公式サイトより引用 ©minori
【感想】予算かけすぎて会社ぶっ壊したノベルゲーム
ef:
今回はPCノベルゲーム、『ef』をプレイしたので、
内容の紹介や、感想を書いていきます。
本作はあの『魔法少女まどか☆マギカ』を手掛けた、
シャフト制作で2008年にアニメ化され、視聴してみたら面白かったので、
原作ゲームを購入してプレイした次第です。
ちなみに、購入したのは2023年のクリスマスです。
そこから半年くらい積んでおり、去年の夏ごろから少しずつ進めていきました。
概要
この作品の発売順としては、PCゲームとしてストーリーの前編となる、
『ef a first tale』が2006年に発売。
そしてアニメの放送が2007年にスタート。
第1期と第2期の2シーズンに渡り、全24話で制作されます。
TVシリーズ第1期の放送終了から約半年後、
後編となる『ef a latter tale』が2008年に発売されました。
アニメ版の方が、PCゲームに先行して、
原作における第3章に相当するストーリーが展開された、
珍しいメディアミックスの形態をとった作品です。
鬱要素
TV放映されたアニメ版ですが、「トラウマになった」という評価の声もあるくらい、
その内容に鬱要素のある作品でした。
めっちゃグロいとかではなく、メンタルにダメージが来るタイプのもので、
シャフト制作による演出も相まって、正直チビりそうになりました。
1期と2期を比較すると、2期の方がより暗いストーリーでしたが、
私がはじめて「ヤバいな」と感じたのは、1期の7話。
メンヘラを発症したヒロインが、約3分間ずっと主人公に留守電を掛け続ける場面があるのですが、
ヒロインの台詞によって、画面が徐々に真っ黒に塗り潰されていくという演出がなされ、
初見時の衝撃は中々のものでした。
引用:ef - a tale of memories. ©シャフト
こういう表現は原作ゲームだとどうなっているのだろうと気になったので、
実際にプレイして確かめてみました。
余談ですが、ゲーム版のOP映像は、『君の名は』や『天気の子』で有名な、
あの新海誠監督が手がけたことでも有名な作品です。
あらすじ
クリスマスの夜。
ひとりの青年が教会を訪れた。
遠い昔に交わした約束を果たすために。
「私が知らないあなたのことを――
教えてほしい」
(公式サイトより一部引用)
全体のストーリーは二部・六章構成で成り立っており、
前編である『ef - the first tale.』には、序章+第一部前編(1、2章)が、
後編である『ef - the latter tale.』には、第一部後編(3章)と、
物語第二部(4章)、終章が収録されております。
公式サイトより引用 ©minori
メインキャラクターは、雨宮優子と火村夕。
この2人が再会する場面からゲームが始まるのですが、
第二部(4章)まで優子と夕についてはほとんど描かれず、
再会するまでに出会った少年少女たちのストーリーを、2人が語り合うという流れです。
ただ一人の主人公(=プレイヤー)が存在する訳ではなく、
第三者視点で物語に参加させる、「群像劇」のような形態をとっています。
このスタイルを徹底させる為、他のADVゲームによくあるヒロイン分岐は一切なく、
また、キャラクターの「立ち絵」でゲームを展開する場面もほとんどなく、
大量のイベントCGを用意して、ストーリーを進行させています。
物語を「攻略する」というより「鑑賞する」ということに重きを置いた作品で、
この作り込みは半端ではないです。
下手なアニメよりも動いている場面が、普通にありましたからね。
特に、先述した新海誠監督が監修したOP映像の出来は凄まじく、
今でも語り草になっているほどです。
(YouTubeリンク):ef - the first tale. demo movie
この作品を開発した会社:minoriは、現在ソフトウェア制作を終了し、
解散が発表されたのですが、予算を掛けすぎたのでは・・・と噂されています。
感想
完走した感想は、まぁ、面白かったです。
原作の18禁版でプレイしたのですが、18禁である意味を感じたゲームでした。
ただ、人に勧める程かというと、そこまでではなかったです。
あくまで個人の感想ですが、物語に起伏があまりなかったと思いました。
続きが気になって読むのが止められなくなる、あのノベルゲーム特有の没入感は、
メインの第二部(4章)に入るまでは、ほとんど感じませんでした。
それを言ってしまったら、そもそもノベルゲームという娯楽自体が、
そういうものだろうという話ではありますが。
ただ、各章ごとの分かりやすい盛り上がりは、間違いなくアニメ版の方があったと思います。
また、アニメ版で見られた鬱演出も、原作ゲームにおいてはなかったです。
だからアニメの方が面白いー・・・と、一概には言いきれませんが、
少なくとも「衝撃度」で言えば、アニメ版の方が上でした。
とはいえ、アニメでは省略されていたキャラクターのストーリー、
過去の掘り下げ・背景等も、原作ゲームでは描かれているので、
アニメとゲームは分けて、それぞれの良さを楽しむのが良い。
ーというのが、本作をプレイした、私なりの落とし所になります。
では、極力ネタバレを避けつつ、本編ストーリーの紹介と、
それぞれの章の感想を書いていきます。
ef - the first tale.(前編)
公式サイトより引用 ©minori
広野紘・宮村みやこ、堤京介・新藤景の2ペアを中心にした物語。
紘を「お兄ちゃん」と親しみを込めて呼びながらも、
彼に密かな恋心を抱いている、幼馴染の景。
そこに、学内の有名人:みやこが現れたことで、紘を巡る三角関係が始まるー・・・。
第一部 1章:宮村みやこ編
