©講談社/小山宙哉
【コラム】あなたは何の為に仕事をしている?
今回の記事は漫画:『宇宙兄弟』で私の好きなエピソードから、「人生のテーマを決めよう!」という話をします。自分の信念を決める、と言い換えても良いかもしれません。
あなたには、自分の人生で成し遂げたいこと、完遂したいと思っていることはありますか?
人生のテーマというと、「人が生きる目的」とか「何の為に生まれてきたのか」といった、スピリチュアル的な話として受けとめられそうですが、決してそういう話ではありません。
俺は何の為に生きているのだろう・・・という問いに悩んでいても、その問いには終わりがないので、「人生に生きる意味はない」と考えた方が、私は合理的で良いと思っています。
じゃあ今すぐに死んでも良いのか、という短絡的な話ではなく、「人が生きる意味はないのだから、自分がどう生きれば幸せなのかだけを考えよう」ということです。
この話は、私が好きでよく見ている「フェルミ研究所」で語っていた内容になります。私はめちゃくちゃ刺激を受けたので、是非ご覧ください。
YouTube:【漫画】人はなぜ生きるのか?【マンガ動画】
ちなみに、最近の私はサウナに入っているときが一番幸せなので、生きる目的は「サウナ」と「アフターサウナの飯と酒」ですね。最高です。
こうやって、没頭できるくらいに自分に好きなことがあると、私達が日常で抱えている大半の悩みは、屁でもないってことに気づきます。とはいえ、好きなことばかりやっていても、それはそれで、逆に物足りないとも思うのです。
この世界に産まれてきて、生きている以上は、
「何かを成し遂げたい」
「何者かになりたい」
そう考えることは自然なことだと思います。人生を充実させる為には、自分の好きなことに取り組むことは勿論、何でもいいから“目標”を設定することが大事です。
その目標が達成できたかどうか、結果を得られたかどうかは本質的には関係ありません。その目標が難しければ難しい程、挑戦した最終的な結果は、自分にコントロールできるものではなくなります。
例え達成できなかったとしても、自分で設定した目標をがむしゃらに追いかけて、努力し続けること。それだけでも価値のある、素晴らしいことだと思っています。達成する為に、自分ができる最大限のことは、やらなければいけませんけどね。
では、どうやって人生における目標を決めていけばいいのだろうか・・・?
そういう方にとって、今回の記事は何かしら得られるものがあると思います。
前置きが長くなってしまいましたが、スタートです。
ウォルター・ゲイツ
『宇宙兄弟』ではNASAのプログラムマネージャーという立場で、「ゲイツ」というキャラクターが登場します。
『宇宙兄弟』という作品では、基本的に悪役は登場しません。ヒール役が全くいないという訳ではないのですが・・・。作中の登場人物のほとんどは「宇宙飛行士」という人類を代表する超エリート集団なので、他人の足を引っ張るだけの無能は当然いません。
そんな『宇宙兄弟』という作品で珍しく、このゲイツというキャラクターは最初、クソ野郎として描かれます。実際にGoogle先生のサジェストでも、このような検索結果が出てきます。
彼は主人公である南波六太や、弟の日々人に対する、「敵」と考えてもらうと分かりやすいでしょうか。厳密には、同じプロジェクトを進める上司の立場ですから、決して敵ではないですけれど。
このゲイツというキャラクターの性質を一言で表現するならば、リスクをとらない上司です。
- 実績のない宇宙飛行士を、重要なミッションにはアサインしない。
- 訓練でパニック障害を起こした人物を、信用に値しないとして見限る。
宇宙飛行士となった主人公達が、自らの夢や目標の実現に向けて頑張っていく中で、大きな「壁」として立ちはだかるポジションです。もうね、全然認めない訳ですよ。ひたすらに頑張っている主人公や、その仲間達のことを。
特に、あるきっかけで宇宙服を着ることができなくなった日々人に対して、「毒」と言い切るシーンは、多くの読者がこう思った筈です。
ただ、ゲイツも私情でそういう態度をとっている訳ではなく、彼は彼なりの立場や責任があります。その言動にも一理あるんです。宇宙飛行士1人宇宙に飛ばすだけでも、億単位のお金が動く訳ですから。意思決定は慎重にならざるを得ない訳です。
ゲイツの立ち位置になってみると、ただ嫌味なだけの人物ではない、その存在全てを否定することはできないキャラクターであることが、後々分かってきます。
オーウェン・パーカー
そんなゲイツの印象が大きく変わるきっかけとなるのが、『宇宙兄弟』の22巻から登場する、オーウェン・パーカーというキャラクターの存在です。
彼は、宇宙飛行士やNASA職員御用達のBARである「OUTPUT TAVERN」のオーナー。過去にはNASAの職員であり、ゲイツの一つ上の先輩でした。
NASAに勤めていた頃の彼は、ゲイツの目から見ても極めて優秀な先輩であり、「タイプは違うが軽快に仕事をこなすパーカーを羨ましく思っていた」と述べる程。
現役時代の彼の仕事のスタンスは、「大事な局面こそ信頼する部下に任せて、責任は全部自分が負う」というものであり、“理想の上司”を体現しているような人物です。
そんなパーカーがNASAの仕事から退いた理由は、そこまで信頼していた部下に裏切られ、多額の損害を出した責任を全て自分が受けたこと。
ゲイツはそんな彼の背中を見て、
「リスクは負えない」
「失敗は許されない」
という考えに縛られていくことになります。身近にそういう人が居れば、そう考えるのは自然なことです。
