【レビュー】『ef - a fairy tale of the two.』【PCゲーム】

2025年2月9日

公式サイトより引用 ©minori

【感想】予算かけすぎて会社ぶっ壊したノベルゲーム


 

ef:

今回はPCノベルゲーム、『ef』をプレイしたので、

内容の紹介や、感想を書いていきます。

 

本作はあの『魔法少女まどか☆マギカ』を手掛けた、

シャフト制作で2008年にアニメ化され、視聴してみたら面白かったので、

原作ゲームを購入してプレイした次第です。

 

ちなみに、購入したのは2023年のクリスマスです。

そこから半年くらい積んでおり、去年の夏ごろから少しずつ進めていきました。

 

 

概要

この作品の発売順としては、PCゲームとしてストーリーの前編となる、

『ef a first tale』が2006年に発売。

 

そしてアニメの放送が2007年にスタート。

第1期と第2期の2シーズンに渡り、全24話で制作されます。

 

TVシリーズ第1期の放送終了から約半年後、

後編となる『ef a latter tale』が2008年に発売されました。

 

アニメ版の方が、PCゲームに先行して、

原作における第3章に相当するストーリーが展開された、

珍しいメディアミックスの形態をとった作品です。

 

 

鬱要素

TV放映されたアニメ版ですが、「トラウマになった」という評価の声もあるくらい、

その内容に鬱要素のある作品でした。

 

めっちゃグロいとかではなく、メンタルにダメージが来るタイプのもので、

シャフト制作による演出も相まって、正直チビりそうになりました。

 

1期と2期を比較すると、2期の方がより暗いストーリーでしたが、

私がはじめて「ヤバいな」と感じたのは、1期の7話。

 

メンヘラを発症したヒロインが、約3分間ずっと主人公に留守電を掛け続ける場面があるのですが、

ヒロインの台詞によって、画面が徐々に真っ黒に塗り潰されていくという演出がなされ、

初見時の衝撃は中々のものでした。

引用:ef - a tale of memories. ©シャフト

 

こういう表現は原作ゲームだとどうなっているのだろうと気になったので、

実際にプレイして確かめてみました。

 

余談ですが、ゲーム版のOP映像は、『君の名は』や『天気の子』で有名な、

あの新海誠監督が手がけたことでも有名な作品です。

 

 

あらすじ

クリスマスの夜。

ひとりの青年が教会を訪れた。

遠い昔に交わした約束を果たすために。

「私が知らないあなたのことを――

教えてほしい」

(公式サイトより一部引用)

 

全体のストーリーは二部・六章構成で成り立っており、

前編である『ef - the first tale.』には、序章+第一部前編(1、2章)が、

後編である『ef - the latter tale.』には、第一部後編(3章)と、

物語第二部(4章)、終章が収録されております。

公式サイトより引用 ©minori

 

メインキャラクターは、雨宮優子あまみや ゆうこ火村夕ひむら ゆう

この2人が再会する場面からゲームが始まるのですが、

第二部(4章)まで優子と夕についてはほとんど描かれず、

再会するまでに出会った少年少女たちのストーリーを、2人が語り合うという流れです。

 

ただ一人の主人公(=プレイヤー)が存在する訳ではなく、

第三者視点で物語に参加させる、「群像劇」のような形態をとっています。

 

このスタイルを徹底させる為、他のADVゲームによくあるヒロイン分岐は一切なく、

また、キャラクターの「立ち絵」でゲームを展開する場面もほとんどなく、

大量のイベントCGを用意して、ストーリーを進行させています。

 

物語を「攻略する」というより「鑑賞する」ということに重きを置いた作品で、

この作り込みは半端ではないです。

下手なアニメよりも動いている場面が、普通にありましたからね。

 

特に、先述した新海誠監督が監修したOP映像の出来は凄まじく、

今でも語り草になっているほどです。

(YouTubeリンク):ef - the first tale. demo movie

 

この作品を開発した会社:minoriは、現在ソフトウェア制作を終了し、

解散が発表されたのですが、予算を掛けすぎたのでは・・・と噂されています。

 

