©ニトロプラス
【感想】「善悪相殺」の絶対の戒律が証明する罪と愛。
今回は2009年にニトロプラスより発売され、現在でも名作との呼び声高い、PCノベルゲーム。
『装甲悪鬼村正』をプレイした感想を書きます。
記事の構成
- プレイしたきっかけ
- 完走した感想
- どんなゲームか
- 作品の魅力
- 各章のレビュー
- 統括
途中からゲーム本編の内容を含みますが、ネタバレに触れる際はあらかじめ告知します。
結論だけ先に書いておくと、自分がこれまでにやってきたノベルゲームの中で、
トップクラスに“強烈”なゲームでした。
とにかく尖りすぎていて、類似している作品が他に思い浮かばない。
圧倒的な重厚さと熱量に、読んでいるだけで押し潰されるような、そんな作品でした。
「軽い気持ちでやらない方がいい」とだけ、伝えておきます。
キャッチコピー:
これは英雄の物語ではない。 英雄を志す者は無用である。
では、早速レビューをはじめていきます。
1.プレイしたきっかけ
『装甲悪鬼村正』をプレイしたきっかけは、今から数年前。
18禁ゲーム業界で働いている、友人からの紹介でした。
会うたびに新作のおすすめや、過去の名作をプレゼンしてもらっているのですが、
その中でも、レビューサイトで100点をつけたというゲームがあり、
それが本作、『装甲悪鬼村正』でした。
“100点”をつけたゲームは他に1本しかなく、その作品というのが、以前に当ブログでも紹介させてもらった、
『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』でした。
『さくら、もゆ。』は紹介してからすぐに購入し、完全クリアまでしました。
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いろいろ、癖がありすぎる作品でしたので、
結論としては「あまりオススメできない」と書いた覚えがあります。
あと、単純にシナリオがとても長いので、ノベルゲーの初心者が最初にやるゲームではないなと。
ーで、『装甲悪鬼村正』もいつかプレイしようとは思っていたのですが、
『さくら、もゆ。』以上にシナリオが長いと聞いていたので、
中々重い腰を上げられないまま、数年が経過しました。
そんな折、ニトロプラス作品が軒並みセールになっていた時期があり、
『装甲悪鬼村正』を遂に購入。ついでに、以前からやろうと思っていた『沙耶の唄』も買いました。
『沙耶の唄』は去年にプレイして、個人的にはかなり好きな作品でした。
狂った主人公と怪物ヒロインが、周囲の人間を食い殺しながら愛と絆を深めていく、
ほのぼのハートフルラブコメ作品です。
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ーという冗談はさておき、ニトロプラスは数多くの名作を排出しているゲームメーカーであり、
18禁ゲームでしか表現できないような、簡単にいえば“エグい作品”を生み出しています。
そんなブランドが創立10周年作品として発売したのが、『装甲悪鬼村正』でした。
いわば、ニトロプラスの集大成であり、ブランドの到達点。
・・・それは言い過ぎかもしれませんが、
それに見合うだけの予算と、作り手の信念やら思いやらエネルギーやら、
懸けられる全てを注ぎ込んだといっていいくらいの、凄まじいゲーム。
シナリオライターである奈良原一鉄さんが、
この『装甲悪鬼村正』を最後に筆を置いていることからも、
「一人の作家がやりたいことをやり切った」というのがよく伝わります。
「名作」ということは既に分かっていて、さらに『沙耶の唄』をやったことで、
ニトロプラス作品に対する免疫がついたので、数年越しに『装甲悪鬼村正』をプレイし始めました。
実際にプレイしていた期間としては、約3ヶ月くらいでしょうか。
やはり時間は掛かりましたが、全編プレイし終えました。
2.完走した感想
完走した感想・・・といきたいところですが、最初に断っておきます。
正確には完走できておりません。
どういうことかというと、最終章まで読み進めて、最終節に到達したところで、
ゲームがフリーズして進行不可になりました。
「この先どうなるんだ!?」とヤキモキした私は焦りと不安から、
碌に調べないまま、公式サイトのアップデートファイルを読み込みます。
すると、どうなったか。
ゲームが無事に初期化され、トゥルーエンディング直前にして、
60時間超のセーブファイルが消し飛びました。
引用:『賭博黙示録カイジ』©福本伸行
非常に悔しいですが、最後の展開だけはYouTubeで実況動画を探し、
それを見て物語の結末を知りました。
まぁ、ゲームの一番盛り上がる部分は自分でプレイできたし、
99%以上はやりましたので、完走したと言わせてください。
・・・そんな訳で、(ほぼ)完走した感想になりますが、
いや、感想書くのが難しすぎるよ!!
ストーリーが重厚すぎて、紹介しようと思ったら書いても書いても終わらないし!
良いところもツッコミどころもありすぎるし!
ネタバレに配慮したら、逆に何も書けないし!
本当に、過去一で感想を書くのが難しい作品でした。
先日、30歳を迎えたのですが、まだまだ自分の知らない作品、
世界観が星の数ほどあるということを、思い知らされました。
過去のレビュー記事でも、作品の点数はつけていないのですが、
この『装甲悪鬼村正』は、本当に点数をつけられない作品です。
ただ、仮に減点しようと思ったら、いくらでも出来ます。
例えば・・・
ーこのように、いくらでもケチをつけられます。
ならば、私の友人のつけた“100点”という評価が嘘だったかというと、
NOです。むしろ、その点数には納得しています。
60時間以上もプレイして、その全てが肯定できる訳ではありませんが、
それでも、「プレイできて良かった」と心から思っています。
完走した感想として、私から言えることは、
「興味があるならやったら? めっちゃ大変だけど、一生記憶に残るよ」
ということだけです。
何だか上から目線の感想になってしまいましたが、
ネタバレに配慮すると、何も言えないので。
ただ、「ラスボスとの最終決戦でいきなり数独パズルが始まる。」
これだけはどうしても言いたかったので、先に書かせてもらいました。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
今振り返ってみても、あれは何だったんだ・・・。
注意:
ここから先はゲーム本編のネタバレ(第一章の内容)が含まれます。
未プレイの方は、体験版だけでもプレイしてから読むことを推奨します。
3.どんなゲームか
では、ここから先の感想は、ゲーム本編のネタバレがある程度含まれます。
何でこんなに、ネタバレ云々言っているのかというと、
主人公が誰か、という話からネタバレになってしまうからです。
公式サイトを見れば、というかゲームのパッケージを見れば、
この作品の主人公が誰なのか分かりますが、
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
ゲームを開始してすぐの第一章は、主人公視点では進みません。
ここでプレイヤーが体験するのは、『装甲悪鬼村正』の世界観と、
客観的視点から見る主人公の姿になります。
そして、第二章から「村正」を操る本作の主人公:湊斗景明の、
過酷な運命の戦いが描かれるーという流れになっております。
あらすじ:
超能の鎧「劔冑」を駆る戦士「武者」が戦場を席巻する世界。
非公式の警官を称する男・湊斗景明は、赤い劔冑「村正」を纏い、
ある時は卑劣な連続殺人犯に、またある時は軍兵の暴虐に挑み、
最強の武者たる己の力をもって打倒する。
だが決して、彼が正義を称することはない。
何故なら彼の劔冑の銘は勢洲右衛門尉村正。
呪われし「妖甲」、かつて大和全土を地獄に変えたことすらある、
かの村正なのであるから。
(公式サイト:リンク先 より一部引用)
世界観
作品の理解を進める為に、物語の前提となる世界観を解説します。
『装甲悪鬼村正』の舞台となるのは、極東の島国・大和帝国。
独立国家だった大和帝国は、先の大戦で敗北し、現在は“国際連盟軍(GHQ)”の占領を許している。
GHQから政権を委任されるという形で、大和を支配しているのは“六波羅幕府”。
「劔冑」という世界最強の武力(ツルギという名称だが、実態は意思のある鎧。パワードスーツのようなもの)により、
民衆に対して容赦のない統治を行っている。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
そんな六波羅幕府とGHQとの、いずれ生じるであろう新たな戦争。
そして、その両軍をまるで意に介さず、
大和帝国にて無差別殺戮を発生させている存在ー“銀星号”と呼ばれる白い武者。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
六波羅の暴圧的政治で苦しめられている民衆たちは、暗雲立ちこめる大和の未来を案じている。
そんな混沌とした情勢の中で、打倒・銀星号を目的に動き、
時には六波羅、GHQとも激闘を繰り広げることになるのが、
主人公である湊斗景明。そして、彼の劔冑:村正です。
こう書いてしまうと、単純な正義VS悪の物語のように見えてしまいますが、
