【書評】私たちはパンデミックと共にインフォデミックにも襲われている(WHO)
インフォデミック
ネットなどで噂やデマも含めて大量の情報が氾濫し、現実社会に影響を及ぼす現象を指す。
「情報(Information)」と、感染症の広がりを意味する「エピデミック(Epidemic)」を組み合わせた造語だ。
スマホ中毒になった現代人
電車に乗っていると、見渡す限りの人がスマホを手に持って操作している。
アプリで遊んだり、SNSやメールの通知を確認したり、ネットニュースを読んだり・・・かくいう私も、その一人だ。
1日に平均して4時間はスマホに費やしていると言われている現代社会。
これは良いことなのか、悪いことなのか。
スマートフォンが世界に普及してから、何度となく社会問題として挙げられている話題である。
慢性的な睡眠・運動不足、他者との関わりが減ってしまったことによる精神的な不調。
慢性的なストレスを訴える人々は増え続ける一方だ。デジタル社会の発展と共に、私たちはどんどん不幸になってしまったのかもしれない。
家族や友人、恋人と過ごしている貴重な時間でも、見つめているのは手元の液晶画面ばかり。
そんな時代に警鐘を鳴らした一冊の本が、教育大国のスウェーデンを震撼させ、世界的なベストセラーになりました。
「人間の脳はデジタル社会には適応していない」と論じた書籍です。
参照リンクはこちら!
“2021年最も売れた本”は『スマホ脳』!「オリコン年間BOOKランキング 2021」第1位を獲得!
今回は、2021年に最も売れた本『スマホ脳』で書かれている内容を、私なりに紹介させていただきます。
スマホ利用について、一度考え直すきっかけになれれば、と思います。
ココがポイント
人間の脳の仕組みとデジタル社会から受ける影響を理解する。
記事の構成
①:私たちの脳はスマホにハッキングされている。
自分の意思ではどうにもならないデジタルの魔力。
②:スマホ依存による弊害。
スマホは際限なく人生の時間を奪い、私たちはバカになっていく。
③:デジタル社会に対する対抗策。
変わってしまった世界で、私たちが出来ること。
では、さっそく始めていきましょう!
①:私たちの脳はスマホにハッキングされている。
仕事中でも、勉強中でも、休日でも、私たちの生活は常にスマホが手元にあるようになっています。
スマホが机の上にあるだけでも、気が散って集中できなくなります。
テレビ、ドラマ、映画を流している間、何回スマホを手に取っていますか?
休みの日でも何も予定がなければ、ついついスマホに手を伸ばし、気がつけば一日が終わっていた。
そんな経験をしたことがある人は、少なくないはずです。
時間の無駄だって分かっているのに、それでも私たちは、スマホを手放すことができない。
それは決して、あなたの意思が弱い訳ではありません。
フェイスブック、スナップチャット等の世界的IT企業は、私たちの脳をハッキングすることに成功してしまったのです。
大天才の集団が、「時間を奪うこと」を目的にした製品を世の中に生み出してしまいました。
『スマホ脳』では、人類史から紐解いて解説しています。
生存戦略としての本能
私たちは大昔、狩猟生活をして暮らしていました。そのときの本能は、今の私たちにも受け継がれています。
一例を挙げると、
- ネガティブな情報が気になってしまう。
- 強いストレス・不安を感じると、それ以外のことが考えられない。
・・・という風に。生存確率を上げる為に、こういった脳のシステムが発達しました。
現代では目の前に急に猛獣が現れ、襲われるという心配はほぼ有り得ません。
ただ、心理社会学的なストレスを受けると、脳内で同じシステムが作動するようになっています。
