【要約】スマブラの生みの親『桜井政博のゲームについて思うこと』その2

2021年8月8日

©KADOKAWA Game Linkage/桜井政博

【書評】「当たり前じゃない」という意識を持つことが大事。


皆さん、お久し振りです。

ブログの更新が遅れてしまって申し訳ありませんでした。

言い訳になってしまいますが、本業の方が中々忙しく、帰宅しては直ぐに寝て、また朝早く出勤・・・という生活を繰り返していたもので。

 

何とか一段落ついて、一週間の休みを頂きました。この期間の間に、構想を練っていた記事をどんどんUPしていこうと思います。

 

今回は、書評の記事になります。以前に紹介した『桜井政博のゲームについて思うこと』という連載コラムの、一番新しい作品を最近読み直しました。

その感想をツラツラと書かせて頂きます。

 

 

桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019

桜井さん自身のことや、連載コラムの概要については前回の記事で紹介しましたので、参考に見ていただくとして。

【要約】スマブラの生みの親『桜井政博のゲームについて思うこと』

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この作品について紹介しようと思ったきっかけは、プライベートな話になってしまいますが、

桜井さんを私はとても尊敬しているからです。一番、と言ってもいいかもしれません。

 

“憧れは理解から最も遠く離れた感情”

ということは漫画:『BLEACH』の名言である通り、あまり人に抱く気持ちとしては適切ではないかもしれません。

 

私も、他人に過剰に依存することは危険だと考えています。それでも、どうしても思ってしまいますね。

”こういう人になりたい”って、素直に思える人です。彼の考え方・生き様を尊敬しています。

 

これは余談になってしまいますが、先月私は人生で初めて「ギャルゲー」を購入し、空いた時間で遊んでいます。

(こんな事しているからブログの更新が出来ない)

ただ、本名で遊ぶのは流石に恥ずかしかったので、桜井さんの名前を借りてプレイしております。本人が聞いたら確実に怒られますね。

何で見てる前提なんだよ。

どんな2択だよ。

 

めちゃくちゃ楽しんでゲームを遊んでいますが、主人公の行動というか、変態のレベルが常識を超えております。

・・・桜井さんには非常に申し訳ない気持ちになっています。本当にすみません。

ただ、恋愛ゲームの主人公の名前に設定するくらい、個人的に憧れているということです。

 

コラムのポイント

前回の記事と同様、このコラムから学べることは数多くありました。

ゲームの開発者側からの視点や、制作の裏話が聞けることは純粋に面白かったです。

真似することは難しいかもしれませんが、問題に対する独自の思考法・アプローチの仕方等も記載されていて、勉強になりました。

 

本書にあるコラムの中から、私の中で特に気に入ったものを厳選して、紹介させて頂こうと思います。

  1. 「何でも自分の思い通り」が最良ではない。
  2. 「全員共有」が仕事の鍵。
  3. 事実は単純ではない。
  4. 今日と同じ明日が来る保証は無い。

 

では、順番に解説していきます。

 

 

1.「何でも自分の思い通り」が最良ではない。

読者の手紙から、U.I(ゲーム業界では基本“メインメニュー”の意味で使われる)に関する質問が桜井さんに届きました。

質問内容

「何で一番上にこのコマンドを配置しないんだろう?」

「ちょっと配置を変えるだけのことが、そんなに難しいことなのでしょうか?」

といった内容の質問です。

 

私はゲーム業界に携わってはいないですし、プログラミングも学生時代の授業で学んだ程度なので、

あまり大きなことは言えないですが・・・やっぱり、難しいことだと思いますよ。

ただ、この読者の方も気持ちも分かります。

それこそ、スマブラを遊んでいたときに「メインメニューの配置は前の方が良かったな」と思ったことがあります。

 

桜井さんは、この質問に対して次のように答えています。

有用度や使いやすさは人によって尺度が大きく異なるので、
何でも自分の思い通りが最良だと考えない方が良いですね。

 

実際、スマブラにおいても、

「調整の声が大きく発売後に修正した内容でも、修正したことによって更に多くの不満の声が挙がった」

ということが実際にあるようで・・・。

 

特にスマブラという作品は、いわばゲーム全体の「総決算」という位置付けのゲームですから、それぞれの作品のファンも手に取ります。

開発者は非常に難しい立場にありながら、それでも「全体最適」をとって作品を手掛けている訳です。

 