 

感想

完走した感想は、まぁ、面白かったです。

原作の18禁版でプレイしたのですが、18禁である意味を感じたゲームでした。

 

ただ、人に勧める程かというと、そこまでではなかったです。

あくまで個人の感想ですが、物語に起伏があまりなかったと思いました。

 

続きが気になって読むのが止められなくなる、あのノベルゲーム特有の没入感は、

メインの第二部(4章)に入るまでは、ほとんど感じませんでした。

それを言ってしまったら、そもそもノベルゲームという娯楽自体が、

そういうものだろうという話ではありますが。

 

ただ、各章ごとの分かりやすい盛り上がりは、間違いなくアニメ版の方があったと思います。

また、アニメ版で見られた鬱演出も、原作ゲームにおいてはなかったです。

 

だからアニメの方が面白いー・・・と、一概には言いきれませんが、

少なくとも「衝撃度」で言えば、アニメ版の方が上でした。

 

とはいえ、アニメでは省略されていたキャラクターのストーリー、

過去の掘り下げ・背景等も、原作ゲームでは描かれているので、

アニメとゲームは分けて、それぞれの良さを楽しむのが良い

 

ーというのが、本作をプレイした、私なりの落とし所になります。

 

では、極力ネタバレを避けつつ、本編ストーリーの紹介と、

それぞれの章の感想を書いていきます。

 

 

ef - the first tale.(前編)

公式サイトより引用 ©minori

 

広野紘ひろの ひろ宮村みやむらみやこ、堤京介つつみ きょうすけ新藤景しんどう けいの2ペアを中心にした物語。

 

紘を「お兄ちゃん」と親しみを込めて呼びながらも、

彼に密かな恋心を抱いている、幼馴染の景。

そこに、学内の有名人:みやこが現れたことで、紘を巡る三角関係が始まるー・・・。

 

 

第一部 1章:宮村みやこ編

学生でありながら少女漫画家として働く、広野紘を主人公とする物語。

 

仕事に忙殺される毎日の中、突然、彼の生活に介入してきた宮村みやこによって、

自分の仕事や景との関係にも変化が生まれ、

悩みながらも最終的には、彼なりの結論を出すというストーリー。

©minori

 

一般的な恋愛ADVゲームでは、みやこルートと景ルートに分岐するものですが、

この『ef』には残念ながら、そんな分岐はありません。

 

最終的に紘の恋人になり、彼と結ばれるのは、宮村みやこ。

プレイヤーの選択次第で、その運命が変わることはありません。

 

 

第一部 2章:新藤景編

では、みやこに負けたヒロイン:景ちゃんがどうしていくのか。

そこに物語の比重を大きくしたのが、前編の『ef - the first tale.』になります

 

この辺りは、アニメではほとんど描かれなかった部分なので、

新鮮な気持ちでプレイできました。1章のヒロイン:みやこも度々登場します。

 

紘のクラスメイトで唯一の友人、堤京介が主人公となり、

景を主役とした映画を撮影するところから、アフターストーリーが始まります。

©minori

 

映画作りを通して京介と交流を続けていくうちに、

段々と彼に惹かれていくことを自覚し始める景でしたが、

そんな簡単に紘への恋愛感情を忘れていいのか・・・という葛藤が生まれます。

 

人はそう簡単に再起できない。

 

見ている側からしたら「ウジウジしてんじゃねーよ」と言いたくなる展開ではありますが、

ストーリーの合間で彼らを見守る雨宮優子が、各キャラクターたちにちゃんと突っ込んでくれるので、

プレイしてストレスはあまり感じないと思います。

©minori

 

果たして雨宮優子は何者なのかーというところで、ゲームのシナリオは後編に続きます。

 

 

ef - the latter tale.(後編)

公式サイトより引用 ©minori

麻生蓮治あそう れんじ・新藤千尋ちひろ久瀬修一くぜ しゅういち羽山はやまミズキを中心にした物語。

その後、雨宮優子と火村夕のメインストーリーが描かれる。

 