学生でありながら少女漫画家として働く、広野紘を主人公とする物語。
仕事に忙殺される毎日の中、突然、彼の生活に介入してきた宮村みやこによって、
自分の仕事や景との関係にも変化が生まれ、
悩みながらも最終的には、彼なりの結論を出すというストーリー。
©minori
一般的な恋愛ADVゲームでは、みやこルートと景ルートに分岐するものですが、
この『ef』には残念ながら、そんな分岐はありません。
最終的に紘の恋人になり、彼と結ばれるのは、宮村みやこ。
プレイヤーの選択次第で、その運命が変わることはありません。
第一部 2章:新藤景編
では、みやこに負けたヒロイン:景ちゃんがどうしていくのか。
そこに物語の比重を大きくしたのが、前編の『ef - the first tale.』になります。
この辺りは、アニメではほとんど描かれなかった部分なので、
新鮮な気持ちでプレイできました。1章のヒロイン:みやこも度々登場します。
紘のクラスメイトで唯一の友人、堤京介が主人公となり、
景を主役とした映画を撮影するところから、アフターストーリーが始まります。
©minori
映画作りを通して京介と交流を続けていくうちに、
段々と彼に惹かれていくことを自覚し始める景でしたが、
そんな簡単に紘への恋愛感情を忘れていいのか・・・という葛藤が生まれます。
人はそう簡単に再起できない。
見ている側からしたら「ウジウジしてんじゃねーよ」と言いたくなる展開ではありますが、
ストーリーの合間で彼らを見守る雨宮優子が、各キャラクターたちにちゃんと突っ込んでくれるので、
プレイしてストレスはあまり感じないと思います。
©minori
果たして雨宮優子は何者なのかーというところで、ゲームのシナリオは後編に続きます。
ef - the latter tale.(後編)
公式サイトより引用 ©minori
麻生蓮治・新藤千尋、久瀬修一・羽山ミズキを中心にした物語。
その後、雨宮優子と火村夕のメインストーリーが描かれる。
優子の話を聞き終えた火村は、今度は優子と再会するきっかけとなった、
二人の少年少女の話を始める。
第一部 3章:新堂千尋編
進路に悩む小説好きな学生、麻生蓮治。
ある日、無人の駅で1人の少女と出会うところから、彼の運命は大きく変わり始める。
前編でもその存在が仄めかされていた、景の双子の妹である千尋が登場。
第三章は、彼女をヒロインとした物語です。
©minori
ある事故に巻き込まれたことで、その日を境に13時間分の記憶しか保てない。
どうしても一つの小説を自分の手で書き上げたいという、彼女の夢を叶えるため、
手助けしていくうちに彼女に惹かれる蓮治だったがー・・・。
PCゲームに先行して、アニメで放送された章です。
最後の盛り上がりはアニメの方があったように思いますが、
ゲームの方も悪くなかったです。やっぱり、眼帯ヒロインは属性として強すぎる。
第二部 4章:羽山ミズキ編
前編ではサブキャラクターとして登場していた羽山ミズキが、
この章のメインヒロインとなり、彼女の秘密が明らかになります。
©minori
夏休みに従兄の蓮治の家へ来訪し、隣人であるバイオリニスト:久瀬修一との交流がはじまる。
ひたすら明るいミズキに振り回される一方で、久瀬は過去に彼女の身に何かがあったことを察してしまう。
しかし、久瀬もまた、ミズキに隠している事情があった。
この章に続く形で、いよいよゲームの本編と言ってもいい、
第二部のメインストーリーが開幕します。
その影響もあってか、ここまでの物語の中では、一番“薄い”と感じてしまった章でした。
アニメ(第二期)の方が、久瀬とミズキのストーリーを丁寧に描いていた気がします。
雨宮優子・火村夕編
物語の括りとしては、第二部 4章に該当するのですが、
事実上の終章であり、ここまでの各章以上のボリュームを誇ります。
時間は過去へと遡り、ここまで語り手として登場していた、
かつての雨宮優子と火村夕が出会うところから、その結末までが語られる物語。
©minori
何もかもがネタバレになるので、詳細なストーリーは書けませんが、
ここまでとは比にならない程、息苦しく、重厚な物語です。
そして、『ef』のストーリーの中でダントツで面白かったです。
アニメを先に見ていたので、大体の内容は分かっていましたが、
幼い子どもの頃に起きた震災で、火村が妹を亡くしており、その記憶に今でも苦しめられていること。
そして、優子が火村と出会うまで、彼女自身に降りかかった悲劇。
・・・辛い。本当にしんどいですが、
それでも続きが気になって読むのが止められない。
これこそがノベルゲームの面白さの妙だということを、再認識させられます。
ちなみに、優子が夕に対して、自分の秘密を告白する場面。
アニメ版では二期6話に該当しますが、屈指のトラウマと言われてます。
この回を観た夜は中々寝れませんでした。
引用:ef - a tale of melodies. ©シャフト
ゲーム版では、ここまで怖くはありませんでしたが、
優子に起きたことを詳細に知らされる為、より「痛々しさ」が強調されていました。
欲を言えば、CG表現はもっと残酷であってもよかったと思います。
個人的に猟奇的な趣味がある訳ではなく、説得力を持たせるという意味で。
統括
今回は、『ef』をプレイした感想を書きました。
今後も、ノベルゲームをプレイした感想を書いていきますので、
お暇なときに読んでいただけたら嬉しいです。
今は『走行悪鬼村正』というゲームをやっているのですが、
これもめっちゃ面白いです。シナリオが長いので頑張って完走します。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。
紹介した作品: