【感想】「THE FIRST SLAM DUNK」 最高でした。
お久しぶりです。そして、メリークリスマス!
101回目の記事になりますが、今回は雑談回です。
スラムダンクの映画を観てきたので、その感想を好きなように語らせてください。
原作のストーリーを知っている前提で書きますので、あらかじめご容赦ください。
スラムダンクを知らない方はいないと思うのですが、
当ブログでも昔紹介記事を書いているので、よかったら見てやってください。
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【マンガ】バスケ漫画の金字塔。『SLAM DUNK』 バスケットは好きですか?
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※この記事では作中で描かれるストーリーにはほとんど触れていないです。
マンガを読んで知って欲しいですし、私なんかではとても魅力を伝えきれません。
スラムダンクを一言で説明するなら、日本マンガ史に残る最高傑作の一つです。
連載終了から30年経ってなお、ここまで多くの人に愛される作品は、そうそうありません。
「これを読んでいない奴は人生損している」
ーそんなことは言いたくないですが、こと『スラムダンク』に関しては、
そう言ってしまいたくなるのも分かるくらい、素晴らしい漫画です。
「スラムダンクより面白いマンガは無い」と思っている私なので、
今回の映画に対して、贔屓目に評価しているところもあると思いますが・・・
結論からいうと「もう一回観に行きたい」です。
『THE FIRST SLUM DANK』は、最高の映画でした。
ココに注意
公開して3週間経過しているので、映画のネタバレ有りで書きます。
ネタバレNGな方はブラウザバックをお願いします。
では、さっそく始めていきましょう!
公開前の雰囲気
観客動員数連続一位を獲得している『THE FIRST SLUM DANK』ですが、
公開前は作品の出来を疑問視する声も少なくなかった。
良くも悪くも話題になっていた印象があります。
往年のファンに対して「アニメの続編が見られる」という期待をさせておいて、返金不可の前売り券を販売するなど、
そういったプロモーションの手法が“卑怯”だと、炎上した経緯を説明しているネット記事も見かけました。
参照リンクはこちら!
劇場版スラムダンクが“大炎上”?往年のファンが「声優交代」以上に許せなかった理由が判明
ちなみに、こちらの記事は非常によくまとまっていて、的を射ている意見だとは思いますが、
27年を経っても「SLAM DUNK」という作品がファンの「見たい」を刺激するのは、
漫画もアニメも、ストーリーが完結しないまま尻切れトンボで終わっていることが、その理由の1つだろう。
という記述に関しては、私はダンコたる決意で反論したいです。
全国民を涙させた、スラムダンクのあの感動的なラストが“尻切れトンボ”だァ・・・?
ライターの脳天にカボチャダンクを炸裂させてやろうかと、本気で考えました。
過去に『スラムダンク』を紹介した記事でも書きましたが、
私としては「あの終わり方以上のものは無い」と断言できます。
ただの不良少年だった桜木花道が、最初は意中の相手(晴子さん)にモテたいという動機でバスケを始め、
段々とバスケに魅了されていき、本物のバスケット選手になっていく。
そのテーマを見事に描ききり、大感動のまま物語を終わらせ、登場人物たちの未来に思いを馳せられる。
・・・切なくも爽やかなエンディングは、筆舌に尽くし難い余韻を与えてくれます。
「もっと、登場人物たちの活躍を見たかった」
「最後は主人公たちが全国制覇を成し遂げて欲しかった」
そんな意見が出るのも分かりますが、それを踏まえても私は、あの結末がベストだったと。
作者の井上雄彦先生が、何故あそこで物語を終わらせたのかは、非常によく分かります。
そんな私なので、公開前にどれだけ炎上しようと関係ないし、構わない。
映画を観に行くということは、自分の中で絶対的な決定事項でした。
ただ、それでも今回の『THE FIRST SLUM DANK』に、一抹の不安があったのは確かです。
情報が出ない。
公開直前になって、ようやくPVが公開されたぐらいで、
そもそも今回の映画では何の話をやるのかが全く分かりませんでした。
意図的に、制作側が徹底して情報を隠していたからです。
公開直前に公開されたPV:
ファンとして一番見たかったのは、やはり、未だ映像化されていなかった、
原作の最後にして最高の試合、「湘北 VS 山王工業」です。
でも、「THE FIRST SLAM DUNK」というタイトルだからなぁ・・・
山王戦を一本の映画にまとめるのは難しいから、セカンド、サードとか、
何部作かに分けてつくるのかもしれないーといった考察。
それとも、タイトルからド直球に、主人公:桜木花道の和光中学時代の話になるのか?
(それだと、そもそもバスケやらないけど。)
・・・そういう面白半分な予想もされて、日本中のファンがやきもきしていたのでした。
一体、何が描かれるのだろうと。
声優さんの交代。
90年代に放映されたアニメから、キャラクターたちの声優が一新されるということも、大きな話題を呼びました。
リアルタイムでアニメを観ていた世代ではなかったので、私としてはそこまで影響がないことでしたが、
漫画、アニメ両方のファンにとっては、ショックだったと思われます。
花道、流川などのメインキャラクターたちは、アニメの声でイメージが固定されていた方も多かったことでしょう。
映画公開直前のPVで、はじめてCGで描かれるということも明らかになり、
「本当に大丈夫なのかな?」という意見も出ていました。
実際に観てみて…
さて、待ちに待った映画公開日の12/3がやってきます。
私はあえて事前情報を何も入れず、公開直前のPVも全く見ないで劇場へと足を運びました。
ただ、実際に観たのは12/4、公開2日目の日曜日でした。
初日の評判を確かめてから行こうという、安全意識というか、
・・・どこまでも保守的な、自分の性格には逆らえませんでした。
映画が始まり、スクリーンに映し出されるストーリー。
最初は宮城?(これも初見ではパッと気づかなかった)の過去回想の場面から始まります。
やっぱりオリジナルアニメなのかなぁ・・・などと思っていたら、
線画で描かれるOP。そして登場する湘北メンバー5人と、高校バスケット界の絶対王者:山王工業。
あの「山王戦」が映画で描かれることが確定した瞬間でした。
思わず声が出そうになるのを、必死に堪えました。
初っ端からテンションぶち上がりでした。だって、あの深津や河田、沢北が動いているんですよ!?
マジヤバいっすよ!!! そりゃ、語彙力もなくなりますよ。
高校時代、摩擦で擦り切れる程にコミックスを読み直した、
全国IHの第2回戦:「湘北高校 VS 山王工業高校」
胡蝶抜きに全コマ全セリフが脳内に焼き付いている、あの名試合が、スクリーンで動いている。
もう、それだけで私は大満足でした。
ここからは、嘘偽りのない映画のストーリーの感想を、書かせていただきます。
ストーリー
既にご存知の方もいると思いますが、今回の映画の主役は花道ではなく、PGの「宮城リョータ」でした。
バスケではPGというポジションのことを「1番」とも言うので、
「THE FIRST SLAM DUNK」というタイトルは、そういう意味もありました。
ざっくりと説明すると、宮城の視点中心で再構築した、湘北 VS山王工業 の試合が描かれました。
そういうこともあって、原作の山王戦が十全に描かれている訳ではなく、ダイジェスト形式に近かったですね。
初見の人でも最低限は分かるような構成になっていたと思いますが、映画を完全に楽しもうとするなら、
原作漫画を読んでいることが前提になります。
映画自体は私は非常に楽しめましたが、これは賛否両論出るだろうなぁとも思いました。
映画を観に行く前に、抑えておきたいポイントを3つ、私なりに書きます。
①名場面カットについて
②声優さんの交代について
③宮城の回想について
①.カットされた名場面
作中屈指の名場面が生まれた「山王戦」ですが、映画ではカットされた箇所も多かったです。
そもそも、原作の25巻〜31巻に渡る最長の試合なので、一本の映画の尺に収めるというのは無理があります。
『鬼滅の刃 無限列車編』は原作の漫画から演出やらストーリーやらが大幅にUPしていましたが、
あれはコミックスで2巻分も無い話だったからこそ、できた話です。
原作にあった数々の名場面。例えば、
「30年間山王を見ている、今年の山王はいいぞおじさん」
「黒子役に徹する深津をやたら褒めるおじさん」
「本人よりも親父の職業が気になって仕方ない過去編で有名な、バスケ狂:テツ沢北」
参照リンクはこちら!
こういう原作の名場面が無かったのは、寂しかったですね・・・。
ーという冗談はさておき、
多くの方がカットされて悲しかったのは、原作コミックス(30巻)のラストシーン。
「大好きです 今度は嘘じゃないっす」
ここが飛ばされたときは、私も「これをカットするの!?」と驚きました。
原作ファンとしては「カットしないで欲しかった」という気持ちは、もちろんあります。
ただ、「THE FIRST SLAM DUNK」はあくまでも主人公:宮城であり、
原作の数々の名場面は、それまでの積み重ねがあって輝くものです。
上記の「大好きです 今度は嘘じゃないっす」は確かに、ここまでの物語があるからこその名セリフ。
ここを映画で描かなかったのは、“英断”だったと今は思います。
コミカルなシーンのカット
原作にあった細かなギャグシーンは、全体的に抑えめになっています。
これには明確な理由があって、監督を務めた原作者:井上雄彦先生が、
パンフレット内のインタビューで答えていました。
映画のスクリーンは一定で大きく、原作の端っこに入れられた小さいギャグは、
画面の隅に入れても気づかれにくいし、かといって大画面でやることでも無いと。
それでも、ゴリとのタッチの後に手が腫れ上がっている花道の場面などは、しれっと映っていたりしたので、
そういうところに気づいたファンはニヤニヤできると思います。
ナレーションのカット
これが個人的には、原作と一番異なるポイントでした。
読んだ方はご存知の通り、スラムダンクは演出としてナレーションやモノローグがよく入ります。
この表現がとにかく秀逸で、強く印象に残ります。山王戦で有名なのは、
湘北の”奇襲”は確かに山王を見に来た観衆の度肝を抜いた!!!
まだどよめきの残るコート上で——
しかし深津は動じない。
静かに同点にする。
そのシュートは、今までよりも高く美しい弧を描いた
最後のT.O.を放棄する代わりに交代する間も与えない
深津のゲームメイクに託した
ーなどが挙げられるでしょうか。
スラムダンクは画力も凄まじいですが、こういう漫画的表現も超一流です。
「THE FIRST SLAM DUNK」では、こういったナレーションは皆無でした。“声”として場面に入っていません。
残念に思うところもありましたが、実際のバスケの試合のテンポ・リズム感を重視した結果なのでしょうね。
余談
個人的には、森重寛のワンマンチームでありながら「湘北 VS 山王」の試合を終始上から目線で観戦し、
後半戦で20点差がついた途端に、ドヤ顔で会場を去り、
「波乱はなしだ(キリッ)」 ※その後、試合は大波乱の展開になる。
ーといって物語から勝手に退場していった、名朋工業の監督には出て欲しかったですね。
あの末代までの恥っぷりを、全国のスクリーンに晒して欲しかった。
②.声優さん問題
公開前の“炎上”の理由の一端になった、キャラクター役の声優の交代ですが・・・
正直なところ、あまり気になりませんでした。
映画を観られた方の感想として、「めちゃくちゃキャラに合ってた」という声もありました。
個人的には「いや、そこまででは・・・」とも思いましたが、とにかく、違和感はほとんど無かったです。
流石はプロの声優さんだな、と思いました。特に、「山王工業」のエース:沢北は良かったです。
ただ、河田の声はイメージと違いました。結構、他の方も仰っていた意見でした。
山王工業のセンターで、作中最強候補の河田雅史。
主人公である花道を除くと、私が『スラムダンク』でトップクラスに好きなキャラクターです。
そういった個人的な思い入れもあるので、余計に気になってしまった部分もあります。
ただ、それでも声優さんが変わったことで、マイナス評価になる映画ではありませんでした。
こんなことを言うと声優さんに非常に失礼ですが、そもそも、そんなに声優さんが気になるような物語じゃなかった。
先ほど「名場面やナレーションがカットされている」ということを説明しましたが、
原作漫画からすると、キャラクターの台詞量も大幅に減っています。
これも実際のバスケの「リアルさ」を追求した結果で、場面ごとの音作り、キャラクターたちの動きなど、
とにかく臨場感が凄まじかったです。実際にバスケの試合を観ているような感覚でした。
私が感動すら覚えたのは、沢北の「目線フェイク」と「へなちょこシュート」のシーンです。
これは是非、劇場で観て欲しいと思います。超カッコよかった。
③.宮城の回想について
これが「THE FIRST SLAM DUNK」の一番のオリジナル要素で、賛否分かれている点ですね。
本作で初めて、宮城というキャラクターのバックボーンが描かれます。
そもそも何故、主人公が宮城リョータだったのかという点ですが、これは原作者の井上雄彦先生がこう答えています。
もう一回『SLAM DUNK』をやるからには新しい視点でやりたかったし、
リョータは連載中に、もっと描きたいキャラクターでもありました。
原作をただなぞるより、新しい『SLAM DUNK』としてつくりたかった。
そこで、メインメンバーの中で少し割を食っていた宮城に、今回はスポットライトが当たったということでした。
私のような小柄な人間にとって、168cmという身長でバスケットに臨む宮城リョータは、
自己投影できるキャラクターだったので、個人的には嬉しかったですね。
(それでも、リョータは私より10cmも身長高いけど。)
ただ、「割を食ってた」と言われると、そこまででは無かったように思います。
入浴シーンも作中で2回描かれていますしね。晴子さんや彩子さんの入浴シーンは無いのに。
そんな彼の過去回想が、山王戦の試合中に入るのですが、これが賛否両論になっています。
話の内容も結構「重い」し、原作の名シーンをカットしてまでやる事なのかと。
正直、私も多少感じてしまった部分ではあります。
ただ、原作キャラクターのバックボーンを知れるのは純粋に嬉しかったですし、
物語の補間になったという意味では、やって良かったと言えます。
スラムダンクは、ほとんどのキャラクターのバックボーンが謎でしたからね。主人公の花道を含めて。
これだけ賛否の意見で盛り上がれるのは、それだけ作品の持っているパワーが凄まじいことの証明ですよね。
後、他にスポットライトが当たったキャラでいうと、山王工業のエース:沢北です。
作中で最も湘北を苦しめた、日本No.1プレイヤー。
原作での活躍に加え、映画だけのオリジナルシーンがありました。
試合の後、悔し涙を流す場面は原作で描かれていなかった描写で、良い補間でしたね。
統括
映画を観て改めて、「山王戦」は日本マンガ史上屈指の一戦だなと。
花道が流川にパスをする場面から始まる、ラスト24秒の無音のシーンは、
劇場にいた観客全員が呼吸を止めて観ていました。
スラムダンクを超えるマンガは無い。
そう思うのと同時に、新しいマンガでスラムダンクを超えるものが生まれて欲しいとも思っています。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。
紹介した作品
『THE FIRST SLAM DUNK』|公式サイト