優子の話を聞き終えた火村は、今度は優子と再会するきっかけとなった、

二人の少年少女の話を始める。

 

 

第一部 3章:新堂千尋編

進路に悩む小説好きな学生、麻生蓮治

ある日、無人の駅で1人の少女と出会うところから、彼の運命は大きく変わり始める。

 

前編でもその存在が仄めかされていた、景の双子の妹である千尋が登場。

第三章は、彼女をヒロインとした物語です。

©minori

 

ある事故に巻き込まれたことで、その日を境に13時間分の記憶しか保てない

どうしても一つの小説を自分の手で書き上げたいという、彼女の夢を叶えるため、

手助けしていくうちに彼女に惹かれる蓮治だったがー・・・。

 

PCゲームに先行して、アニメで放送された章です。

最後の盛り上がりはアニメの方があったように思いますが、

ゲームの方も悪くなかったです。やっぱり、眼帯ヒロインは属性として強すぎる。

 

 

第二部 4章:羽山ミズキ編

前編ではサブキャラクターとして登場していた羽山ミズキが、

この章のメインヒロインとなり、彼女の秘密が明らかになります。

©minori

 

夏休みに従兄の蓮治の家へ来訪し、隣人であるバイオリニスト:久瀬修一との交流がはじまる。

ひたすら明るいミズキに振り回される一方で、久瀬は過去に彼女の身に何かがあったことを察してしまう。

しかし、久瀬もまた、ミズキに隠している事情があった。

 

この章に続く形で、いよいよゲームの本編と言ってもいい、

第二部のメインストーリーが開幕します。

 

その影響もあってか、ここまでの物語の中では、一番“薄い”と感じてしまった章でした。

アニメ(第二期)の方が、久瀬とミズキのストーリーを丁寧に描いていた気がします。

 

 

雨宮優子・火村夕編

物語の括りとしては、第二部 4章に該当するのですが、

事実上の終章であり、ここまでの各章以上のボリュームを誇ります。

 

時間は過去へと遡り、ここまで語り手として登場していた、

かつての雨宮優子と火村夕が出会うところから、その結末までが語られる物語。

©minori

 

何もかもがネタバレになるので、詳細なストーリーは書けませんが、

ここまでとは比にならない程、息苦しく、重厚な物語です。

そして、『ef』のストーリーの中でダントツで面白かったです。

 

アニメを先に見ていたので、大体の内容は分かっていましたが、

幼い子どもの頃に起きた震災で、火村が妹を亡くしており、その記憶に今でも苦しめられていること。

そして、優子が火村と出会うまで、彼女自身に降りかかった悲劇。

 

・・・辛い。本当にしんどいですが、

それでも続きが気になって読むのが止められない。

これこそがノベルゲームの面白さの妙だということを、再認識させられます。

 

ちなみに、優子が夕に対して、自分の秘密を告白する場面。

アニメ版では二期6話に該当しますが、屈指のトラウマと言われてます。

この回を観た夜は中々寝れませんでした。

引用:ef - a tale of melodies. ©シャフト

 

ゲーム版では、ここまで怖くはありませんでしたが、

優子に起きたことを詳細に知らされる為、より「痛々しさ」が強調されていました。

 

欲を言えば、CG表現はもっと残酷であってもよかったと思います。

個人的に猟奇的な趣味がある訳ではなく、説得力を持たせるという意味で。

 

 

統括

今回は、『ef』をプレイした感想を書きました。

今後も、ノベルゲームをプレイした感想を書いていきますので、

お暇なときに読んでいただけたら嬉しいです。

 

今は『走行悪鬼村正』というゲームをやっているのですが、

これもめっちゃ面白いです。シナリオが長いので頑張って完走します。

 

それでは、次回の記事でお会いしましょう。

 

紹介した作品:

ef - the first tale(18禁)

ef - the latter tale.(18禁)

 

  • この記事を書いた人

イナ

本業は設計者。29歳。書評とコラムを発信する、当サイトの管理人。気ままに記事を更新します。日課は読書と筋トレ。深夜ラジオとADVゲーム好き。

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