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【書評】意味のあるデザインにしろ。
はじめに
今回紹介するのは『ノンデザイナーズ・デザインブック』という本になります。
デザインを学ぶ人への入門書として、20年以上に渡って刊行されている書籍ですので、聞いたことがある人も多いかと思います。
この本は去年の5月頃に購入していたのですが、中々手をつけることができず、机の上に放置したまま数ヶ月経ってしまっていました。
年末年始の正月休みに入ったタイミングでやっと、
「なんか勉強しよう。デザインとか学ぶのも良いかもな。そういえばこの本、未だ読んでいなかったや」
となり、何とか読み終えることができました。
文章量が少ないのでサッと読み切れるだろうと考えていたのですが、見通しが甘かったですね。
実際に読み始めてみたら中々のボリュームで、年末年始の多くの時間は、この本に向き合っていました。
長ったらしい前置きも良くないので、私なりの視点で、この本の解説をしていきたいと思います。
購入を考えている方の参考になれれば幸いです。
読んだ目的
この本は、「デザインの基本原則さえ抑えれば、あなたのデザインはグッと良くなる」
という語り口の通り、デザインを学ぶ人への入門書です。
タイトルの「ノンデザイナーズ」というのは、デザイナーではない人にとっての、デザインマニュアルのようなものです。
まず、私がこの本を手にとって理由を説明させて頂くと、
「ガッツリとデザインの仕事ができるようになりたい訳ではないけれど、仕事に不自由しない程度のデザイン力を身につけたい」
と思ったからです。
私、デザインセンスが皆無なんですよ。
優れたデザインの家具とか、美麗なイラストを見るのが好きなので、そういった能力を持つ人に憧れている気持ちはあります。
ただ残念なことに、私のセンスは良くないです。住んでいる家に、センスの無さが表れています。
例えば本棚の中に、消臭剤とか無造作に突っ込んでいますからね。
小学校の思い出
今でも覚えているのが、小学校の頃に、特別学級という授業で「生花」を体験することがありました。
勿論、本格的なものではなく「スターターキット」のようなものが始めから準備されていて、
自分たちがやることは土台のスポンジに造花を挿していくだけの作業でした。
指導をされた先生も優しく、ほとんどの生徒の作品を褒めてくれていました。
そして、私のつくった生花を見ると、その先生は実に困ったような表情で一言、
「独創的ですね」
と呟きました。・・・大分言葉を選んだ感じでした。
本当に掛ける言葉が見つからなかったのだろうな、と幼心に察しました。
生活環境のことは置いといて、デザインセンスの無さによって仕事でも不自由することがあります。
例えば、会議に使う資料とか作成する機会ありますよね。私がつくった書類、大体一発で通ることはありません。
専門的知識が不足してFB受けるのであれば、仕方ないことですが、「見栄えが良くない」とシンプルにダメ出しされることがありました。
「なんで気にならないの?」
と、当時の上司に煽られることがあり、自分のセンスの無さを本格的に恨み始めました。
そして、「センスがないなら、磨けばいい」という前向きなアクションを起こそうと決意します。
本業とはあまり関係しないかもしれないですが、最低限のデザイン力を身につけようと思い、この本を手にとった次第であります。
まあ、買って数ヶ月は放置していた訳ですが・・・。
本の評価
この本を大きく分けると、
- 前半:デザインの四原則
- 後半:活字でデザイン
という構成になっています。
後半はひたすらに活字の知識を詰め込みました、という内容なので、私も参考程度にしか読んでおりません。
なので、本書の前半、デザインの四原則を読み込んだ上での、感想になります。
感想を一言で言うならば、良いところも悪いところも目立つ本でした。簡潔に説明すると、以下のような感想です。
良いところ
- デザインの概念を全く理解したことがない人にとって、原則をきっちり言語化している。
- 例題が多く用意されており、アウトプットのセクションまでやり切れば、デザインの四原則という知識が定着する。
- デザイナー向けではない、簡単な資料、メールの作成に応用できる知識であり、実用的に使える。
基本的には、最初に悪い見本が掲載されており、右のデザインと比較してどういった違いがあるか?を自分で考える内容になります。
デザインの四原則が守られていないと、
「情報の差別化ができていない」
「何を伝えたいのか明確に伝わらない」
といったものになってしまう訳です。
良いデザインと悪いデザイン、比べてしまえば「何か違う」ということは一瞬で分かります。
問題は、「悪いデザインをどのように修正すれば良くなるかが分からない」ということです。
だから、私たちが何気なくつくった資料は、大体ボツになってしまう訳です。
今まで感覚でつくっていたデザインを、知識として言葉に落とし込んでいる書籍なので、
「こうすれば良いデザインになる」ということが理解できるようになります。何をすべきか分かるようになる、というのは大きいです。
この本によると、デザインの四原則さえ守られているであれば、間違ったデザインになることはないとのことです。
デザインの四原則はなんぞや、ということは実際に本で読んでみてください。
言葉で説明したところで、身につくものではありません。
様々なデザインを見て、実際に自分で議事録なり、広告なりをつくってみて、少しづつ自分に取り入れていく知識になりますので。
ただ、良いデザインというのを一言で説明するならば、一瞬で相手に伝わることのできるデザインということです。
だから一番大事なのは、そのデザインを見る相手への配慮ですね。
- ここをどう表現すれば、相手に伝わるだろうか。
- この配置だと視線はこう動くから、体系的にまとめる必要があるな。
というマインドでデザインすることが重要なんです。
つまり、デザインの一つ一つに、意味を持たせることです。
何故そのスペースを設けているのか、何故その大きさなのか、ということを説明できるような設計をしろ、ということですね。
こういう思考は別にデザインだけに限った話ではなく、あらゆることに活用していく必要があると思います。
悪いところ
- 使用例が全て英語なので、解説を読んでも直ぐに理解できない箇所がある。
- 結局のところ、「デザインの真似事」程度の知識しか得られない。
- クッソ読みづらい。
悪いところは、とにかく文章が読み難いということに尽きます。
翻訳された文章ですので、そこに文句を言うことは筋違いかもしれませんが、それにしても本当に酷い。
「原文をそのままGoogle翻訳に突っ込んだのではないか?」と言いたくなるような表現も多々ありました。
この本を真剣に読もうとすればする程、どんどんストレスが溜まっていきます。
そこは予め覚悟しておく必要があります。
掲載されている広告、葉書も全て英語で書かれているので、デザイン云々には直接関係しないかもしれないですが、
何のことをいっているのか、一読しただけでは分かりません。英語が堪能な方なら、苦もなく読めるのかもしれませんが。
また、内容が本質的なので「四原則を守れば間違ったデザインをすることはない」とはいっても、
その先のレベルに到達するには、個々人に委ねられます。
確かに実践で使える知識ではありますが、それ以上の領域に踏み込むことはできません。
少なくともこの書籍を読んで、「私なりのデザインをしたい!」と思ってもできない筈です。
そこまで極められる本ではありません。
本当に「ノンデザイナーズ」の為にあるような本になっています。
一定の知見は確かに得られるものの、本当の意味でデザインスキルを身につけるのは、また別の話になります。
載っていた例題を全て自分で解いたところで、「デザインの真似事」ができるレベルにしかなり得ない、ということです。
感想
言いたいことを散々書きましたが、総論としては読んで良かったですよ。
普段の仕事で作成する資料も、デザインの四原則を意識してつくることができるようになりました。
おかげで、上司からつまらない理由でやり直しをさせられることも減りました。読んでおいて損は無い一冊だと思います。
このブログも、徐々にデザインを見易く変えようとしています。過去の記事等も読者の方が読み易いようにリメイクしていくつもりです。
一つ注意点を挙げるとすれば、電子書籍ではオススメできません。
左右を見比べることが前提という構成になっておりますので、紙の本でないと、益々読みづらくなってしまいます。
紹介した作品
『ノンデザイナーズ・デザインブック』 著:Robin Williams
オススメ度:★★★☆☆
※読めるならば、原書で読むことを勧めます。内容はいいので。