ゲームに限らず、世の中にあるもの全てに、このような「一歩引いた目線で考える」ということは私たちに必要な姿勢だと思います。

もちろん、より多くの方にとって幸福になる方法を、模索していくことが大事ですけどね。

 

 

2.「全員共有」が仕事の鍵。

スマブラにおける、開発のディレクション手法が簡単に紹介されていました。

私は常々疑問に思っていたんです。

「スマブラのような超巨大プロジェクトを、一体どのように管理しているのだろう?」と。

 

桜井さんが語ったところによると、「全体共有」を意識してやっているとのことでした。

とにかく、チーム全員が共通意識を持ち、齟齬が発生しないようにすると。

説明の際にはモニターやインカムといった小道具も使用し、全てボイスレコーダーやビデオに撮影して記録しているそうです。

 

「そこまでやるのか!」と素直に感心してしまいました。その上で、毎日何十回も指示・修正を繰り返しているとのこと。

改めて言うまでもないことですが、ゲーム開発は大変な仕事ですからね。

 

この方法、私は普段の仕事に応用できると思います。

流石に、会議を撮影しておくというのは難しいことかも知れませんが・・・

自分のやるべきタスクを可能な限り分解し、上司と事前に共有しておくだけでも、後々の修正作業の工数をかなり減らせます

 

やり直しの発生しない仕事というのは、基本的に無いのですから。「まずは手を動かして様子見」を免罪符にしてはいけません

私はOneNoteの様な管理ツールを使って、私を含め、チームメンバーの業務を随時共有するようにしています。

ポイントは「何」を「いつまで」にやるのか、明確にすることですね。

 

単純作業を乗り越える方法

追加で、もう一つ仕事に使える考え方が掲載されていたので、紹介します。

「単純作業を如何にして乗り越えるか?」という話です。

 

仕事に限らずですが、私たちの生活には「単純作業する時間」が必ずありますよね。

私はこのように1人でブログを書いているので、記事の構成・アウトラインをつくった後は、ひたすらタイピングする時間が発生します。

といっても、書きながら考えを詰めていっているので、そこまで“作業感”は感じませんが・・・面倒臭いことには変わりありません。

 

そこで、桜井さんの語っている方法になります。面倒を楽しむためにはどうすればいいのか?

それは、その先にある未来を考える、ということです。

この作業をやった後、自分はどんな特典を得ることが出来るか?

 

ブログであれば、普段の日常で絶対に会うことがない、世界中の多くの方々に、自分の考えを知ってもらえる可能性があります。

私の好きな作品を、色んな方々に紹介することが出来るんです。

ブログを書くのは正直、面倒臭いことの繰り返しですが、リターンを考えれば面倒な作業も面白くなります

 

私の好きな漫画:『プラネテス』でも、主人公のハチが同じようなセリフを叫びます。

引用:プラネテス(2)

 

とはいえ、このやり方は短期的にはいいと思うものの、長期的な効果を得ることは難しいかなと正直思います。

だって、未来がどうなるかなんて、変数が多すぎて予測できないじゃないですか。

 

人は、今、この瞬間を全力で生き抜くことが一番大事なことなんです。

いつまでも夢ばかり見てんじゃねえ。現実を変えていきましょうよ。

 

ちなみに桜井さんは

「単純作業のようなゲームを遊ぶときでも、自分はエアロバイクを漕ぎつつ倍速でテレビを見ているので問題ありません!」

と、仰っています。

 

・・・そんなことが出来るのは、桜井さんぐらいではないでしょうか?

 

 

3.事実は単純ではない。

事実とは異なる、短絡的な紐付けをする人は非常に多いという話です。私たちも気をつけなければいけないことです。

 

Aという事象に対し、Bということがあった。だから、AはBの所為と考えるのは危険です。

そこには、もっと他の要因があるかもしれない。

多様化や経済の発展によって、社会の仕組みも複雑になっています。

 

それはゲーム開発においても同じで、「人体のように複雑」と述べられておりました。

人の数だけ、真実があります。

 