『装甲悪鬼村正』は決して英雄譚ではありません。
この作品のテーマである「善悪相殺」は、村正を使う上での絶対的な戒律であり、呪い。
“悪”と見做したものを斬ったのならば、
自身にとって“善”である存在をも断たねばならない、という鉄の掟です。
このように、作品の概要を表面的に書いてしまうと、
「あぁ、そういう系の作品ね」と受け止められるかもしれません。
要は、“悪”の力を持って“悪”を制す。
大義の為に、少数を犠牲にしてでも目的を成し遂げる。
作品の方向性としてはありがちであり、目新しさには欠けるかもしれません。
『装甲悪鬼村正』が他の作品と一線を画す理由は、
「大義の犠牲になる少数の立場になったら、どうなるのか。」
ーという非常な現実を、徹底的にプレイヤーに突きつけてくることです。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
目的や理想の為に、他の誰かを犠牲にするというのは、こういうことなのだ。
そんな作り手のメッセージが、痛いほど伝わってきます。
皆を救う為に死んでくれと、愛しい人を殺し続ける二律背反。
そんな情け容赦のない展開が、最初から最後まで続きます。
このゲームをプレイしてから、主人公の湊斗景明さんは、私の知る限りの作品で、
最も曇らされたキャラクターになりました。
余談
『装甲悪鬼村正』はエロゲにも関わらず、人気投票で第一位となったのが、主人公の湊斗景明さんです。
数多くのヒロインを差し置いて、妙に陰気なオーラを放っているこの男性が、一番人気。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
だが、やれば分かる。
4.作品の魅力
『装甲悪鬼村正』の魅力。それを一言で表現するなら、
「善悪相殺」というテーマを見事に描ききった、ということだと思います。
先述した通り、『装甲悪鬼村正』はシリアスでダークな作品です。
同じニトロプラスに所属している虚淵玄の作品以上に、陰惨で救われない展開が多いです。
(※超グロいCGとかは出てこないので、その点では安心してプレイできますが。)
その最たる要因となっているのが、村正の持つ忌まわしき“呪い”ー「善悪相殺」。
物語の第一章から主人公、そしてプレイヤーをも苦悩させるこの呪い。
しかし、物語を読み進めていくうちに、「善悪相殺」の意味、本質が理解できるようになり、
最終的には全く印象が異なるものになります。
「この一刀をもって、善と悪を諸共に断つ。その覚悟をせねばならないのだ。
誰が誰を殺すときもーーーー。」
ノベルゲームという枠組みを超えて、世界の、戦いの真理として、
肯定的に受け止められるようになってしまう。
人によっては、”正義”や”悪”という概念すらも一変させてしまう。
それだけのパワーがあり、哲学的な要素も含んでいるのが、
『装甲悪鬼村正』という作品です。
テーマが素晴らしいというより、その着地に向かって、全てのキャラクターとシナリオが設計されて、
違和感なく落とし込まれている、物語の構造が素晴らしい。
あまり書くとネタバレが過ぎるので、これ以上は書きませんが、
「それまでの前提であった価値観がひっくり返される」
ここが、本作をプレイしていて最も面白いと感じた部分でした。
言語化された理詰めの戦闘
テーマ性と並んで高く評価されているのは、劇中で描かれる様々な戦闘シーン。
全てではありませんが、「劔冑」を使用した戦闘では、
CGアニメが用意されている場面があり、ヌルヌル動きます。
そして、この作品は“強さ”の表現がとにかく凄い。
第一章ではじめて「劔冑」が現れる場面があるのですが、
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
涼やかに金音が鳴った。ゆるゆると抜き放たれる白刃。
細い。実用の武器というより、王侯貴族の飾り刀剣のよう。
・・・違う。刀は大物。おれの腕よりも身幅のある大剛刀だ。
そんなものが細身に見えてしまう程、黄銅色の劔冑が重厚極まりないのだ・・・。
この世界の絶対的な武力である「劔冑」がどれほどの兵器で、
生身の人間では全く太刀打ちできない存在であるということを、これでもかという程に突きつけてきます。
面白いノベルゲームは、文章で絶望感を表現するのが上手すぎるんですよね。
また、それ以上に唸らされたのが、戦闘描写の上手さ。