私が激推しする名場面
「あの出来事がなければ、今でもNASAで働いていたはず」
「あんたの姿を見て、自分はそうなりたくないと思った」
OUTPUT TAVERNに1人訪れたゲイツは、自分が感じてきたことをパーカーに伝えます。するとパーカーは、そんなこと微塵も後悔していないという表情で、こう答えるのです。
「俺は宇宙をテーマに生き、宇宙飛行士の救いになるような仕事がしたかった」
「今もその立場は変わっていない」
カッコいいですね。こういうオジさんに憧れます。
何故、私がパーカーの生き方をカッコいいと思うのかというと、「自分の軸」というものをしっかり持っていて、そこがブレていないというところです。
私もこういう生き方をしたいな、と心から思います。20代、30代を仕事でバリバリ働いた後は、こういうお店をつくってみようかなあ・・・なんて。
学ぶべきこと
ゲイツのような生き方、パーカーのような生き方。どちらが正しくて、正しくないとか、そういうことはありません。ただ、この場面から私たちが学ぶべきことは多くあります。
- 手段は目的でないこと。
- ゴールから考えること。
- マインドを整えること。
手段は目的でない
私たちがつい日常でやりがちなことです。
- 憧れだった業界に入る。
- 狙っていた昇進を達成する。
そういった目標を達成することは確かに大事なことです。ただ、それ以上に大切なことは、その先で自分は何をやりたいのか、ということです。
そこが言語化できていないと、例え目標を達成できたとしても、「何か自分が思っていたことと違う」ということになりかねません。
ゲイツというキャラクターは、元々誰よりも宇宙好きな人物であり、憧れだったNASAに入社できたことは、彼にとって非常に幸運なことだったでしょう。しかし、いつの間にか「自分に置かれたポジションを如何に守るか」、ということばかりを考えるようになってしまい、
「思えば私は一度も 仕事を楽しんだことがない」
そう自嘲するようになっていました。多くの方にとっても、そうではないでしょうか?
手段が目的化してしまうのは、本当にありがちです。私だって、人のことは言えません。例えば、私は人と比較して本を読む方ですが、「本を読むこと」が目的になってしまっているんですよね。
本を読んで、何かを学び、日常に活かすことが何より大切なことです。最初の目的は何だったのか?
何をやるにしても、そこは忘れないようにしないといけませんね。今後、本を読むときには目的を持った上で、読むようにしていきます。
ゴールから考える
パーカーはこう言っています。
「俺は“宇宙”をテーマに生き 宇宙飛行士の救いとなる仕事がしたかった」
これが達成できるのであれば、仕事は何でも良かったんです。宇宙飛行士になることや、NASAで働くことだけが、“宇宙”に生きることではない。
まさに手段が目的化していない例と言えるでしょう。
私たちは自分のキャリアを考える際に、5年後・10年後にどうなっていたいか、といった視点で考えると思います。目標に対して足りないものを整理し、コツコツと積み上げていくことができる人は優秀です。
ここで提案したいのは、もっと大きな視点で、人生のテーマを設定してみても良いのではないか。パーカーのように、俺の人生のテーマはこれだ!って人に言えるとカッコよくないですか?
「そんなもん想像もできないから分からんよ!」という人の方が大半だと思います。ただ、何をテーマにするか悩んで一歩も進めないくらいなら、何でもいいから決めてしまう方が良いです。間違っていたと分かれば、後から修正していけばいいだけですから。
ゴールから逆算する、というのは名著『7つの習慣』の中の一つです。是非、自分の人生のテーマを設定してみてください。
マインドを整える
先ほど引用した画像の続きで、パーカーはゲイツにこう言います。
「夢破れた敗者だと思っていたかウォルター? 逆だよ」
NASAを辞めたことに対して一片の後悔も見せず、この台詞を放つのです。シビれますね。
ただ、パーカーは漫画のキャラクターですので、理想像のような描かれ方をされていると思います。実際に人間だったら迷うし、自分のやったことに後悔するし、後から冷静になって「止めとけば良かった」と思うことはしょっちゅうです。
パーカーのように、自分で後悔のない道を選ぶためには、例え他の人から真逆のことを言われても、「自分はこう思う、だからやるんだ」とはっきり言語化することが大切です。やり方は人それぞれだと思いますが、とにかく考えることが大事なのかなと。
誰かが言っていることだから従うのではなく、本を読んで、情報を集めて、自分の中に整理する。そして、考えて、考えて、考えるんです。
そこまで考えた結果なら、ある意味開き直れます。決断に自信が持てないのであれば、自分が納得できるまで正しい情報を集めるしかない。とはいえ、情報を集めすぎてもキリがないので、ある程度確信が持てたなら、さっさと動いた方が徳でしょうね。
最近になって、自分で考えることが本当に大事だな、と身に染みます。仕事だけの話ではなく、人生全体において、「考える」ことから逃げてはいけないなと。
まとめ
今回は宇宙兄弟の名場面から、話を深ぼってみました。漫画とはいえ、一つの記事にしようと思ったら、幾らでも書くことが出てきます。
同じものを読むとしても、「学ぼう!」「学びたい!」という自発的な気持ちがあると、得られるものは格段に違ってくるということを実感しました。
紹介した作品
『宇宙兄弟 22巻』 著:小山宙哉
この話が好きすぎて、何度も読み返しています。