スマブラは超大規模のクロスオーバー作品になりますので、時には桜井さんのもとへ、悪質な意見が届けられることがあります。

例えば、

スマブラに対する意見

「自分が好きなゲームキャラクターの性能を贔屓している。」

「『ファイアーエムブレム』のキャラクター枠が多いのは、個人的な肩入れだろう。」

といった内容のものです。

 

そう言いたくなる気持ちも分からないではないですが、冷静に考えて、そんな訳がないですよね。

桜井さん自身も何度か答えていることですが、スマブラの構成の全ては、任天堂と戦略的に決定されていることです。

 

名前が知れている人は、大なり小なり誤解・誹謗中傷を受けます。

そういった意見に対して、桜井さん自身は「何もしない」というスタンスを貫いています。

どのようにしても聞かない人は聞きません。
作り手が弁解を重ねるのも気持ちがいいものではないと思います。
結局、つくったものだけが残るのだと思います。

そう、コラムでは書かれておりました。私も、その通りだと思います。

 

ただ、ごく稀にTwitterでブロックやミュートをすることはあるようで、

それは「度を超えて失礼か」といった判断基準でそうしている様です。

この「礼儀の無い人とは接点を持たない」というスタンスは、私たちも積極的に真似した方が良いと思います。

 

今の時代は特に、ネット上でやたら攻撃的な人を見かけます。意識していなくても、目に映ることがあります。不愉快極まりない。

そういった個人の身勝手な鬱憤が、誰かの楽しい未来を奪っているのです。

 

これは個人的なやり方になりますが、他人を貶めることで自己欲求を満たしている輩を見かけたときには、

「肉の塊が喋っている」と思うようにしています。

「肉塊が何か言ってる…」と考えれば、気にならない。

 

 

4.今日と同じ明日が来る保証は無い。

本書には任天堂の元社長、岩田聡さんが逝去された際のコラムも掲載されていました。

岩田聡さんについては以前に記事を出しているので、ここで詳細は書きません。

【要約】任天堂の社長が残した言葉『岩田さんはこんなことを話していた』

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公の場で既に語っている通り、桜井さんと岩田社長は仕事において、長いお付き合いがありました。

“生涯で一番の上司であり、一番の理解者であった”とまで仰っています。

 

岩田社長に対する思い

人格者で、努力家で、頭脳明晰で、サービス旺盛で。その上で、人の気持ちが分かる人だった。

どう考えても本人は悪くない場面で、頭を下げることができて、不快感を表に出すことなく、いつも明瞭な改善案を出してくれていた。

社長自らが矢面に立たなくてもいいのに、無責任な批判に晒されるリスクもあるのに、自身が発信することで正しく伝えることの大切さを訴えていた。

 

桜井さんにとっても、他の人にとっても、存在感が余りにも大きい方でした。

それでも、いつまでも悲しんだり、落ち込んだりすることはありませんでした。

いまあるものを達成することしか、手向けにできることはありませんから。

 

岩田社長が最後に桜井さんに託したミッションは、「NINTENDO Switchでスマブラをつくること」だったそうです。

そうして発売された『スマブラSP』は、累計売上2000万本を超えるメガヒット!

シリーズに登場した全キャラクターが集結する、文字通りの「集大成」となりました。

 

1人のゲームファンとして語りきれない程に、伝えたいことはあります。

携わった方々に一つだけ言えることがあるなら、「ありがとう」という言葉しかないです。最高の作品でした

出典:https://www.smashbros.com/ja_JP/

 

今日と同じ変わらない明日なんて、誰にも保証されることではない。

だからこそ、今、自分の目の前にあることを全身全霊で取り組むこと

今を生きる私たちが出来ることは、それしかないんです。

 

 

最も伝えたいこと

このコラムを読んで、私が改めて感じたことは、消費者が上から目線になってはいけないということです。

当然、作り手が上から目線で消費者の要望を無視し、好き勝手やってしまったら秩序も何もなくなりますが・・・。

 

お客さんの立場でいると、人はつい強気になります。

「お金を払っているのだから、もっと自分の思い通りに作って欲しい」という気持ちが働きます。

それは自然な欲求ですし、作品に対する意見・評価も自由であるべきでしょう。

世に出す以上、開発側も批判は覚悟の上です。

 

それでも、制作する人達に対しては、敬意を払って欲しいと思います。

たとえ自分と考え方が違っても、その人がやっていることが嫌いだとしても、

個人を攻撃する様なことは絶対にあってはいけない。

 