登場人物の大半が武人である為、ガチンコの剣戟が描かれるのですが、
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
シナリオライターが本物の剣術師範代という異色の経歴を持つだけあって、
文字通りの真剣勝負による緊張感の演出は、
プレイヤーが今やっているのがエロゲであることを忘れさせるくらい、
非常に濃密で、息の詰まる攻防を描いています。
その分、戦闘のテンポは悪くなっているところがあり、人を選ぶところがありますが。
他には・・・
世界観はひたすら残酷で容赦ないですが、その反面、ギャグシーンも非常に多いです。
その中には、声を出して笑ってしまうようなものもあり、
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
こういった合間のギャグのおかげで、陰鬱な気分になりすぎず、最後まで楽しく読むことができました。
また、長い長い物語ではありますが、伏線が多いので、
一読しただけでは分からない箇所が多々あり、再読する楽しみが生まれます。
「劔冑」の設定や、世界情勢については解説されますが、
詳細な部分・各キャラクターの関係性の全てが語られる訳ではありません。
その為、特に最初の方は「?」と引っ掛かりを覚えることが多いですが、
物語を読み進めていくうちに、段々と言っている意味が分かるようになっていきます。
それに加えて、辞書を引かなきゃ理解できないような、難しい表現も多いです。
一例を挙げると、
- 髀肉(ひにく)をかこつ
- 瑕瑾(かきん)をあげつらう
- 昔とった杵柄(きねづか)
「こんなの日常生活で使わねーよ!」という慣用句が当たり前のように出てくるので、
私は律儀に意味を調べながら読んでいました。
とはいえ、上述したギャグシーンや、剣戟の描写がすごいので、
読んでいて苦になるということは、あまりなかったです。
強いていえば、世界情勢の変化を説明される部分は、
知らない情報をワッと浴びせられるので、理解するのが大変でした。
5.各章のレビュー
本作の魅力について語ったところで、ここからは各章の(個人的な)感想を書きます。
ある程度ストーリーの内容には触れますので、未プレイの方は、ご注意ください。
ココに注意
終盤の展開に関しても言及するので、内容を知りたくない方はブラウザバックを推奨します。
第一編 「鮮紅騎」
大和で慎ましく生きる少年少女。
『装甲悪鬼村正』のストーリーは、彼らの視点から始まります。
通っている学校の歴史の授業という形で、国の成り立ち、「劔冑」の解説が、
物語に違和感なく差し込まれます。
六波羅幕府の圧政により、貧しいながらも幸福に生きていた新田雄飛という少年と、その幼馴染である小夏。
しかし、彼らの仲間の一人が、突然失踪してしまう事件が発生。
幕府に誘拐されてしまったのではないかと不審に思い、探偵団まがいの調査を進めていくのだがー・・・。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス [右:小夏、左:忠保(雄飛の友人)]
この第一編は、完璧な一章です。
これほど完成度の高い導入部はないとさえ思います。
世界観の自然な説明。各ヒロインの他、メインキャラクターの顔見せ。
無駄な描写は全くなく、さらに、読み手側の先入観を利用した、
叙述トリックまで仕掛けられており、単体の章としても完成度が高い。
この章で登場する少年:雄飛と、その仲間たちに待ち受けている運命は、
『装甲悪鬼村正』がどういう物語なのかを、プレイヤーにこの上なく刻みつけてきます。
第二編 「双老騎」
ここからようやく、本作の主人公:湊斗景明さんの視点ではじまります。
メインヒロインも本格的に物語に関わるようになり、
恋愛ゲームにはお決まりの選択肢と、好感度メーターまで出現します。
当然、プレイヤーは狙っているヒロインの好感度を上げたくなるでしょう。
しかし、それが製作陣の仕掛けた“罠”。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
第二編の終了時に、好感度メーターの意味が明らかになり、
その展開に多くのプレイヤーが絶句したことでしょう。
熟練の武者たちとの死闘を終え、尊い犠牲を払った上で勝利したのに、
突如出現した銀星号の手によって、景明さんの救いたかったものは全てー・・・。
人の心とかないんか?
第三編 「逆襲騎」
銀星号を操る仕手の正体と、主人公:湊斗景明との関係性。
これまでに戦ってきた意味と、最終的な目的が、景明さんから遂に語られます。
新たな災厄の誕生を防ぐ為、アーマーレース大会の調査へと乗り出すことに。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
ここで六波羅幕府の首領と、その配下の四天王が登場し、物語が大きく動いていきます。
そして、ここまでの選択肢次第では、メインヒロインであっても命を落とします。
最後までプレイしてから振り返ると、この章は物語の核心に迫る伏線が多いですね。
第四編 「震天騎」
引き続き、銀星号を調査する主人公一行。
六波羅の研究所が存在する江ノ島で見たものは、怪物と見紛う程に巨大な「劔冑」だった。
圧倒的な物量攻撃に苦戦を強いられる中、主人公に対して強い怒りを露わにする、
雪車町一蔵が乱入しー・・・。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
この章のポイントは、やはり湊斗景明VS雪車町一蔵でしょう。
卑劣なチンピラを自称しながら、劇中最高レベルの剣術を披露する雪車町との一騎打ちは、
全編を通しても印象に残る名バトルです。
『装甲悪鬼村正』は端役のキャラクター全員に味があって、
これも名作とされるポイントの一つです。
第五編 「宿星騎」
主人公、湊斗景明の過去回想。
妖甲:村正を手にすることになった経緯と、望まぬ人殺しを繰り返してでも、
彼が戦わなければならない理由が、ここで明らかになります。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
村正を手にすることがなければ、景明さんは大量殺人者になることはなく、
真面目で大分天然の入った愉快な兄ちゃんとして、皆から愛されていたことでしょう。
ゲーム本編の開始時点で人生が詰んでるとか、あんまりじゃないですか(泣)。
ここまでの物語が、「共通ルート」に該当し、
ここから先の物語は選択肢によって分岐していきます。
英雄編(綾弥一条ルート)
この世の悪を打倒する為に造られた“政宗”。
その「劔冑」を手に入れたヒロイン:綾弥一条と共に、六波羅幕府と戦い、
打倒・銀星号を最終目標とする物語。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
後の魔王編へと繋がる伏線はいくつかありますが、物語的には、一番まとまっていたように思います。
主人公とヒロインが互いを求め合う場面も、ストーリーとの繋がりが自然で、違和感なく読めました。
綾弥一条が「政宗」を扱えるようになったことで、敵を打ち倒す役目は一条に委任することになり、
湊斗景明は「善悪相殺」の縛りから解放され、罪のない人間を殺す必要はなくなります。
ーだけど、本当にそれでいいのか?
自分のやっていることは、戦いの責任を一条に押し付けているだけという事実。
そして、正義を名目にした殺人行為は許されることなのか?
