワイアル」とか、少し前だとNetflixの「イカゲーム」とか。
“デスゲーム系”のエンタメ作品は定期的に流行しています。「イカゲーム」は世界的な規模でヒットしました。
これらの作品には暴力的・嗜虐的な描写が少なからずあって、それも一種のエンタメなんですよね。
流行るというのは、つまり需要があるってことです。
そして、その法則に基づくのであれば、私が見てきた全てのマンガ作品の中で、
「カイジ」ほど主人公側が追い詰められる作品はありません。
ストーリーは後で説明しますが、作中でカイジが挑戦するギャンブルは、基本的にムリゲーです。
普通にやっていれば、主人公側が負けるようにゲームが設計されています。
パチンコ屋が潰れないのと同じ理由です。
そんな状況で、カイジが勝つために実行する奇策。
これが本当に狂っていて、完全に常識の外にある発想なんですね。
「そこまでするの!?」と読者が思わず唸ってしまう展開。
でも、そこには確かな論理性があって、意外ではありますが決して強引な展開ではありません。
そこまでの、首の皮一枚で何とか持ち堪えているような絶望的状況から、“神がかり”と云ってもいい主人公の逆転の一手。
濃密なストーリー性と相まって、読者に極上のカタルシスを与えてくれます。
記事の内容っ・・・!!
「カイジ」はシリーズものの作品で、ストーリーは現在でも続いています。
本記事では、初期のシリーズである『賭博黙示録カイジ』について紹介させていただきます。
理由としては、この『賭博黙示録カイジ』こそが作品の頂点だからです。
物語の密度・完成度が、明らかに抜きん出ています。
あと、作中で登場するギャンブルが全てオリジナルのゲームなので、前提知識が全く不要というのも勧めやすいですね。
そして、ゲームのルールが全然複雑ではないのが有り難い。
非常にシンプルなギャンブルを題材にしております。
『賭博黙示録』の後、『賭博破戒録』、『賭博堕天録』、・・・と物語は続いていくのですが、
私は『賭博破戒録』までしか読んでいないですし、それでいいと思っています。
ちなみに、有名な「カイジがビールを飲む場面」は、『賭博破戒録』に収録されている内容なので、今回は紹介しません。
(私も好きですけどね、あの場面。)
ココに注意
致命的なネタバレは避けますが、
全くの初見の状態で作品を楽しみたい方はブラウザバックを推奨します。
では、『賭博黙示録カイジ』の紹介をここから始めていきますが、一言で説明すると、「ジャンケン漫画」です。
ストーリー・・・!!
『賭博黙示録カイジ』は単行本で全13巻、第1章:「希望の船」、第2章:「絶望の城」の2章仕立てのストーリーです。
前提となるストーリーは既知の読者も多いと思うので、WIKIから簡単に引用したものを下に記載します。
圧倒的あらすじっ・・・!!
第1章:「希望の船」
上京後、定職にも就かず自堕落な日々を過ごしていた伊藤開司(カイジ)は、
金融業者の遠藤により、かつて自分が保証人になっていた借金を押し付けられ、法外な利息により385万円にまで膨らんでいることを知らされる。
遠藤に誘われるままカイジは、借金が帳消しになるチャンスを与えるというギャンブル船「エスポワール」に乗り込む。
大手金融業者の「帝愛グループ」が裏で取り仕切るそのギャンブルは、
うまく勝てば帝愛からの借金は帳消しとなるが、負ければ命の保障は無いというものだった。
第2章:「絶望の城」
エスポワールから辛くも生還したカイジだったが、それまでの借金は帳消しとなるものの、船内で新たに600万円以上もの借金を作ることとなった。
カイジの前に、再び遠藤が現れ、新たなギャンブルを持ちかける。
今度こそ勝つと決意したカイジは会場である「スターサイドホテル」へと向かい、決死の勝負に挑む。
2度の鉄骨渡りをカイジは唯一成し遂げるが、賞金を得る権利を剥奪される。
激昂するカイジの前に主催者である帝愛グループの会長・兵藤が現れ、「もう一度チャンスをやろう」と、
これまでのギャンブルを仕切っていた大幹部・利根川と対決することになる。
作中で登場するギャンブルは、以下の通り。
- 「限定ジャンケン」(第1章に収録)
- 「鉄骨渡り」(第2章に収録)
- 「Eカード」(第2章に収録)
- 「ティッシュ箱くじ引き」(第2章に収録)
この内、「鉄骨渡り」と「ティッシュ箱くじ引き」に関しては、本記事では触りだけの紹介とさせていただきます。
(この話も充分に面白いです。)
『賭博黙示録カイジ』の中核を成すギャンブル、「限定ジャンケン」と「Eカード」。
これがどういったものか、描かれるストーリーの魅力と合わせて、私なりに解説します。
最初の「限定ジャンケン」については、特に力を入れて説明します。
限定ジャンケン
シリーズでカイジが初めて挑むギャンブルであり、間違いなくシリーズ最高傑作です。
大型客船「エスポワール」内に集まった参加者に対して、「限定ジャンケン」で用意する道具が最初に配られます。
- 星3つ(ジャンケンに勝てば相手から1つ奪える。あいこの場合、星の移動はない。)
- グー、チョキ、パーの3種4枚ずつ、計12枚のカード
- 100〜1000万の貸付金(金額は各参加者が任意で決められるが、貸し付けそのものは必ず受けなければならない。)
※一度ジャンケンに使用したカードは二度と使用不可。星が0になった時点でゲームから退場。
要するに、このカードを使ってジャンケンをし、参加者同士で星を奪い合うというギャンブルになります。
◎勝利条件:
星3つ以上を確保した状態で、制限時間(4時間)以内に与えられたカードを全て使い切ること。
※カードの破棄はルール違反となり、その場で失格。
・・・え、それだけ? と、思われたでしょうか。
この「それだけ」のことで、「ジャンケン」という単純な“遊び”が、極めて高度な心理戦に生まれ変わるのです。
「使用できる手が限られている」というゲームの性質を利用して、カイジは運否天賦ではなく、ロジックを使って勝負に出ます。
これが本当にアツく、手に汗を握ります。
特に私がハッとさせられたのが、「バランス理論」を利用して勝ちを拾いに行く場面と、相手が口にした「最終戦」というワードからその1枚を的中させる場面。
ここは実際にマンガを読んで、確かめてみて欲しいです。
バランス理論
正しいとなると人は とたんに疑わなくなる。
まして
その理で勝ってきたとなればなおさらだ・・・
余分な1枚
一試合闘えば全てのカードを偶数に揃えられる
つまり
残りカードを全て引き分けで消耗できる。
常に絶体絶命っ・・・!!
「限定ジャンケン」は単行本1〜5巻に収録されているギャンブルですが、物語の密度が凄まじいです。
読み直す度に疲弊し、「これで本当に5巻!?」と毎回疑ってしまうほどです。
ゲームが始まってからは急展開の連続で、息つく暇が全くありません。
主人公たちは常に絶体絶命の状況で、展開が分かっていてもハラハラさせられます。
「限定ジャンケン」の展開を簡単に説明すると、
カイジは“初戦”で対戦相手に騙され、いきなり「星1つ、カード1枚」という状況に陥ります。
勝てるわけねえだろうが!
・・・と言いたくなりますが、この騙してきた相手も相当な“やり手”だったので、仕方ないといえば仕方ないんですよね。
私がカイジと同じ立場だったとしても、多分騙されていると思います。
そこから、自分と同じ状況にいた参加者を見つけ、3人協力体制で生き残ろうとしますが、
手持ちのコマは「星3つ、カード4枚」、そしてそのカードは全て「チョキ」という状況。
勝てるわけねえだろうが!