桜井さんは、全世界の人が熱中している作品をつくり続けている人です。

彼に掛かっているプレッシャーは、私たちが想像している以上に、ずっと大きいはずです。

期待が大きい分、心ない言葉を浴びせる人たちが出てきます。

残念ながらポジティブな意見より、ネガティブな意見の方が印象にも残りやすいです。

 

実際、『スマブラSP』が発売された当初も、難易度の高さで批判の声を挙げる人たちがいました。

そんなことで・・・と、私なら思ってしまいます。

 

全世界からの期待という重圧を背負い続けて、ボロボロになっても逃げずに、一つの作品に向き合って

とうとう「全員参戦」というファンの理想を実現させることができた。

それでも、本当に瑣末なことに口を出す人はいるのです。

 

全てが自分に合わなければ、それは価値が無いものでしょうか?

嫌ならやらない、という選択肢だってあります。

 

多少、自分の希望通りでないところがあったとしても、それ以上に、

ゲームによって様々な世界、新しく楽しい経験をさせてくれることに対して、

感謝の気持ちを忘れてはいけません。

 

桜井さんは作品に向けられる批判に対して、こんな言葉を残しています。

わたしは昔から、「声が上がらない人こそ大事」だと思っています。
(中略)
初心者って、声を上げてくれないですからね。
そういった人々をよく見て、感じ、根気よく仕事を積み上げるしかないと思います。

 

しかし作り手の方々には、批判でくじけないでほしいです。
楽しさを多くの人に伝えられるだけで、相当恵まれたことですので。

 

 

余談

本書はコラム集なので、桜井さんの遊んだゲーム、私生活などの軽い内容も多く掲載されています。(というより、そっちがメインかも?)

 

個人的に気になったのは、桜井さんでもソシャゲを遊ぶことがあるのだな、ということ。

「ソーシャル系のゲームもしっかりやらねば」という思いがあった様です。

『モンスト』の大会における賞金額の規模には、桜井さんでも驚いておりました。

 

ソシャゲの課金額、ユーザー層、資本。今やアプリのゲームは、どれをとってもスケールが凄いですよね。

人気のあるものを知っておく」というスタンスは、私も見倣わなければ、と思いました。

 

・・・といっても、私は基本的にソシャゲはやりません。

課金に歯止めが効かなくなるという懸念もありますが、一番はよゐこの有野課長が仰っていた

アプリはやりません。そこにエンディングがないので

という意見に、強く共感しているからです。

 

あと、桜井さんは大変なゲーマーとしても有名ですが、最近遊んだゲームの本数も記載されておりました。

詳細は分かりませんが、1週間で7本のゲームをプレイしておりました。その内、3本はクリアまでしています。

本業のゲーム開発だけでも、常人より遥かに忙しいだろうに、こういったコラムまでこなした上で、ゲームを遊ぶ時間を捻出しているんです。

 

世の中にこんな人がいるのだと思うと、気軽に「忙しくて時間がとれない」なんて言ってられないですよね。

1日は皆24時間しかない訳ですから。

最近サボり気味だったブログの更新も、もっと頑張らないといけない。と、改めて思いました。

 

初代『星のカービィ』制作秘話

更に余談になりますが、このコラム集には初代『星のカービィ』の制作秘話も収録されています。

下のリンクに掲載されておりますので、是非ご覧下さい。

 

参照リンクはこちら!

桜井政博氏が語る、初代『星のカービィ』開発秘話

 

これは2017年に開催された“星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート”で、

ゲストとして登壇された桜井さんが、幕間にプレゼンして下さった内容になります。

私は生で見ることができました。

 

このプレゼンが、まあメチャクチャ面白かったですね。

生で見たというバイアスが掛かっていますが、私の中で人生No.1のプレゼンでした

思わず「はぁ〜」って声が出ましたもの。

 

ゲームに限らずですが、優れた作品の裏話というのは非常に良く出来たコンテンツですよね。

少し前に読んだ本ですが、こちらの本も面白かったので、オススメです。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

 

紹介した作品

桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019

 

  • この記事を書いた人

イナ

本業は設計者。29歳。書評とコラムを発信する、当サイトの管理人。気ままに記事を更新します。日課は読書と筋トレ。深夜ラジオとADVゲーム好き。

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