自問自答の末に「善悪相殺」の本質を理解した主人公は、単身で銀星号に挑むことに。
その先で待ち受けていたのは、決して譲れぬ信念のぶつかり合い。
この決着をもって、英雄編は幕を閉じます。
1ルートとは思えないくらいの密度と熱量で、読了後はしばらくプレイを続けられなくなりました。
復讐編(大鳥香奈枝ルート)
「善悪相殺」の戒律により、これまでに主人公が犯してきた数多くの罪。
その報復と、断罪に焦点を当てた物語。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
英雄編以上に魔王編へ繋がる伏線が多く、このルートだけでは解決しない事象があります。
そういう理由もあってか、単体の章としては、英雄編の方が完成度が高いと思いました。
“復讐”の名の通り、メインヒロインである大鳥香奈枝を含めて、
登場するキャラクターのほとんどが景明さんを殺しにかかってきます。
選択肢の数も非常に多く、間違えたら即ゲームオーバーになる場面が何度もあります。
ラストバトルでは6×6通りの選択肢から、正しい組み合わせを選ぶ必要がある為、
難易度はかなり高いです。
しかし、それを乗り越えた末の決着は、筆舌に尽くし難い程に哀しくも美しい。
この最後の攻防を見るためだけに、復讐編をプレイする価値がある。
それにしても、製作陣はcv.まきいづみのキャラクターに、何か恨みでもあるのでしょうか。
魔王編
英雄編、復讐編をクリアすることで解放される、
『装甲悪鬼村正』のトゥルールートというべき物語。
文章量も英雄編、復讐編の倍以上あり、これらの内容を統合したものになっているので、
正式な本編といっていいでしょう。
完全体となった魔王:銀星号と、全ての終止符を打つ物語。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
この魔王編が全く非の打ちどころの無い完成度であれば、私は自信をもってこのゲームを勧められました。
つまり、そうではなかったということです。
この魔王編では六波羅幕府、GHQとは別の第三勢力が登場し、
英雄編、復讐編のストーリーとはまた異なる展開が描かれますが、
その分、物語にまとまりがなくなっていたように思えます。
とにかく、「ここを省略するの?」と感じた部分が多かったですね。
遂に戦闘がはじまる!と思ったら、別の場面に飛んで、詳細は描かれずー•••という展開が多いです。
端折っていかないと物語が終わらないので、仕方ないかもしれませんが、
大和No.1の剣士、柳生常闇斎の本気バトルは見てみたかった。
紆余曲折あって、遂に始まった主人公と銀星号の最終決戦。
作中最強の武者:銀星号の戦闘力は、もはや出る作品を間違えてるだろってレベルで、
やっていることが完全に「俺TUEEE系」です。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
重力操作による超加速。挙句の果てにはブラックホールまで生み出してきます。
戦術も何もない、シンプルで理不尽な暴力。
こんなのに理詰めの剣術が通用する訳ないし、全く戦闘が成立してないんですよね。
敵の奥義を破る為、ここでプレイヤーがやらなければいけないことは、「数独パズル」です。
ラスボス戦で、いきなり別のゲームがはじまります。
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
攻略サイトで解答を見るのは何だか負けた気持ちになるので、
困惑しながら自力でExcel使って解きました。
こうして迎えた、決着の時。
銀星号を滅する為、主人公と村正が完成させた魔剣。
「この発想はなかった!」と、膝を打ちましたね。
『装甲悪鬼村正』でしか使えない、いや、むしろこの場面を描く為に、
全ての物語があったとさえ思いました。
作品のテーマを結実させた、18禁ノベルゲーム史に残る名場面です。
悪鬼編
魔王編終了後に繋がる、『装甲悪鬼村正』のエピローグ。
この物語をもって、終幕となります。
目的を果たした主人公の前に現れた、最後の敵との戦い。
ここを読む直前で、ゲームがフリーズしてしまいました。(血涙)
6.統括
今回は、『装甲悪鬼村正』の感想を書きました。
いつか絶対にプレイしようとは思っていたので、レビューまで書けてよかったです。
シナリオの長さと密度に圧倒されましたが、「名作」という評価も頷ける、超大作でした。
個人的に好きなキャラクターを挙げるなら、
六波羅幕府の四公方が一人、遊佐童心ですね。(下画像のハゲ)
引用:『装甲悪鬼村正』©ニトロプラス
六波羅の四天王は、全員のキャラが立っていて、魅力的でした。
その分、別の敵対勢力である、GHQの人たちの印象が薄くなったところはありましたが。
さて、ようやく村正をプレイし終えたので、残っている積みゲーをはじめていこうと思います。
次にやるゲームもまた「名作」と呼び声高い作品なので、めっちゃ楽しみです。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。
紹介した作品
『装甲悪鬼村正 Windows 10対応版』
公式サイト:リンク
※18歳未満の購入は禁止されています。