ここで、第1巻が終了です。
そして、この後も常にこれ以上の窮地が続きます。
「どう考えたって、もう無理だろ・・・」という状況に何度も何度も陥って、それでもカイジは奇跡的に生き残ります。
それはまあ、漫画的な都合もあるのですが、理由を挙げるなら
- 勝負を諦めなかったこと。
- 「気づき」を得たこと。
ということですね。
前者は言わずもがな、後者に関しては抽象的な表現になりますが、
この「限定ジャンケン」には、参加者に直接提示されていない、「隠しルール」のようなものが多々あるんですね。
ゲーム性を根幹から覆してしまうような、理不尽なもの・・・という訳ではなく、「ある法則」のようなものです。
現実的に例えるなら、株式の高騰・暴落に近いと思います。
先に紹介した「バランス理論」も、その一種。こういった要素が、意外な突破口に繋がったりします。
こういう「気づき」を得たかそうでないかで、その後の運命が大きく変わるというのは、
漫画の中だけの話ではなく、私たちの現実に対しても云えることかもしれません。
愉快な仲間たちっ・・・!!
「カイジ」シリーズの魅力は、高度な心理描写や、手に汗握る駆け引きだけではありません。
追い詰められた人間たちの見せる、人間の本性なども生々しく描かれます。
簡単にいえば、どうしようもないクズが登場します。
むしろ、「限定ジャンケン」に参加するキャラクターは、そんな連中が大半です。
まともじゃないからこそ、ギャンブル船なんかに乗っている訳ですからね。
自分のことしか頭に無いクズ。でも、そういった奴らが物語を盛り上げてくれるのは確かです。
「限定ジャンケン」はシリーズの最序盤ですが、シリーズ屈指のクソ野郎が登場しました。
・・・カイジの、仲間として。
上の画像に載せた、太り気味でメガネを掛けた「安藤」というキャラクターは、本当に最低なカスです。
「救いようのないクズ」
「クズ中のクズ」
「キング オブ クズ」
という散々な評価を受けていますが、読めば納得します。いいところがマジで見つかりません。
「安藤がクズの理由」というタイトルのネット記事が、何件もヒットする程です。
参照リンクはこちら!
【カイジのネタバレ】安藤がクズすぎる!安藤がクズと言われる理由
まどマギのキュゥべえが天使に思えるくらい、安藤のクズさは清々しいまでに突き抜けています。
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【アニメ】魔法少女まどか☆マギカは、詐欺アニメなんかじゃない!
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今後、コイツを下回るような奴はいないだろうと、思っていたのですが・・・
私が今プレイしている「WHITE ALBUM2」というゲームの主人公は、不快度でいえば安藤を越えるかもしれません。
完全クリア後に記事をUPしようと思うので、お楽しみに。
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Eカード
さて、限定ジャンケンの説明が長くなりすぎたので、ここはさっくりと解説します。
コミックス9〜12巻に渡り行われた、カイジ VS 利根川の死闘。
そのギャンブルで選ばれたのが、「Eカード」というゲームでした。
これも基本的なルールは「ジャンケン」と同じ、三すくみの関係にあるカードを出し合うゲーム。
ですが、パワーバランスが特殊なものになっています。
「片方が極端に有利なジャンケン」とイメージしてもらえると、分かり易いです。
◎ルール:
「皇帝」は「市民」より強く、「市民」は「奴隷」より強い。
「奴隷」は唯一「皇帝」だけを殺せる。
皇帝側/奴隷側に交互に分かれ、カードを出し合う訳ですが、
説明するまでもなく、「皇帝側」が圧倒的に有利です。
「Eカード」という名前の由来は
この一番強い「皇帝」・・・エンペラー
・・・その頭文字のEから来ている
まず「皇帝」ありきだ・・・!
皇帝側が有利なポイントは2つあります。
- 相手の手札の内、4/5を占める「市民」に対して「皇帝」を出せば勝てる。
- 「市民」を出せば絶対に負けることはない。(+相手が「奴隷」を出せば勝手に自滅してくれる)
対して、奴隷側が勝てる条件はたった一つ。
相手が「皇帝」を出したときに「奴隷」を出すしかありません。
その他の細かい条件として、カードを提出する順番、選出する時間、カードを必ず「見て」から提出する、
・・・という設定もありますが、基本的には「皇帝側」が勝ちやすいゲームというところだけ抑えておけば大丈夫です。
カイジ VS 利根川っ・・・!!