脳が正常に作動しなくなり、「闘争か逃走」以外の、睡眠・消化活動・生殖といった行為の優先順位を下げるようになります。
こういった本能は、「生存」の為の要因でした。
たった一回逃げ損なったら死ぬ環境であれば、たとえ誤報でも早く警報が鳴った方がいい。
簡単に気が散るようになっているのも、生き残り戦略の一つです。
しかし、こういった本能は現代社会には対応していません。
これまでに何十万人という単位で人間を殺傷してきた自動車やタバコよりも、ヘビや高所の方を危険だと認識してしまうように、
人類の進化は社会の変化に追いついていないのです。
今の世界では、生存本能としての脳のシステムが、全く別の理由で作動するようになりました。
チャットの返信がないとか、SNSでいいねがつかないとか、そういった理由で。
明日の命の心配をすることはほとんど無くなりましたが、ストレスが長時間継続するようになっています。
『スマホ脳』では、うつ症状も「危険な世界から身を守る為の脳の戦略」かもしれない、と述べていました。
誰かをけなして自分は真っ当
前後を削った一言だけを
集団攻撃 小さな誤解が命取り
引用:「あいつら全員同窓会」 ずっと真夜中でいいのに。
最新のドラッグ
私たちがスマホが大好きな理由。
それは、スマホで検索する度に脳からドーパミンが放出されるからです。
ドーパミンとは簡単にいうと「快感や多幸感を得る」、「意欲を作ったり感じたりする」といった機能を担う脳内ホルモンのこと。
- 好きなYouTuberが新しい動画をUPしているかもしれない。
- SNSで投稿した写真にいいね!や返信が来ているかもしれない。
- 5ちゃんねるで面白いスレッドが見つかるかもしれない。
このような「かもしれない」という“期待”に、私たちは夢中になります。
休日にパチンコを楽しんでいるおっちゃんも、「結果出したいならマジで環境」とか意識高いツイートをしている人たちも、その本質は同じです。
不確実性が伴うギャンブルは、逃れることのできない中毒性を持っています。
危険から身を守るための、生き残り戦略だった脳のメカニズムは、デジタルの魔力に飛びつくようにできています。
「脳をハッキングした」というのは、このことです。
②:スマホ依存による弊害。
スマホが世の中に普及されてから、私たちの生活では集中力を維持することが難しくなりました。
集中力がなくなってしまうということは、「脳が最適な状態で動かなくなる」ということです。
スマホを無視するにも労力が必要で、知能の容量を割くことになります。
マルチタスクで並行してできるから問題ない、と考えている方は要注意。
世の中のほとんどの人はマルチタスクなんて出来ません。別々の作業を一つずつ行き来しながらやっているに過ぎません。
私の知る限り、そんな芸当(マルチタスク)が出来る人は「ラジオ体操第二を口ずさみながらラジオ体操第一をやるのは難しい」など、
常人には不可能なことを日常的にやっている、ゲームクリエイターの桜井政博さんくらいです。
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【要約】スマブラの生みの親『桜井政博のゲームについて思うこと』その2
続きを見る
スマブラを開発できるような人でない限り、平行して作業を進めるというのは難しいのです。
スマホという魅惑的な商品によって、長期記憶を作る能力にも悪影響が出てきています。
記憶する為には、集中しなくてはいけないからです。
「検索すれば情報がいくらでもヒットする時代なのだから、必要のないことを覚える意味がない」
そう考える人もいるかもしれませんが、『スマホ脳』ではそういう意見に対して真っ向から反対しています。
結論から云うと、スマホに頼りすぎるとバカになります。
何故、知識を身に付ける必要がある?
一言でいえば、「情報の正確さを精査する為」です。
ネットに書かれている記事では、どうしても断片的な情報にしか得られません。
読者に強い印象を植え付けられるように、結論ありきになっている記事の方が多いです。
その所為で、「他の情報と比較してどうなのか」とか、「その根拠に科学的な考証はあるのか」といった大事な要素が、
抜け落ちている場合があります。
「ネットを使うな」とまでは言いませんが、グーグルの検索画面の行き来をどれだけ繰り返しても、
情報が消化しきれていないので本当の意味で私たちのものにはなっていません。
だから、何かの物事を説明するとき、構造的に伝えることが出来なかったり、批判的な問いかけをされた際に答えられなくなったりします。
理解したようでいて理解していないからです。その場で覚えた気になっていても、すぐに忘れるからです。
漫画『ボーボボ』の亀ラップの歌詞(?)にある通り、私たちはもっと「なんでかな〜? なんでだろー?」という姿勢を持つべきなのです。
ちなみに、亀ラップは何回読み直しても全く理解できません。
私たちの脳は、個人的な体験と融合することで、はじめて“知識”と呼ばれるものを構築します。
また、紙とタブレットの書籍を生徒に読ませた結果、「紙の書籍の方が覚えがいい」という研究結果も紹介されていました。
私もバリバリ電子書籍を使っているので、「電子書籍よりも紙の本を買いなさい!」とは言いたくないですが、
重要なところはノートに記録する、整理してまとめるといったアナログな手法は、馬鹿にできないことかなとは思います。
電子書籍は手軽な分、印象に残らないのかもしれません。
自制心が抑えられない
スマホ依存の弊害は他に、「報酬を我慢できなくなる」ということも挙げられていました。
今の子ども達は“手軽に手に入るエンタメ”に慣れきってしまったので、
楽器の演奏とか習得に時間の掛かるものに対して、長く続けられない傾向が高まっているようです。
即座に手に入るご褒美が「当たり前」になると、すぐに上達できなければ辞めてしまう。残念なことですが、とても納得がいきます。
私の身に覚えがあるところでいうと、ゲームのネタバレもYouTubeで見るようになってしまうとかもありますね。
これも我慢ができなくなったことの、良い事例でしょう。ネタバレなしで、自分の目で体感するのが最高に面白い瞬間だというのに。
こういうことを考えてしまうと、やっぱりデジタル社会は良くないなと思ってしまいます。
旅行に行っても家族や友達がスマホばっかりいじっていたら、楽しくないですよね。
③:デジタル社会に対する対抗策。
では、そんな社会に対して私たちにできることが何か?ということなのですが、『スマホ脳』ではそんなに長々と語られていなかったです。
だから多少、拍子抜けするところもあるかもしれませんが、簡単に説明します。
私が重要だと思ったのは、以下の3つのポイントです。
- 運動する。
- スマホを使わない趣味を見つける。
- 画面を白黒設定にする。
運動する。
これも色んな書籍で言われていることなので、「知ってるよ」という方も多いと思いますが、人間はやっぱり動く生き物です。
社会の発達と共に椅子に座っている時間がどんどん長くなってしまったので、時間を見つけて運動しましょう。
デジタルデトックスになりますし、『スマホ脳』では他に
- 集中力が上がる。
- 知能が発達する。
といった効果も紹介されていました。
運動することは、デジタル社会の弊害に対する最大の対策であり、最も手軽で効果的だとまで述べています。
私も最近「ジムに行って良かった」という記事を書きましたが、ストレス解消としてやっぱり良いよなぁと思います。
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スマホを使わない趣味。
運動(スポーツ)もそうですが、楽器を演奏する、小説を書くといった趣味を楽しむのも良い方法です。
これも色んな方が言っている事ですが、「エンタメを楽しむ側ではなく、作る側になる」という事です。
スマホではクリエイティブな作業が出来ないので、いつまで経っても“消費者”という立場になってしまいます。
その立場では、自分から「楽しさ」を作る遊びが出来ません。
ホリエモンこと堀江貴文さんが昔、「スマホがあればどこでも働ける」とか言っていましたが、
それは堀江さんだからそう言えるのであって、世の中の99.9999%の人には無理です。
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スマホでクリエイティブな作業なんて、ほとんどの人には出来ないので、パソコンを買いましょう。野菜も食べましょう。
私も2年前に自分の身の丈に合わないパソコン:MacBookを購入し、そのおかげで曲がりなりにも「ブログ」という趣味を続けられています。
画面を白黒設定にする。
これはスマホを非常に不便にすると言った意味で、効果的だと感じたので紹介します。
「休日スマホを触る時間を少なくしたい」という方にはオススメです。
まぁ、私は常にスマホが白黒の状態だと不都合も多いので、平日はやっていないのですが。
「もうスマホは使わない!」と時間を決めてやる分にはいいかなと思います。
統括
スマホは便利な反面、どこか寂しい時代になっているよなぁ・・・ということは学生時代から思っていました。
世界的な電波障害でも起きない限り、スマホが世の中から無くなることはないでしょうが、
せめて人と話をするときにスマホを取り出すのは止めよう、ということは肝に命じています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次の記事でお会いしましょう。
紹介した作品
『スマホ脳』