Eカードを使って、カイジはこれまでの因縁の敵である「利根川幸雄」と1対1の真剣勝負に挑むことになります。
この一戦を、シリーズ屈指のベストバウトとするファンも少なくないでしょう。
勝負が盛り上がる要因の一つとして、利根川があまりにも強すぎるんです。
カイジの姿勢、目線、口元、表情、・・・といったサインを完璧に読み取り、カイジの出すカードを正確無比に看破してきます。
先ほど、「皇帝側」が圧倒的に有利なゲームと説明しましたが、利根川は「奴隷側」であっても平気でカイジを打ち負かしてきます。
「限定ジャンケン」では絶えず変化するゲームの環境によって、主人公を追い詰めていくシナリオでしたが、
「Eカード」では単純に相手との実力差によって、カイジはムリゲーを強いられます。
カイジも馬鹿ではないので、戦況を読みながら勝率を上げる策を練るのですが、利根川にとってはそれすらもお見通し。
「皇帝側」にも関わらず「奴隷側」に追い詰められるという状況は、絶望感が凄まじかった。
この辺りから、読者の気持ちがカイジと完全にシンクロしていくんですよね。
どうやったら「勝てる」のか、ではなく、どうやったら「生き残る」ことができるんだ・・・? と。
タネ明かしっ・・・!!
もちろん、利根川は本当にカイジの心を読んでいる訳ではなく、ゲーム開始時に“ある仕掛け”を打っています。
この「仕掛け」も、ここまでの過程でしっかり描かれていたので、言われてみれば「何だそんなことか」と思うようなものです。
とはいえ、物語では極自然に描かれているので、初見では中々気付けないと思います。
「Eカード」の最終局面、遂にカイジがこの仕掛けに気付き、それを逆に利用して死闘を制する一連の流れは、
ギャンブル漫画の歴史に名を遺すものと断言できます。
そうなればもう自分の勝ちを疑わない
そりゃそうだ・・・
なんせ今 自分が相手にしているのは
自分と比べたら話にならぬ
クズ・・・ゴミ・・・劣等・・・低脳なんだから・・・!
圧倒的金言・・・!!
カイジに登場する名言・名セリフは、かなり有名なものが多いです。
当ブログでも過去に、何回か引用したことがあります。
なので、今回は比較的マイナーと思われる名言を3つ、最後に紹介します。
1.勝たなきゃ誰かの養分・・・それは船も外界も変わらない・・・!(カイジ)
自分の人生は何となく悲観的なものであるはずがない・・・と思いたいですよね。
それでも、望む人生を手に入れたいのであれば、「負けることが許されない」という場面は必ずあります。
同じような台詞に、「勝ちもせず生きようとするのが そもそも論外なのだ」というものもあります。
カイジを読んでいると、「勝つ」ことや、「お金」という人生に関わらずにはいられない、重要な要素。
その本質を考えさせられます。
一つだけ言えるとすれば、「お金より大切なものがあります。」・・・なんて綺麗事を言う人に限って、
怪しげな情報商材だのオンラインサロンだのやってるので、信用できねえですよね。
2.負けたからクズってことじゃなくて 可能性を追わないからクズ・・・(カイジ)
負けは単なる結果。
人が一生懸命にやっていることを遠目から見て、偉そうに口出しする人間が一番ダサい。
・・・そういう捉え方も、出来るかもしれませんね。
3.素人ほどそれをすぐ捨てる 言い換えれば・・・すぐ・・・腹を括る・・・!
すぐ「これで負けたらしょうがない」という口をきく(利根川幸雄)
ギャンブルで生き残るために最も必要な心構え、それは「疑い続ける」こと。「不安であり続ける」こと。
しかし、勝つか負けるか分からないという状況に耐えられない者は、勝ち負けよりも優先して白黒を付けたがります。
成功するためには、度を越して心配性になった方がいいのかもしれません。
とはいえ、「だから動かない方がいい」という意味では決してありません。
迷った分だけ貴重な機会も失い続ける・・・ということも、同じ利根川というキャラクターの台詞であります。
利根川は本当に名言の多い悪役です。
紹介した作品
賭博黙示録 カイジ 著者:福本信行